△ [ Dramatic Violet〜plot ]
○Dramatic Violet 番外編
『女王のなぞかけ』
◇ライゼン姫とブラット騎士の後日談
◆ブリューテ国のライゼン妃はブラット騎士と秘密の恋仲。ある時、城内の礼拝堂に赤子が預けられライゼンは引き取ると公言するがブラットは反対する。赤子を巡って意見が分かれる2人は次第にすれ違うようになってしまい…ライゼン妃は赤子をへルシェン国夫妻に預けるがある時、放浪騎士団一味に連れ去られてしまう。間もなく捕まった犯人のリーダーがなんとブラット騎士で…
{◎妙に花にこだわるのは、たぶんDVDで見たジェラール・フィリップ『華咲ける騎士道』から着想してるからだと思います}
■■■
◆01_秘密の恋仲…ライゼン姫は「騎士の国」として知られるブリューテ国の次期女王。彼女は表向きは未婚だが近衛騎士「ブラット」と恋仲だった。しかし飲酒が解禁となった祭りのある夜…酔った勢いでブラットはライゼンをソファに押し倒してしまう。過去の嫌な記憶を思い出したライゼンは怒り、仕事以外では口もきかなくなってしまう。ブラットも謝罪したものの自身の過ちが赦せず、それから2人は距離を置くようになってしまう…◆ある時…ライゼンの城内の礼拝堂に赤子が預けられた。ライゼンはその赤子に特別な興味を示す。やがて城内勤務の傍ら、率先して赤子の世話をするようになる。側近のブラットは本業である仕事が疎かになると言い、赤子を孤児院へ預けるよう提案するがライゼンは、なかなか承諾しない。そんなライゼンをブラットは補佐を続けてたが、やがて他の家臣たちがブラットがライゼン妃の仕事にまで着手するなら国王代理を選出すべきであるという話が出てしまう。またライゼンがことさら赤子にこだわるのを見て城内では「ライゼン姫の隠し子ではないか」「父親は城内の騎士の誰かではないか」と噂が飛び交い始める。ブラットは恋仲であると信じていたライゼン姫のそんな噂に耐えられず城内勤務を辞職し自分の領地へ帰ってしまう。疲労が積み重なったライゼンも、とうとう体調を崩してしまい泣く泣く赤子をへルシェン国の夫婦に預けるのだった……
◆02話_赤子の拉致と放浪騎士団…ライゼンは休養をとり、間もなく仕事に復帰するが赤子の世話を兼ねていた時の気力は感じられない…家臣たちはライゼン妃がよほど赤子を愛おしく感じていたのだろう、そろそろ身を固めても良い時期であると、話し合うようになった。ライゼンの隠し子騒動や城内騎士との情事など、あらぬ噂が飛び交ったこともありライゼン妃を早く結婚させるべきであると家臣たちは頻繁に社交パーティーを行うことが多くなった。もちろんそれはライゼン妃の夫、延いては国王になる人物である。しかしライゼンは乗り気になれなかった。候補者は皆、それなりに立派な貴族や騎士ではあるが、どこか権力目的のように感じてしまうからだった。それに自分の領地へ帰ったはずのブラットと未だ連絡が取れない状況もライゼンを苛立たせた。赤子がへルシェン国に預けられたのだからブラットには城へ戻って来て欲しかった。しかし何日経っても彼から手紙は来なかった…◆結婚話を煩(わずら)わしく思ったライゼンは求婚者に、ある「なぞなぞ」を出すことにする。それは…【へルシェン国に預けられた赤子の名前と、その名前を付けた理由を言い当てられた人と私は結婚する】…というものだった。赤子の名前を尋ねられるのはへルシェン国王との面識がある一部の貴族だけだったが、ブリューテ国内を巡業する騎士たちの間でその名は「ゼガレット」であるとたちまち知れ渡る。しかし理由を答えられる者は誰もいないのだった。嘘や虚偽の答えをすると罰則や求婚が出来なくなるため、うかつにライゼン妃に謁見を求める騎士もいなかった。ライゼンはブラットだけが、このなぞなぞを解けると期待し彼を待ったが、それでもブラットは音信不通だった。だが間もなく、別の形でライゼンはブラットと再会することになる◆ライゼンはある時、巡業騎士の報告でブリューテ国境付近で、騎士の身分を濫用した不正な取立てを行う集団の噂を聞く。その一方、その輩(やから)を、国の巡業騎士よりも先に取り締まる少数派「スペード騎士団」がいると噂も耳に入る。それを聞いたライゼンはブラットの家系はスペードの紋章で彼がスペード騎士ではないかと推察する。しかしスペード騎士団は覆面を被っているため、顔が分からないという。ライゼンは巡業騎士たちにスペード騎士団と接触する事があった時は、お礼をしたいので城に立ち寄るよう伝言をお願いする◆それから間もなくして、事件が起きる。