-短編-未完成作品
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レオン・ガルシア・デ・アストゥリアス神父
重火器の取扱い、罠の設置、爆発物の取扱い、ゲリラ戦のプロ。
細かな作業に長けているとして、レオンの頭脳には目を見張るものがある。
今後単独で動く事も多くなっていくからと、集中的にレオンとの任務に同行する事が決定した。
上司であるカテリーナ・スフォルツァ枢機卿の指示である為従うつもりで返事をしたが、隣で同僚のアベルが猛反対していることが少し引っ掛かっていた。
アベルの猛反対にうんざりした様子で「これは決定した事です」と突っぱねるカテリーナに、「いや、危険ですよ!確かにレオンさんは、腕は良いし作業は早いし先の先を読めるし時間を無駄に使う人じゃないですけど!」と食い下がっている。
アベルの言う内容が事実ならむしろとても優秀な印象でしかないが、一体何をそんなに猛反対する必要があるのだ。
〈お止めなさい、神父アベル!気持ちは分かりますが、神父[#da=1#]が不安になるばかりではないですか!〉
止めるシスター・ケイトも容赦ない。
気持ちが分かると言ったその真意を知りたい。
「今、神父トレスが迎えに行っています。
――[#da=1#]、一度下がって」
「…はい」
アベルはまだ何か口早に話をしていたが、あまり前情報が入ってしまうと不安が募ってしまう。
カテリーナに言われて一度待機室へと戻る事にした。
アベルがあそこまで駄目だという人間というのは、どれほどの人物というのだろうか。
『他人からの印象』を聞いているだけで、段々と警戒心は強くなって。
ソファへ腰を下ろし左足を寄せ、膝を抱く。
不安で仕方ない。
けれど決定した訳だから。
膝へ額を押し付ける様にして、強く抱える。
その時。
ノックから一呼吸置いて「失礼する」と、小柄で端正な顔立ちの青年が部屋へ入ってきた。
[#da=1#]の傍へ立ったかと思うと、無駄なく刈り揃えられた短髪の青年は僅かな機械音と共にこちらへ手を伸ばす。
その手には書類が携えられ、受け取れと言わんばかりの――
いや、その表情は先程から眉一つ動かさない。
硝子玉の様に美しい瞳が、少し高い所から少年を見下ろす。
この青年とは行動を共にしている時間が現段階で最も長い。
[#da=1#]にとって、恐怖などは微塵も無い。
「今回のみ俺も同行する。ミラノ公からの命令だ」
派遣執行官を3人も割く程余裕だある訳ではい筈だが…
そこまで揉める程の問題なら、この話は無かった事にすれば良かったのにと、ぼんやり思った。
いやしかし。
誰でもない、上司の決定である。
その、レオンという神父がどういったものであれ任務には同行しなければならない。
黙ったまま頷く。
「今回の任務の資料だ。レオン・ガルシア・デ・アストゥリアス神父、コードネーム’ダンディライオン’と合流する迄に目を通せ」
渡された資料はさほど分厚い物ではない。
素早く目を通していく。
「俺は今回のみの同行、今後は神父レオンの技術及び知識を可能な限り取得する為に卿は、俺か、神父レオンのどちらかと組んで行動する事になる」
トレスは傍に立ったまま、椅子に座る事も無い。
ただ傍に立っているだけだが、それでも[#da=1#]にとっては不安を緩和してくれる存在だ。
書類を読み進めると、一枚だけ、レオンについて書かれた書類が入っていた。
それは用紙を半分も埋めない程の短い文章だったが。
「あの――」
声を掛けようとしたその時。
扉が大きな音を立てて開き、同時に長身の男が足早に部屋へ入ってきた。
ノックするのをすっかり忘れる位には、慌てているらしい事が理解できる。
それに。
先程の続きをしに来たのだろう。
警戒しつつ、振り返る。
「[#da=1#]さん!」
ノックも無く入ってきた長身の神父は、隣で立つトレスより遥かに背の高い、銀髪を雑に纏めた不健康そうな肌の持ち主。
「大きな声を出さずとも神父[#da=1#]には聞こえている。威圧目的でないなら声はもう少し落とす事を推奨する」
「あ、はは、やあトレス君…そうですね、すみません」
アベルは気まずそうに笑って、しかし余裕の無い表情がこちらへ向き直った。
「俺は車を回してくる。卿はここで待機し、ガルシア神父と合流しろ」
「あ、…」
正直言って二人にしないで欲しい。
待って欲しいとは言えない。
時間を無駄に使わないトレスの事は普段共に行動しているだけに、よく分かっている。
「待ってトレス君!聞いて下さい!」
「否定」
