-短編-未完成作品
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夕陽に染まりつつある世界を見下ろしている。
小高い見晴台の傍にる石造りのベンチでじっと座っていると向こうでレオンが左の階段から上がってくるのが見えた。
間もなくレオンと合流する。
最近はレオンと行動する事も増えている。
トレスは先日まで一緒に行動をしていたが、トレスは任務完了と同時に『負傷』し、シスター=ケイト・スコットに回収された。
その足ですぐ研究施設に入り、試薬品の被験者となって過ごしていた。
レオンの任務に同行する事が決まり、未だ薬が抜けきっていない中で当日を迎える事になった。
レオンを迎えに行く事はまだ許されていない。
何せ、彼が今居る場所は監獄である。
以前渡された資料を見ていると『罪人』と記載されていた。
あの時は時間など無くて、忙しく現地へと飛んで行ったのであまりちゃんと読まなかったが、あとで時間が有る時に読み返す機会が有ったが短く『罪人』と書かれていただけで特に詳細は見られず経緯は分からなかった。
詳しく聞きたいなと、そう思いながら。
けれど、そんなプライバシーに関わった話を軽々しく「聞きたい」と軽々しく口にしてしまうものではない。
ベンチに足を掛け、膝を抱える様に小さく丸くなった幼い少年。
そんな例外も時折あるが「おいどうした?」と頭上から声が降って来た。
顔を上げたらいつの間にか傍に立っていて。
レオンは2mもある巨漢ではあるが、訓練でも重ねているのか足音が聞こえる事が殆ど無い。
ただ殆ど無いというのは、わざと音を立ててドカドカと歩く事が有るからだ。
他の同僚達の前でそんな姿を見せる事が無い様だが、ただ何故そんなに振る舞いが違うのかは、分からない。
少し前に会ったばかりだが――
「いつまで独り言言ってるんだ」
何か話している様には見えない。
いつの間に言われるようになったのかは分からないが、難しく考える事を『独り言』と言い始めたのはいつの頃からだろうか。
隣へ座った巨漢をちらりと見る。
2mもあるだけに座ったとしても慎重に差が有るため、大きさはあまり変わらない。
距離が近い事が苦手だという事を知っているから距離はしっかり取ってくれるが何故か距離を感じさせない程近くで、レオンの声は聞こえる。
心を優しく撫でる様に「そんなに難しく考えるなよ?」と言った。
「お前の独り言、顔にいっぱい書いてあるぞ」
何故か、心の隙間に割入ってくるレオン。
不思議とあまり不快に思わないのは、何故なのだろうか。
座ったレオンの影が少し離れた前の柵へと長く伸びている。
ベンチに同じく座っている少年の影は柵へとは届いていないのに。
「お前とこうやって座ってるのも、結構好きだぜ?」
風が通り抜ける。
少年の様な、いたずらっぽい笑顔。
時折見せてくれるこの笑顔が好きだなとは思っているが、そんな事言葉にしてはいけないとも思っていて。
「飯食いに行くぞ?早くしねえと忙しくなる」
言われてやっと立ち上がった小柄な少年に「美味い肉あるかな」と声を掛けながら、こちら迄歩いて来るのを待っていた。
「そういや、お前さん先週まで拳銃屋と一緒だったんだろ?」
返事をしているかは、見ているだけでは分からない。
構わずにレオンは声を掛ける。
一方でレオンの傍まで来た幼い少年は、壁の様に大きなこの大漢の傍へ立つと背の低さが目立つ。
「奴さん割と派手に負傷したって言ってたけど大丈夫なんか?」
「意識は、ありました」
掠れた声が返事をした。
その声は小さく、しかし言葉は何故かはっきりと聞こえる。
聴きたかったのはそういう事ではないけど、実に簡潔な答えだった。
「ま、あいつは約束だけは守るけど、約束の守り方がなー」
促す様に顎で先を示すと、僅かに頷いて少年は先に歩き始める。
幼い少年と並んで歩き始めた大漢は「帰る迄が遠足、ってな」と言いながら後頭部へ手を回す。
「ま、俺はお前さんが無事だったら良いんだけどな」
口早にそう言ったレオンの声に引かれる様にして振り返る。
振り返った先で「あ、拳銃屋にだけは言うなよ?ハチの巣にされちまうからな」と子供の様な笑顔がこちらを向いている。
前髪で器用に隠した瞳がこちらをちらりと覗い気がしたが、その瞳はすぐに逸れてしまう。
俺が外に出る楽しみが、もう一つ増えちまってるんだな。
目の前の、一見幼く見える同僚はレオンにとって会う度に恋しくなる存在。
可愛げのある笑顔を見せる事は無いし、子供らしい仕草を見せる事も無い。
少年の様に振る舞っている同僚は子供ながら博識で、話していても退屈しない。
しかし時折、笑っている様な。
口元が柔らかく上がる瞬間がある。
そんな瞬間を見逃したくなくて。
いつの間にか心の声が聞こえる様な気になっている様な、変な感覚。
一緒にいるのが楽しい。
今までは自由な時間を好きに使っていた。
女と遊び、酒を飲み、肉を食らっていたが、最近娑婆へ出ると、そんな事で時間を潰す事と同等の程に彼と過ごす時間が楽しくて仕方がない――筈なのに。
しかし[#da=1#]の方は、どうだろうか。
俺と居て、楽しいと思っているだろうか。
「なあ、お前――」
けれど何となく、ためらってしまう。
「まあいいや、とりあえず飯に急ごうぜ?」
妙な恥ずかしさが、言葉を遮らせる。
少しだけ怖い。
背中をバンと叩くとバランスを崩した少年が2、3歩前に出た。
「お前と飯食うの、結構好きなんだよな」
慌てて体制を整えている間に、そんな言葉を突然振りかける。