へルシェン国に預けられていた赤子が拉致されてしまう。ライゼンは赤子と自分の結婚話を結びつけた事を後悔した。しかし拉致の犯行グループはすぐに捕まった。少数グループの騎士たちが不釣り合いな赤子を連れていたことでかえって目立ったのだった。しかし城に連れてこられた犯人を謁見室で見たライゼンは驚(おどろ)いた。グループのリーダーがブラット騎士なのだった…◆放浪騎士をしていたせいかブラットは以前より眼つきが鋭く、金髪も長めになっていた。ライゼンは赤子の連れ去りについて尋ねるが彼は黙秘を続けた。旅に出て返事を書けなかった事は詫びたが、連れ去った事実を認めてもその理由は決して話そうとしないのだ。ライゼンが他に尋ねる間もなくブラットたちは別室へと連れ出されてしまった。ブラット騎士たちを捕らえた騎士団リーダー「テオリエ騎士」は、この手柄の報酬として領地や金貨は一切受け取らない代わりに、なぞなぞ廃止を要望し、ライゼン妃に求婚する。しかしライゼンはあくまで結婚するのは、なぞなぞを解けた人だけであると言い毅然とした態度を崩さない。するとテオリエは自分たちこそ国境付近で噂されていた「スペード騎士団」であると打ち明ける。彼らの顔を知る者は誰もいないためライゼンも無下に扱えず、またテオリエは家臣たちからも推薦された公認の求婚者となったため、しばらくは側近として城に迎え入れるのだった…
◆03話,_なぞなぞの答え…ブラットが捕まってから間もなく、国境付近の村長が城を訪ねて来る。以前、不正な取立から助けてもらい、スペードの騎士が城にいることを聞き、お礼を述べに来たという。ライゼンはテオリエと村長を面会をさせることにする。ところがテオリエは「顔は隠したい」と言うので、スペードの騎士であると証明するためライゼンも同席する。面会は問題なく終わったが村長は緊張していたのかテオリエとの会話があまりかみ合わないのだった…謁見が終わってからライゼンは村長と言葉を交わした侍女から妙な話を聞く「村長様は…覆面を取ったお顔を見たことがあって、長い金髪の騎士だったと、おっしゃったんですよ…」◆ライゼンは村長に数日、城の滞在を延ばすよう依頼する。そして謁見室にテオリエ騎士たち、ブラット騎士たちを集めて拉致事件について再度話し合う場を設けた。ライゼン妃と結婚も現実味を帯びてきたテオリエ騎士は何を今更…と渋々参加する。ライゼンは再度テオリエ騎士が「スペードの騎士」か尋ねる。彼はハッキリ自分たちがそうであると言いブラット騎士たちは、うなだれるがライゼンはブラットを励ますように目配せする。次にライゼンは「ではこの方々の話を聞いてあげてください」と言い、隣の部屋にテオリエ騎士たちを案内する。そこは舞踏会場でオーケストラボックスには村長だけでなく、その他のスペードの騎士に助けられたと言う国境付近の住民たちが集められていた。「あの時はありがとう」「貴方がたは素晴らしい」と席から拍手や称賛が湧いた。ところが…村長だけは渋い顔をしてこう言った「皆、だまされるでない。あの人たちはスペードの騎士たちではないぞ…!」スペードの騎士たちは覆面を被っていたため誰もその顔を知らないのだが村長だけは見たことがあった。ライゼンはすかさずブラットたちを舞踏会場に招き入れる。すると村長は言った「あぁ、あなただ。あなた方こそ本物のスペードの騎士だ」◆こうしてブラットたちがスペードの騎士と証明された。テオリエ騎士たちはライゼン妃の指令により国境付近の領地を与えられ、まだ見つかっていないという不正な取立てを行った集団の犯人捜索を命じられて婚約も白紙となった。ライゼンから再度、城内勤務を命じられたブラットは言った「もし私のような者でも、なぞなぞの答えを解くことが出来た時は結婚していただけますか?」ライゼンは約束すると言うとブラットは答えた「赤子の名前は(zigarette)そして、その理由は名にあります…(Reizen)…(Blatte)…あの赤子は私と貴方の子…私が赤子の父親だからです」◆こうして……ライゼン妃は、なぞなぞを解いたブラット騎士と約束通り結婚し赤子もブリューテ国に迎え入れられたのだった。ブラットは「スペードの騎士」として民に慕われ、彼は生涯、騎士の位ではあったが(ライゼン妃から王族の地位も授けられたが彼は辞退した)事実上の国王としてライゼン妃と共に国を統治した。彼らによってブリューテ国は末永く、しあわせな国になったそうだ……
(終)
***[2024-r6]
『女王のなぞかけ』
◇ライゼン姫とブラット騎士の後日談