即座に却下されても、アベルの声はトレスを追い掛けていく。
「[#da=1#]さんの半径50㎝にレオンさんを近寄らせないで下さいねっ!」
「それについては肯定」
振り返る事無く返事を返しながら、スタスタと行ってしまった神父に「お願いしますよー!」と声を張り上げてから、アベルはすぐにこちらへ戻ってきた。
「[#da=1#]さん!」
返事を返している余裕が無い。
戻った勢いでアベルがソファに両手を置くと、[#da=1#]はその腕に挟まれる。
少年の表情が恐怖の色に染まって。
怖い。
アベルはゆっくりと、しかしはっきりとした口調で、子供に言い聞かせる様に話す。
「レオンさんは鼻が利きます。勘も鋭い…先に貴女の事、きちんと話しておいた方が…」
真っ直ぐにこちらを向いて、冬の湖のような碧眼が印象的な男性はの顔面が間近に迫ってくる。
普段の優しく赦そうな表情とは全く色を変え、幼い顔立ちの少年に迫るアベル。
見た目よりも小さく幼い少年は、壁の様に反り立つ男性に最早声も上がらない。
それどころか。
呼吸の仕方を思い出せなくなって――
「でなければ、私やっぱり反対です…心配です、貴女の――」
やっとの思いで「やめて下さい」と絞り出した言葉はとても小さく掠れた声だったが、恐らくアベルの耳には届いている。
しかしアベルにとってそんな言葉などあまり関係無い。
「[#da=1#]さん…私、」
分かりました、という言葉だけが、きっと今耳に届くのだろう。
「止めて下さい…っ」
今迄あまり聞かない位の、大きな声で。
自分でも驚く位の声だった。
そこまで大きな声を出す事はあまり無い。
「[#da=1#]さん、ちゃんと聞いて――」
「止めて下さい!」
言いたい事なんて、分かっている。
「レオンさんに、性別を隠す事なんて出来ないんですよ…彼は’そういった事’に一番鼻が利くんです」
「…先程書類を、読みました」
「書類?」
突然出てきた言葉をオウム返しに聞き返す。
どういう意味かは分からなかったが、アベルは次に言葉が続くのかと静かに待っていた。
言葉は続く事は無かったが、ソファから手を降ろしたアベルを確認した途端、両腕の枷からは素早く逃れる事が出来た。
「それって何です?誰がそんな、いや…、どういう事です?」
質問をしようとして、その質問の仕方が分からなくなった様な質問だが、ただ聞きたい事だけは分かった。
「それに自分の件は、スフォルツァ枢機卿からお赦しを頂いているので…もうその話は止めて頂けませんか」
普段前髪で器用に隠している瞳がちらりと覗く。
実はこの話は何度も議論を重ねている。
今回はレオンに対してだが、毎回事ある毎にこの議論を持ち出されているのがいい加減うんざりしている。
強い色を帯びた瞳がこちらを向いている。
あちらの言いたい事、少年が言わんとしている事は分かっているのだ。
レオンは鼻が利く。
女性か男性か、そんなものすぐに分かってしまうだろう。
そうなった時の[#da=1#]の身の危険を、アベルは気にしているのだが、これが上手く伝わらない。
レオンが迫った時、[#da=1#]はあの大漢から逃れる事なんて確実に出来ないだろう。
だからこそ、きちんと説明して、その身を守って欲しいと思っているだけなのだ。
アベルの優しさが時に、凶器である事に、自覚はあるのか。
「でも本当に――
レオンさんには本当に気を付けて下さいね」
けれど、アベルの言わんとしている事は実際[#da=1#]の為ではある。
今後、レオンとの行動も主として行くとカテリーナからは聞いているので『そういった事』に無関心なトレスならと思っていたが、レオンは違う。
はっきり言って、一緒に行動させると、性が暴かれてしまうのでは、[#da=1#]本人にとって、あまりいい結果にならないと心配してしまう。
本人がこの話題を嫌っている事はよく理解している、つもりだが、傷付いたり、心を痛める事だけはあって欲しくない。
「今回トレス君が同行するって、カテリーナさんが約束してくれましたから!」
何とか2人きりにさせたくない一心で、交渉した結果の様だった。
最初にカテリーナから説明された時に貰ったレオンの書面上での印象では悪くない印象だったし、反対だという理由を並べていたらしいアベルからの発言や、トレスから渡された時に挟まれていた書類からの事を踏まえても印象は良かったが。
レオンが何か危険動物の様な印象になっていってしまう。
「本当に、気を付けて下さいよ!」
何度同じことを言うのだろうか。
しかし本人は「できれば私が付いていきたかった」「私まだ報告書読んで貰ってないからまだ行けないか…」など、口元で何か悶々と一人で言葉を連ねている。
