-短編-未完成作品
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飽きるとかそういうのは無い。
ただ時々想像力が著しく開花したような錯覚になる。
そして――
作品に手をつけると、全くその情景が文字として、絵として使いこなせないままお蔵入りとなる作品が幾多数もあるのが非常に残念だ。
3年後、5年後、7年後にふと続きが書きたくなって、ノートを開いても、あの時の自分が何を描きたかったのか、何という言葉を続けたかったのかが浮かんでこない。
新たに作品を思い浮かべながら、あの時とは違う自分が――いや根本的には同じ人間なのだがそういう訳では無くて――まるで違う作品を描いている様な感覚で一筆ずつ進めていく。
漫画家、作家、監督などは幼い頃からきちんと起承転結が有って、子供であっても作品が幾つも出来上がっているものが多い。
そういう人達が所謂天才なのであろう。
筆者にとっては羨ましいを超えて、正直に言うとただの嫉妬でしかないことをここに記しておく。
つまり何が言いたいかというと
「 い、お前聞いてんのか?」
出窓のスペースへ座って古新聞を見ていた[#da=1#]は、呼び掛けた相手の方を向いた。
「すみません――」
「いやそうじゃねえ」
謝った少年の言葉を遮ると「独り言になる所だっただろうが」と不満気に呟いた。
「…あの」
取り繕おうと思いつくまま言葉を並べても、声になる事はまるでない。
少年が考え込んでしまったのを見て、レオンは続けるのをやめる。
何か考え込んでいる様だったが、ただそれから先言葉が続く事が無かった。
「まあいいや、それよりお前、寝てなくていいのか?」
「ご心配を…」
「俺の腕でも貸してやろうか?」
「…あの、――?」
突然。
ぐるりと回想する。
列車の中で神父が3人。
とはいっても、途中で1名は別の列車に乗り換える事になる。
短く髪を刈り上げ、小柄で端正な顔立ちの神父の腕を取り、子供が眠っている。
僧衣を身に纏っている事もあり、彼等神父を知らない周囲から見ても同僚である事はよく分かる。
その寝顔は普段見せる様な表情は無くどこか安心している様子で、子供はすっかり穏やかな寝息を立てていた。
「見せつけてくれるじゃねぇかぁ…、拳銃屋」
「否定。神父[#da=1#]は睡眠時間が不足しているので優先する必要がある」
「だからってお前――…こいつそんなにお前に懐いてんの?」
「肯定。現時点で[#da=1#]・[#da=2#]神父との同行時間が一番長いのは俺だ」
「…へー」
何がとは言い難いが妙な気分だ。
レオンにとって可愛い相棒が、目の前の小柄で端正な顔立ちの青年――トレス神父に、しかも彼の腕に取られてしまっているのは面白くない。
「いいか?時間よりも信頼関係だ。すぐに逆転してやるから覚悟しろよ?」
穏やかに眠る少年の頬をつねって起こしてやりたい気分だ。
何で俺がつまらん嫉妬なんてしなきゃならねえんだと、心の中でもやもやとした気持ちが浮いてしまい穏やかに過ごせない。
「発言意図が不明瞭だ。回答の再入力を要求する」
硝子玉の様な瞳を向けた青年が問い掛けた時に口元で何かを言ったような気がしたが、それを確認する術は今は無い。
「うるせぇ、放っとけ」
どう見ても心地良さそうに眠っている少年を起こしたくはないから、これ以上問答はしたくない。
手を後頭部で組んで足を組むと「お前が降りる時に起こしてくれ」と言って目を閉じた。
「――肯定」
僅かな機械音と共に、青年はピタリと動かなくなった。
単純に嫉妬だったのかも知れない。
ただ、もう忘れたい。
どういう経緯かは分からないが[#da=1#]は神父としての活動を赦されている身分だ。
ああ、俺は――
本当に稀ではあるが、[#da=1#]は時折口元が柔らかく緩む事がある。
何故かは良く分からないがその表情を初めて見て以降は、この笑顔が見たくて仕方がない。
あまり表情を明確に見せてくれる事はないが、見る事ができた日には何故か酒も進むし心が弾む。
会う度に回数が増える訳でもないから余計に嬉しく思ってしまって。
「ガルシア神父…?」
「あ?…おお、どうした?」
いつの間にか回想の中にいたが、声を掛けられて現実に戻される。
・・