-短編-未完成作品
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小さな身体を抱えたまま、崩れた天井の下敷きになっていた。
積み重なっていく瓦礫の下、腕に抱えた幼い少年が潰れない様に必死で、ただそれだけだった。
地面に下ろし身体で覆う方が、万が一の時に少年が助かる確率は高いと思ったが――
体温低下が生存率を下げる事を考えると体勢はしんどいが自分の胸に小さな身体を抱えて重ね、天井から迫る瓦礫を幾つか打ち砕いて空間を作り素早く隙間に入り込む。
周りで大きな音が近く遠く、響く。
腕の中の少年は今、生きているのだろうか。
あまり呼吸をしている様な感覚も無く、心臓の音も弱々しい。
鼓動に集中するには、まだ周辺が喧しい。
体温を怖がる小さな身体は、今は意識も手放したまま。
どうして傷付かない作戦を考えてくれないのだろうか。
普段行動を共にしているトレスを見ているとそんな風には思わないかも知れないが、本来一番大切にして欲しいのは『生き延びる事』だ。
レオンにとって生きる理由は今、難病の愛娘の生命が僅か1秒でも長く生きてくれる為に、自分が生き延びる必要があるという、ただの一点のみである。
目標を持って欲しいとかそういう事ではない。
ただ何故か、任務で外に出る時に、会いたいと焦がれる人物が1人増えた気がして。
とはいえ、整地された場所ではない床に転がった身体に、瓦礫と化した天井を腕と足で支えている事実には変わりない。
「いってぇ…っ」
静かになった暗闇の中で、大漢は喉奥から吐き出す様に呟いた。
腕の中の幼い少年――外見はともかく、彼は立派な成人である。
生命と引き換えに成長を手放したと言っても過言ではない少年は、大漢の半分程の背の高さしかないが同じ国務聖省特務分室に籍を置く同僚である。
細く頼りなく、重さもあまり感じない小さな身体を抱えていると自分の身体を通して僅かに鼓動が生きている事が確認できた。
浅く呼吸はしているものの意識は失ったままの少年は腹部を貫かれて大怪我を負っており、意識を取り戻したとしてもその身体は動かすことなどできないだろう。
「[#da=1#]、…おい、しっかりしろ、」
何度か呼び掛けてはいるが、どうも意識が戻る様子はみられない。
だがこの状況であってもレオンには呼び掛ける必要があったのだ。
そう。
この幼い少年はどういう訳か体温を非常に苦手としており、混乱した折は――別の同僚は『発作』だと言っている様だが――手が付けられない。
勿論力で押さえつけるのは簡単な事だ。
押さえつけるのは別に嫌いではないが、何故か彼には手荒な真似をあまりしたくないと思っている。
腕の中で幼い同僚は途切れ途切れに呼吸をしている事は確認できるが、ただこのままでは出血の量が多くて危険な状態が予測できる。
胸の上で生暖かい血液が僧衣を濡らしていく。
けれど。
確か彼のコードネームは’リジェネーター’であった様なと、ふと思いを巡らせる。
ただあまり目の当たりにした事はない。
腕の中の少年に、呼び掛けるしかない。
「おい、[#da=1#]…?」
暗闇の中でうっすらと周囲が明るくなっていく。
そうだ――
静かに息を吐き出すが、その様子は安堵を含んだものであった。
「」
。
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