◆ブリューテ国のライゼン妃はブラット騎士と秘密の恋仲。ある時、城内の礼拝堂に赤子が預けられライゼンは引き取ると公言するがブラットは反対する。赤子を巡って意見が分かれる2人は次第にすれ違うようになってしまい…ライゼン妃は赤子をへルシェン国夫妻に預けるがある時、放浪騎士団一味に連れ去られてしまう。間もなく捕まった犯人のリーダーがなんとブラット騎士で…
{◎妙に花にこだわるのは、たぶんDVDで見たジェラール・フィリップ『華咲ける騎士道』から着想してるからだと思います}
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◆01_秘密の恋仲…ライゼン姫は「騎士の国」として知られるブリューテ国の次期女王。彼女は表向きは未婚だが近衛騎士「ブラット」と恋仲だった。しかし飲酒が解禁となった祭りのある夜…酔った勢いでブラットはライゼンをソファに押し倒してしまう。過去の嫌な記憶を思い出したライゼンは怒り、仕事以外では口もきかなくなってしまう。ブラットも謝罪したものの自身の過ちが赦せず、それから2人は距離を置くようになってしまう…◆ある時…ライゼンの城内の礼拝堂に赤子が預けられた。ライゼンはその赤子に特別な興味を示す。やがて城内勤務の傍ら、率先して赤子の世話をするようになる。側近のブラットは本業である仕事が疎かになると言い、赤子を孤児院へ預けるよう提案するがライゼンは、なかなか承諾しない。そんなライゼンをブラットは補佐を続けてたが、やがて他の家臣たちがブラットがライゼン妃の仕事にまで着手するなら国王代理を選出すべきであるという話が出てしまう。またライゼンがことさら赤子にこだわるのを見て城内では「ライゼン姫の隠し子ではないか」「父親は城内の騎士の誰かではないか」と噂が飛び交い始める。ブラットは恋仲であると信じていたライゼン姫のそんな噂に耐えられず城内勤務を辞職し自分の領地へ帰ってしまう。疲労が積み重なったライゼンも、とうとう体調を崩してしまい泣く泣く赤子をへルシェン国の夫婦に預けるのだった……
◆02話_赤子の拉致と放浪騎士団…ライゼンは休養をとり、間もなく仕事に復帰するが赤子の世話を兼ねていた時の気力は感じられない…家臣たちはライゼン妃がよほど赤子を愛おしく感じていたのだろう、そろそろ身を固めても良い時期であると、話し合うようになった。ライゼンの隠し子騒動や城内騎士との情事など、あらぬ噂が飛び交ったこともありライゼン妃を早く結婚させるべきであると家臣たちは頻繁に社交パーティーを行うことが多くなった。もちろんそれはライゼン妃の夫、延いては国王になる人物である。しかしライゼンは乗り気になれなかった。候補者は皆、それなりに立派な貴族や騎士ではあるが、どこか権力目的のように感じてしまうからだった。それに自分の領地へ帰ったはずのブラットと未だ連絡が取れない状況もライゼンを苛立たせた。赤子がへルシェン国に預けられたのだからブラットには城へ戻って来て欲しかった。しかし何日経っても彼から手紙は来なかった…◆結婚話を煩(わずら)わしく思ったライゼンは求婚者に、ある「なぞなぞ」を出すことにする。それは…【へルシェン国に預けられた赤子の名前と、その名前を付けた理由を言い当てられた人と私は結婚する】…というものだった。赤子の名前を尋ねられるのはへルシェン国王との面識がある一部の貴族だけだったが、ブリューテ国内を巡業する騎士たちの間でその名は「ゼガレット」であるとたちまち知れ渡る。しかし理由を答えられる者は誰もいないのだった。嘘や虚偽の答えをすると罰則や求婚が出来なくなるため、うかつにライゼン妃に謁見を求める騎士もいなかった。ライゼンはブラットだけが、このなぞなぞを解けると期待し彼を待ったが、それでもブラットは音信不通だった。だが間もなく、別の形でライゼンはブラットと再会することになる◆ライゼンはある時、巡業騎士の報告でブリューテ国境付近で、騎士の身分を濫用した不正な取立てを行う集団の噂を聞く。その一方、その輩(やから)を、国の巡業騎士よりも先に取り締まる少数派「スペード騎士団」がいると噂も耳に入る。それを聞いたライゼンはブラットの家系はスペードの紋章で彼がスペード騎士ではないかと推察する。しかしスペード騎士団は覆面を被っているため、顔が分からないという。ライゼンは巡業騎士たちにスペード騎士団と接触する事があった時は、お礼をしたいので城に立ち寄るよう伝言をお願いする◆それから間もなくして、事件が起きる。へルシェン国に預けられていた赤子が拉致されてしまう。