絵皿と子守歌

【小さな町で学校の教師をして暮らす画家のクレセントと音楽教師のダリア。ある時、ダリアは「歌で人を眠らせてしまう能力」に目覚める。新婚旅行を兼ねてその能力の原因を探るため、プラチナ夫妻と共にイルミネ市へやって来る◆都は国境付近に接するため、しばしば富裕層を狙った身代金目的の誘拐が起きていた…プラチナ夫妻の赤子が連れ去られ、しかも犯人は、なぜかクレセントの正体が「怪盗モントスティル」であることを知っており「身代金の引渡し役」を命じてくる。子守をしていた妻のダリアまで連れ去られたクレセントは、再び「怪盗」となり彼らを救出するため海を挟んだ対岸にある国「ソードボール島」へ向かう◆そこで怪盗が会ったのは生き別れた姉で「触覚」が優れた「女怪盗ブレッセル」だった。クレセントは元々、この島の出身で幼少期に国外へ亡命していた。ブレッセルは島の統治者「クロワッサン妃」の幹部で独立資金調達のため身代金の回収をしていた。ブレッセルの目的はダリアを人質にし「視覚」の優れたクレセントを仲間にする事だった。またダリアの歌は島の灯台電波を増幅させる効力があるため、ダリアを島に監禁しようとする。ブレッセルに太刀打ちできず捕まってしまうクレセントたちだが、クロワッサン妃が逃亡させる。その代わり妃は彼女が優れた「嗅覚」で嗅ぎつけた3か月後の「地震日」を明かし、灯台とパラボラアンテナが倒壊して防御力が消滅し、それによって再発する紛争と津波から、イルミネ市と島を助けて欲しいとお願いされる。この時、実は「クロワッサンがクレセントの姉」だと知る。ブレッセル(正体は島の統治者)とクロワッサンは、城内に度々侵入するスパイの奇襲から身を守るため度々、替玉として入れ代わっている。ブレッセルの「触覚」が優れるのは以前、重傷を追ったブレッセルがクロワッサンの血を輸血され、その影響を受けた事による。姉にとって妃は命の恩人で(昔…不発弾の暴発に巻き込まれて大怪我したところを救われた。視力が落ちてしまい代わりに「嗅覚」が優れるようになった)生き延びるため、クレセントを見捨てた事を詫びるのだった…怪盗はダリアの子守歌と島の防御機能を利用し、イルミネ市の都市機能を一時的に麻痺させる事で住人たちを市外へ避難させ、地震の被害から人々を守る作戦を実行する…

「地震日」が過ぎた後…イルミネ市のパラボラアンテナとソードボール島の灯台は地震で全壊してしまう。イルミネ市とソードボール島の海域は電波の影響が消滅した代償として環境汚染が残り、いかなる航空機、船舶類も一切渡航できない「世界の果て」と呼ばれる海域となってしまう。この汚染責任は領土を主張していた大国の国々が負う事となり、その歳出を賄うために軍事費削減による停戦を余儀なく迫られ、それからは競うように環境汚染改善時代となるのだった。この海域が再び安全に往来できるようになったのは、それから30年後だったという…

さて旅行から帰った後…クレセントはダリアから妊娠してる事を打ち明けられる(子守歌の効力は彼の血を受けた影響によるもの)今まで子どもを持つ事に消極的な彼だったが、姉と再会を果たし改めて家族と向き合い、親となる決心をするのだった……(おわり)】
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