△ 贋作(がんさく)とフルート〜re:make

(おまけ~贋作とフルート)
◇On the tower

※本編を読んでないと意味が分かりません…人生に暇な時に読んでみてください。
※挿絵(2点)省略してます「ILLUST」にて。

{◎小説のおまけ短編◆画中画「黒い鳥と花嫁」の題材になってる部分}



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◇勝手にインタビュコーナー
Q1…青年の仕事って何ですか?
◆本編では蛇足で出しませんでしたが、ピザの配達員です。配達が夜なので彼の仕事は夕方出勤です。短時間でも時給が高いので絵を描く時間が欲しい彼はこの仕事をしてます。本編では絵画を持ち運ぶためピザの箱を使ってます※実はこれ『怪盗グリフィン』のパクリです…。
絵画サイズF10→約540✕455mm,


Q2…フライドライスってどんな料理ですか?
◆そのままの意味です(炒飯)


Q3…2人が住んでる町や集会所のイメージにモデルはありますか?
◆ドイツのローテンブルク・オプ・デア・タウバーです。塔の高さをつい60mにしてしまったのは市庁舎の塔の高さからの発想です。この町には本当に「犯罪博物館」があります…。


Q4…この際お伺いしますが…青年は本当にお嬢さんの事を大事に思ってるんですか!?急須氏は普段から「性的暴力許せない発言」してるくせに青年は三日月が現れた時、避妊しようとせずお嬢さんにアレするなんてDVですよ!もうっっ最低ぇwwwじゃあないですかぁぁ!?どうなんですか、そこんトコぉぉ!!
◆お、落ち着いて下さい…はい、全く仰る通りでございます…小説の都合上、生活感に関する事は省いてます。一般的に登場人物がやれ、トイレ行った、ハミガキした、などは書きませんよね?なぜってそれが当たり前だからです。彼も(小説では書いてませんが)ちゃんと避妊具してます…それに動作はいつもゆっくりだったり、お嬢さんの目を覗き込んでいたりしてます。これは相手への意思確認です。ご納得頂けましたでしょうか…?


◆◆◆[24-2-塔の上で]
塔の最上階は地上よりも風が強く吹いている。時折、塔の壁には突風が吹き付けてくる。鐘が吊るされている石造りの小部屋から外に出てみると、鐘のある小部屋の周りをぐるりと一周できるように細い通路が設けられている。手摺りは細めの鉄の棒で出来た物で壁と通路の縁にそれぞれ備え付けられていた。しかし、やや錆びていて壁との間に隙間がある部分もあり、頼りなさ気な手摺りだった。それから小部屋の出入口の目の前は少し空間があった。昔の見張り場所だった様で石が敷き詰めた場所が少しだけ確保してある。景色は良いが、風が強く吹くので2人は見張り場にしゃがみ込んだ。場所は狭く、お互いの肩が触れ合った。
“…ごめん”
“何が?”
“いや、肩がぶつかったから…”
“別にいいわよ…”
2人はしばらく黙っていたが、不意に口を開いた。
「「あの…!!」」異口同音でお互いの呼びかけが重なる。
“え、なあに?”
“いや、君の方からどうぞ”
“あなたから、どうぞ”
“あ…大したことじゃない。寒くないかい?”
“ええ”
“君は、何を言いかけたんだい?”
“あ、えっと私…あなたに謝りたくて…”
“どうして君が謝るのさ!?”
“私、あなたの事…ずっと誤解してて、あなたの話をちゃんと聞こうともしなくて。あなたは私の事を守ろうとしてくれてたのに。私は、自分の事ばかりだった……夫のあなたの事を信じていなかったわ。本当に、ごめんなさい…!”
“そんな!いいんだよ。元はと言えば、僕が昔、盗んだ宝石で君への結婚指輪を作ろうだなんて考えたりしたのがいけなかったんだ。僕はどうかしてたよ。そんな物を贈られたって君が喜ぶわけないのに。でも、出来るだけ早く君に結婚指輪をはめたかったんだ。君が他の男に取られる事が怖かったんだ。僕は…本当は、臆病者なのさ…”
“そんな事は無いわ。あなたは優しくて、思いやりがあって、いざという時は自分の事は顧みずに私を守ってくれる勇気ある人よ……”

お嬢さんは顔を上げた。鳥のマスクの先端がお嬢さんの顔に触れそうになったので怪盗はマスクを外した。素顔でお嬢さんの瞳を見つめた時、青年は目眩(めまい)を感じた。マスクを長く付け続けたせいで、呼吸がおかしくなったのだろうか?貧血のように頭がクラクラとする……。
その後は……もう何が何だか分からなくなった。頭の中が、草原の様になって、何も考えられなくなった。青年は、お嬢さんの肩に手をかけると顔を近づけた。2人の唇が触れ合った。それから、修道服のベールを外すと、石畳の上に放った。手を肩から腕へと滑らせて、背中を優しく撫でて、腰まで来ると、そのままお嬢さんを抱き締めた。そして身体の温もりと胸の膨らみを感じた時、抑えがたい衝動に駆られた。お嬢さんを抱き締めたまま、青年は石畳に倒れ込んだ。お嬢さんを仰向けすると、その上に、覆い被さる…
(……ちょっと待って…ここでするの…?)
…ねえ、せめてアパートに帰ってからにして頂戴…と、言い掛けて、お嬢さんはやめた。あのアパートの壁は、防音では無い。まだ日も沈まないうちから“夫婦の営み”を隣室のあの奥様に聞かれたら、次の日は、アパート中の噂の的にされるに決まってる。ここなら誰かに見られる事は無いし、多少、声を出しても突風にかき消されて聞かれることは無いし…。
(あの人、悪い人じゃ無いのだけれど…ちょっと、お喋りなのよねー……)
“ん、何か言った?あ…ごめん。久しぶりだし、ちょっと強引だったかな…”
“ううん、何でも無いわ…どうぞ、続けて頂戴”

青年は、動きを続けた…狭い見張り場所の隙間は2人の服で埋まった…やがて青年の三日月が現れてお嬢さんの中に少しずつ入り込んだ…お互いに寄り添って1つの塊になった…2人の間だけが突然、夕立が降り出したかの様になった…時折、青年の動きが速くなる…そのリズムに合わせる様にお嬢さんは、小鳥のさえずりの様な声をあげる…しかし、2人の声は塔の上を吹く突風にかき消された……

お嬢さんは、晴れた夕方の空をぼんやりと眺めていた。空の遥か高い所で鳥が1羽、ゆっくりと夕陽に向かって飛んで行く…

その時…お嬢さんはいつか見た絵画を思い出した。それは1羽の大きな黒い鳥が若い娘を攫(さら)って、花嫁にしてしまう題材の絵画だった。

“…私を連れ去って頂戴、大きな、黒い鳥……”
“…勿論だ、もう2度と君を離したりしないさ……”

それから、地平線の向こうの丘へと、ゆっくり夕陽が沈み、空がガーネット色からラピスラズリの群青色に染まる頃まで…

2人は…愛し合った………




□「08-禁忌色」より『まどろむ妻』

***再掲,
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