ライゼンは赤子と自分の結婚話を結びつけた事を後悔した。しかし拉致の犯行グループはすぐに捕まった。少数グループの騎士たちが不釣り合いな赤子を連れていたことでかえって目立ったのだった。しかし城に連れてこられた犯人を謁見室で見たライゼンは驚(おどろ)いた。グループのリーダーがブラット騎士なのだった…◆放浪騎士をしていたせいかブラットは以前より眼つきが鋭く、金髪も長めになっていた。ライゼンは赤子の連れ去りについて尋ねるが彼は黙秘を続けた。旅に出て返事を書けなかった事は詫びたが、連れ去った事実を認めてもその理由は決して話そうとしないのだ。ライゼンが他に尋ねる間もなくブラットたちは別室へと連れ出されてしまった。ブラット騎士たちを捕らえた騎士団リーダー「テオリエ騎士」は、この手柄の報酬として領地や金貨は一切受け取らない代わりに、なぞなぞ廃止を要望し、ライゼン妃に求婚する。しかしライゼンはあくまで結婚するのは、なぞなぞを解けた人だけであると言い毅然とした態度を崩さない。するとテオリエは自分たちこそ国境付近で噂されていた「スペード騎士団」であると打ち明ける。彼らの顔を知る者は誰もいないためライゼンも無下に扱えず、またテオリエは家臣たちからも推薦された公認の求婚者となったため、しばらくは側近として城に迎え入れるのだった…
◆03話,_なぞなぞの答え…ブラットが捕まってから間もなく、国境付近の村長が城を訪ねて来る。以前、不正な取立から助けてもらい、スペードの騎士が城にいることを聞き、お礼を述べに来たという。ライゼンはテオリエと村長を面会をさせることにする。ところがテオリエは「顔は隠したい」と言うので、スペードの騎士であると証明するためライゼンも同席する。面会は問題なく終わったが村長は緊張していたのかテオリエとの会話があまりかみ合わないのだった…謁見が終わってからライゼンは村長と言葉を交わした侍女から妙な話を聞く「村長様は…覆面を取ったお顔を見たことがあって、長い金髪の騎士だったと、おっしゃったんですよ…」◆ライゼンは村長に数日、城の滞在を延ばすよう依頼する。そして謁見室にテオリエ騎士たち、ブラット騎士たちを集めて拉致事件について再度話し合う場を設けた。ライゼン妃と結婚も現実味を帯びてきたテオリエ騎士は何を今更…と渋々参加する。ライゼンは再度テオリエ騎士が「スペードの騎士」か尋ねる。彼はハッキリ自分たちがそうであると言いブラット騎士たちは、うなだれるがライゼンはブラットを励ますように目配せする。次にライゼンは「ではこの方々の話を聞いてあげてください」と言い、隣の部屋にテオリエ騎士たちを案内する。そこは舞踏会場でオーケストラボックスには村長だけでなく、その他のスペードの騎士に助けられたと言う国境付近の住民たちが集められていた。「あの時はありがとう」「貴方がたは素晴らしい」と席から拍手や称賛が湧いた。ところが…村長だけは渋い顔をしてこう言った「皆、だまされるでない。あの人たちはスペードの騎士たちではないぞ…!」スペードの騎士たちは覆面を被っていたため誰もその顔を知らないのだが村長だけは見たことがあった。ライゼンはすかさずブラットたちを舞踏会場に招き入れる。すると村長は言った「あぁ、あなただ。あなた方こそ本物のスペードの騎士だ」◆こうしてブラットたちがスペードの騎士と証明された。テオリエ騎士たちはライゼン妃の指令により国境付近の領地を与えられ、まだ見つかっていないという不正な取立てを行った集団の犯人捜索を命じられて婚約も白紙となった。ライゼンから再度、城内勤務を命じられたブラットは言った「もし私のような者でも、なぞなぞの答えを解くことが出来た時は結婚していただけますか?」ライゼンは約束すると言うとブラットは答えた「赤子の名前は(zigarette)そして、その理由は名にあります…(Reizen)…(Blatte)…あの赤子は私と貴方の子…私が赤子の父親だからです」◆こうして……ライゼン妃は、なぞなぞを解いたブラット騎士と約束通り結婚し赤子もブリューテ国に迎え入れられたのだった。ブラットは「スペードの騎士」として民に慕われ、彼は生涯、騎士の位ではあったが(ライゼン妃から王族の地位も授けられたが彼は辞退した)事実上の国王としてライゼン妃と共に国を統治した。彼らによってブリューテ国は末永く、しあわせな国になったそうだ……
(終)
***[2024-r6]
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