身体を起こすとレオンは少し先に進んでいて「お嬢さん、今からのご予定は?」と声を掛けていた。
「やだー」と笑い合っている。
「いやー、やっぱり若いの娘は良いね」
「ほんとにー?」
口説いておいて任務に支障を出す様な同僚ではないので、そういう事に関してはあまり気にすることはない。
ただ、もし彼女達と一緒に出掛けるなら、自分は部屋へ戻っても良いだろうか。
もし、可能ならば――だけれど。
本当はあまり、お腹が空いていないのだ。
38時間前迄新薬の人体実験を行っていたのもあり、実はあまり身体の内側の状態が良くない。
ワーズワースが気に掛けて、忙しいだろうに出発前に一度訪ねてくれた。
「まだ薬の影響が抜け切っていなんじゃないのかい?」
ワーズワースがそういってはくれたが、カテリーナは意図が有ってレオンや、トレスの任務に同行するように指示を受けているので、無理だといって断る訳にはいかない。
新薬の詳細などはあまり聞いていない。
次々と試薬は投薬されているので、いちいち知らなくても良いかと、いつしか思うようになっていったのだ。
今回の薬はどうやらあまり空腹を感じない。
胃腸系に何かあるものだったらしい。
胃袋に油をため込んだような違和感がずっと残っていた。
そのまま過ごしていたから、あまり体調は良い方ではない。
近くの壁へもたれ、身体を添わせる様にして伸ばしていく。
体調の悪い時には、あまり身体を丸めてはいけないと誰かが言った様な。
誰が言ったのかは覚えていないし、それが本当に正しい事なのかすら、分からない。
身体が重たく感じる。
けれどそんな、具体的に説明できない様な内容で、任務が妨げられる訳にはいかない。
黒に近い青の髪が僧衣の端でさらりと風に揺れる。
「お前大丈夫か?」
さっきまで向こうにいた筈なのになぜかこちらへ戻ってきている。
どうして。
「別に、何でもねえけど…、あんまり体調良くねえみたいだな」
何も言っていないのに、どうして分かるのだろうか。
「お前最近、よく喋るからな」
レオンを見ると、金色の瞳はこちらへと向いている。
別に何か言葉を沢山交わしている訳では無いのに、最近特に[#da=1#]の考えている事が分かる様な。
目が離せない。
ふと。
目が合ったかと思ったら途端に「いくぞ」と声を掛けられる。
先ほど迄声を掛けていた筈の女性達を気にしながら、歩き出したレオンを追い掛けていく。
あまり進まない内に追い付いて、レオンの僅か後ろをついて歩き始める。
「あの――」
「あ?」
これ以上何か言わない方が良いのかも知れない。
「いいか?女性には声を掛けるのはマナーだ、義務みたいなもんだ」
別に未だ何も聞いていないのに。
思っては、いたけど。
義務なんだ…
後ろから見えない金色の瞳を追い掛けていると、突然こちらを振り向いて「けど、お前は別だぜ」と笑い掛けてくる。
それは少年の様な、笑顔。
目が離せなくなってしまって。
「…どうした?」
「――いえ、」
立ち止まってしまった事に気が付いたのは少し後だった。
「男に惚れられても嬉しかねぇぜ?」
笑ったレオンへ改めて追いついて、少年は美しい金色の瞳を見上げる。
何故だろう。
覗き込まれているのに別に悪い気もしなくて。
ただ少しだけ、意識してしまう。
気取られない様に「ほら、早くしろよ」と促し、今度は並んで歩き始める。
並んだ少年は線が細くて頼りなくて、相変わらず顔色が――
いや待てよ。
「体調が悪いなら何で言わねえんだ」
歩みは止めないままで問い掛ける。
「その内戻ります…」
何故か内臓は回復に少し時間が掛かる。
薬の効果を試すには『被験者的には良いモルモット』だと研究者には言われているが、こういう時は不便に感じる。
「任務に支障が無いならいいけどな」
口先ではそういったものの、途端に心配になってしまう。
レオンにとって折角一緒に過ごせる貴重な自由時間だったのに。
「折角お前に会えたっていうのにな、」
「――ガルシア神父?」
「あ?」
「…あの?」
おっと、声に出てたか。
けれどもう聞こえてしまったなら仕方ない。
「俺の顔忘れたりしないだろうな?」
冗談交じりにそう言ってはぐらかしてはみたものの。
投げ掛けてしまった言葉をどう処理したらいいのか分からないままで、レオン自身も少し戸惑ってしまう。
「いや、まあ――ともあれ行こうぜ?」
普段慣れた様に、息をする様に女性を口説いている様な自分だが――
こんなに照れくさくなってしまうものなのだろうか。
何だか変な感じだ。
違和感を感じながら、どうしてしまったのか。
「ま、俺はお前さんが無事だったら良いんだけどな」
「けど、お前は別だぜ」
「折角お前に会えたっていうのにな、」
レオンが投げかけてくる言葉が、何故か心に溜まっていく。
不思議だな――
ぼんやりと思いながら、大きな影を追い掛けていく。
少年の足ではこの大漢には追い付き難いのだが、少年でも何故か容易に追い付けてしまった。
ただどうしても身体の内側に不快感が広がっている感じがして気持ちが悪い。
出発した頃よりは随分楽になっているが、何となく気持ちの悪い感じは残ったまま。
大きな影を横に見ながら足を進めている。
「おいお前、大丈夫か?」
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つづかないんかーい
っていうツッコミは
自分が一番大きい声←
なんというか、
管理人にはこれ以上膨らませる文章力が無いという悲しみのアレです…^Ч^
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