-短編-未完成作品
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赤子でも、痛い思いをしたら覚えるとはよく言ったもの。
幼い顔立ちの小さな神父は――ただ、外見はともかく彼は中身は立派な青年だが――その手が破裂音と共に吹き飛んだ。
目で追ったとは言え、男が懐に飛び込んできたのを躱さないといけないから、手の行方は途中で分からなくなった。
深追いしなければ良かった。
後悔しながら低い位置で蹴り、地面と平行して跳び、男と距離を置く。
地面に降り立った幼い子供は大きくバランスを崩す。
立て直そうとしてその手を――
「うっ」
思わず声を漏らしてしまった。
今しがたその手は破裂してしまったのだった。
大きくバランスが崩れたその身体を何とか留めようと肘を手前に出すが間に合わずそのまま地面に倒れてしまう。
十字架のついた腕輪が、取れた手の先から外れて地面に落ちる。
血飛沫が腕輪を追い掛ける。
痛い。
身体を動かしたくないと思いながら、しかし、内側から押し出される様に身体が腕輪を追い掛ける。
残った手が腕輪に触れようとした瞬間。
伸ばした手の甲にナイフが突き立った。
鋭い痛みが体中を駆け抜け、同時に喉奥で悲鳴が上がる。
「へ、舐めやがってぇ…このガキィ」
姿を現したのは身軽を絵に描いた様な細身の男。
手の先から何か、空気の様な、気泡の様な、泡めいたものが全身をじわじわと回っていく様な違和感に囚われながら、男の足元を睨みつける。
髪を掴んで無理矢理に掴み上げると喉奥で呻く子供に「こうなったらぐちゃぐちゃに切り刻んでから焼き殺してやる」と啖呵を切る。
「ああ、そうだ…お前確か、デカい男と一緒に居たな――」
髪を掴まれたまま、成す術なくぐにゃりと垂れ下がっている子供が先日伴っていた男の事を思い出す。
「あいつにお前の首を渡すと言ったらあの男…金でも払うか?」
「冗談じゃねえぞ」
「あ――?!」
突然羽音が風を裂いて――
「ぎゃあああっ!いってえええ!」
男の声が上がるが早いか、血が噴き出すのが早いか。
髪を引っ掴んでいた男の手は、手首から綺麗に吹き飛んでいく。
同時に子供は地面に崩れ落ちたが、そんな事でさえ気にならない様だった。
月を背に大漢が立ち上がる。
男は地面に転がった子供などすっかり捨て置いて、大きく左に飛んで距離を取る。
「やいスルメ野郎…覚悟はできてるんだろうなぁ…?」
月を背に立っているのにその瞳は鋭い光を纏っていて。
その色はハッキリと怒りの色を含んでいる。
「…ハハッ、お前がラスボスって訳か」
スルメ野郎と呼ばれた細身の男の口元は笑っていたが、月に照らされたその顔は妙に引きつっていた。
「俺ぁそいつみたいに優しかねえぞ?」
「ひぃっ」
同時に耳元で羽音の様な耳障りな音が聞こえる。
音に気が付いた時には男の指は吹き飛んでいた。
「くっそ…」
上から死角になる様に素早く路地へ跳び込むと――
「ひっ?!」
「無茶し過ぎだろ、お前…」
「」
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