△ 贋作(がんさく)とフルート〜re:make

【ここからの遠くの土地、小さな町での事…そこには、アルバイトをしながら画家を目指す「クレセント」と、町の小さな学校で音楽教師をしてる「ダリア」という恋人たちがいて、小さなアパートで仲良く暮らしていた。2人には秘密があった…1年前、ここから遠くの町で行われた公開結婚式で花嫁が怪盗に攫(さら)われ行方不明となる事件があった。その花嫁こそダリアであり、クレセントは元怪盗だった…ある時、クレセントはダリアと正式な夫婦となれるよう結婚指輪を用意したいと思い、昔の怪盗時代に盗んだままで、持ち主にも返せなくなった2粒のダイヤモンドで指輪を作ろうと思いつく。しかしダイヤをダリアに見つかってしまい、クレセントが未だ盗みをしていると嘆(なげ)いたダリアは家出をしてシスターとして集会場の塔に引きこもってしまうのだった…そんな時、クレセントは町1番の裕福な貴婦人で画廊の館主でもある「ゼラ」という女性と会う。クレセントの絵画に一目惚れし、特にダリアをモデルにした裸婦画に夢中になり、クレセントのパトロンになる事を申し出る。しかし実は、ゼラはクレセントの事を以前から知っていた…昔の遠い町に住んでた頃、彼女の家に出入りしていた画家がクレセントだった。しかもゼラの遠縁の親戚に贋作を描かされていたと言うことも知っていた。怪盗が盗んだ2粒のダイヤはゼラの家から盗んだもので、ダイヤの所在が不明となった際、ゼラ自身は全く関与しなかったのに、その贋作事件が原因で信用を失ったゼラは婚約破棄となり、恋人と引き裂かれてしまったのだった…久しぶりに元恋人「プラチナ」がゼラの元を訪れる。クレセントの裸婦画を見てダリアと同棲している男が怪盗であると気づいた彼はダリアを取り戻そうと接触してくる。プラチナはダリアの政略結婚の相手だった…また未だプラチナを忘れられないゼラは久しぶりの恋人との再会で魔が差し、クレセントに裸婦画の贋作を描かせ、それを売却する事で盗まれた結婚指輪のダイヤを補填(ほてん)しようと企むのだった…複製を依頼されたクレセントだが、裸婦画は複製不可な特殊な技法で描かれていたため断る。契約書によって裸婦画の所有権が一時的にもゼラであるため、描かなければクレセントと浮気関係であるとダリアに吹き込むと脅《おど》されたクレセントは裸婦画を盗む決意をする◆怪盗(=クレセント)は色合いが全く違う複製の裸婦画を用意し、それをゼラの元に送り付ける事で原本回収に成功する。偽物が手元に残ったゼラは、ようやく正気を取り戻し贋作売買を思い留まったのだった…しかし怪盗は逃亡中に川で溺れてしまい、それを見かけたシスターのダリアの要請で集会場の先生と弟子に救助される。クレセントはダリアと仲直りできたと喜んだのもつかの間、ダリアは自ら望んでプラチナと昔の遠い町に帰ると言い出す。出発前夜…プラチナはダリアと町1番の高級ホテルに宿を取り、帰る前に男女の営みを迫ってくる…翌朝、プラチナは1人でベッドに寝ていた。ダリアと通じる事もなく彼は眠り込んでしまったのだった。枕元には2粒のダイヤモンドが置かれ、クレセントとダリアが裏で手を結んでいたと悟るだった…実は裸婦画が盗まれた翌朝、ダリアは告解室でゼラからクレセントに贋作を強要させた事、ダイヤが盗まれた事で恋人と引き裂かれた事を聞き、ゼラとプラチナを復縁させようと画策したのだった。クレセントが持っているダイヤをかつての恋敵であるプラチナに返却させるためダリアは「わざと」プラチナに付いていくと嘘を言ったのだった。クレセントはホテルへ向かう前にダリアが表現して見せた「手話」から彼女の計画を察しプラチナに悟られず計画に加担したのだった。プラチナはダイヤが怪盗から返却された事をゼラに伝える。ゼラもクレセントに贋作を描かせてダイヤを補填しようとした事を正直に打ち明ける。2人は一緒に遠い町へと帰って行った。ゼラがダイヤを独り占めしていたという疑いは晴れて2人は夫婦となれた。またクレセントは、プラチナからダイヤの1粒を譲渡(じょうと)される。それはゼラの罪を赦して欲しいことと、和解の印だった。クレセントとダリアもこのダイヤで結婚指輪(1組のイヤーカフスを2人で片方ずつ分けたもの)を作り正式な夫婦となったのだった……(おわり)】
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