-短編-未完成作品
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「いやっ」
小さな悲鳴が聞こえたのは、シャワーの栓を閉めた時。
寝室から上がった悲鳴は小さく消えそうなものだったが、聴力の発達した耳はその悲鳴を聞き逃す訳が無い。
飛び込む直前。
「キャウン!キャンッ」
甲高い犬の悲鳴と重たい肉厚の何かがズシンと落ちた様な音が室内で響く。
既にノブを捻っていた手はその隙間から身体をねじ込ませる様にして部屋へ飛び込んだ。
「あ、えっ?」
位置を把握した途端に幼い子供を左腕で抱え上げ、同時に今にも飛びつかんとしていた大型犬に向かって、右手で掴んだベッドシーツを犬に投げる様に被せる。
視界を奪われた犬がキャンキャンと情けなく鳴きながらドタバタと四肢を踏み鳴らしているのを横目に見ながら、幼い子供の無事を素早く確認する。
「無事か?」
少年は突然の事に動揺している様子で、言葉が上手く出て来ない。
幼い顔立ちの少年は、外見とは裏腹に立派な成人だ。
ベッドシーツから這い出した大型犬に向かって金色の瞳で睨み掛けると、唸っていた犬が突然何かに気が付いた様に尾を下げて部屋の隅へとジリジリと後退して行く。
「大丈夫か?」と声を掛けると何故か耳まで赤くなっている少年。
高く不安定な所にいるからなのか、それとも抱き上げた事で身体が密着したからなのか。
言葉にならない様子で喉奥で何かを言っている様子の子供を床へ下ろすと、何故かしっかり足から立てずにぺたりと座り込んでしまった。
寝起きに大型犬と対峙した事で身体が恐怖したのかと思うが、だとしたらここまで赤くなっているものだろうか。
両手で顔を隠してしまって表情は窺えないが、[#da=1#]が紅潮しているのには理由がある様だ。
「おいお前…大丈夫かか?」
顔を上げ掛けて、口元を塞ぐ。
瞳は強く瞼を閉じてしまっているその姿は、神に唯一偽っている性を全く隠し切れていない。
トレスがこの場に居たら説教タイムに突入するところだ。
何か言い掛けては、瞳を強く閉じて、再度何かを言い掛けては下を向く。
しかしその口元は強く両手で塞がれていて、何か言いたげに顔を上げ掛けては再び顔を下ろしてしまう。
消えそうな声を拾おうと身体ごと近付けて「どこか噛まれたんか?」と腕に触れ触れると短い悲鳴が耳に届く。
「何だよ、おいどうした?」
ここまで何もないと流石に困惑してしまう。
まだこの小さな同僚とは行動を共にし始めて日が浅い。
ああ、こいつ、体温が苦手で…――
突然の悲鳴に慌ててしまってすっかり忘れていた事を思い出し、ふと視線を落とす。
[#da=1#]が見えたかと思うと、自分が一糸纏わぬ姿である事に今更気が付いた。
「おっとぉ…そりゃお前さんにはちっと毒だな」
別に見られて恥ずかしい訳では無いが、[#da=1#]は姿形を偽っていたとしても異性である。
「大人っていうのはな、ガキとは身体のつくりが全然違うんだからな」
ひとしきり笑ってからなるべく自然に振る舞いつつ身体を離してやったが、少年は足の力が抜け切った様で立ち上がる事ができないままだった。
「あ、取り乱してしまって…あの、」
すぐに向きを変えて先ほど大型犬の目くらましに使ったベッドシーツを引っ張りその身に纏った。
奥で小さくなった大型犬に目をやると、彼はまるで大型犬の名声を手放したかの様に小さくなり打ち震えてレオンの動向を怯えた瞳で窺っている。
「へんっ、人のモンに手ェ出すからだ馬鹿野郎」
金色の瞳が奥でギラリと光ると、情けない表情で犬は顎を床につけてクンクンと鼻で鳴いた。
「俺の相棒に手ェ出したんだから、覚悟しろよ?」
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