「私本当に心配なんですよ…
[#da=1#]さんがレオンさんと一緒に行くの――」
大きなため息を吐きながら、アベルが頭を抱えたその時。
「おーい、本人が居ない間に俺の話で盛り上がるのは止めろ」
ノックが先か、扉が開いたのが先か。
レオンが扉を通り抜けて入ってくる。
「おいへっぽこ、猊下がお呼びだぜ?」
「え、い、一体なぜ…」
「知るかよ、…あ、そう言えばケイトの小姑が食事の請求が多いとか言ってたな」
向かいのソファへどかんと座ったレオンは、目の前の[#da=1#]にはまだ目もやらずにアベルと話を続ける。
煙草を一つ手に取って胸元の内ポケットへ残りは入れてしまう。
「ええ…だってあの国は物価が何もかも高くて…!」
膝に縋らんばかりに必死に説明するアベルに「俺に言われても知らんぞ、さっさと行けよ」と言ってから、咥えた煙草に火を点けた。
突然こちらを向き直ったアベルが素早くこちらへ近付いてくる。
ソファの座面に両手をついて、顔面に迫るアベル。
驚きのあまり両肩を跳ね上げた幼い少年が、身体を僅かに逸らす。
そんな事より言いたい事だけはちゃんと言い切っておかないと、とでも思っているのだろうか。
「レオンさんには気を付けて!いいですね!いつもの様にトレス君の傍に絶対いて下さいね!」
「おいコラ、俺様の様な紳士を捕まえて何が言いてえんだ?!」
しかしその時には、アベルは呼ばれた先に向かって駆け出している。
「ったく、何なんだ…?」
残された2人は、広い待機室でお互い向き合って座る形になって。
「レオン・ガルシア・デ・アストゥリアス神父だ、宜しくな」
大きい。
少し距離がある筈なのに、そんな事意図しない位に。
少年は一度頷いて、座り直した。
アベルが両手をソファへついて迫った事で、崩れた姿勢を戻していたところだった。
じっと、目の前の大漢を眺め――いや、見上げる様に。
テーブルを挟んでいても、身体が前に傾いているのが分かる位には、こちらへ集中している様な。
目でも悪いのかと、思ってしまう位にはこちらをじっと見詰めている。
返事をする事も忘れてしまっているかの様に黙ったまま頷く少年。
本当に10歳なのだろうかと疑問を抱いた。
幼く、外見は8歳程に見える。
しかし先程見せられた用紙半分ほどの情報では10歳と記載されていた。
それに『男性』と書かれていた。
派遣執行官が支給される僧衣に身を包んではいるが、どう見ても幼い少年。
声を掛けてもいいものだろうか。
穴が開くのではないかと思う位、こちらを覗き込んでいる。
「失礼する」
同時に振り返った先に、先程『車を回してくる』と言って出たトレスが戻ってきた。
「問う、何故扉が開いている。不用心だ」
「おお拳銃屋、そりゃへっぽこだ、閉めずに行ったんだよ。このガキに何やら迫ってたぜ?」
普段眉一つ動かさない筈の青年は、一瞬表情が硬くなった様に見えた。
僅かな機械音が流れ「…肯定。シスター=ケイト・スコットへ報告」と、短く告げる。
「お前のそういう容赦無い所好きだわ…」
喉奥で笑いながら、レオンは額を抑えつつ下を向いた。
「出発する、速やかに移動を」
「へーへー、」
立ち上がったレオンは、本当に大きいとしか、言いようがない。
見上げる程の高さだ。
アベルやトレス、[#da=1#]と同じく僧衣を身に纏ってはいるものの、だらしなく着崩すしたレオン。
髪は伸ばし放題といっていいのだろう、ぼさぼさとした髪が印象的で、顎には髭を蓄えている。
浅黒で大柄な神父、というか大漢。
「[#da=1#]・[#da=2#]神父、」
声を掛けられて慌てて立ち上がった[#da=1#]は、トレスの傍へ急ぐ。
「出発する」と言って歩き始めたトレスを追い掛ける様にして、しかし、何故か普段より足の進みが遅い様な印象を受けながらレオンは後ろを歩いていく。
欠伸を挟みつつ、頭をバリバリと掻きつつ。
少し後ろを歩くレオンを時々振り返りながら足を進める少年は、前髪で瞳を器用に隠してしまっていて表情を窺う事は難しい様だった。
しかし一つ、気が付いた事が有る。
トレスの僧衣の裾を一部持っている。
不安な時に子供はそういう行動に出る事はあるが、この少年そんなに何が不安だというのだろうか。
まさか自分の風貌だなんていう思考は無い。
レオンは後ろからトレスと、少年を追い掛けた。
!読んだよ!
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文才など無い。
一番大切な部分なのに
ずっと書かなかった、
いや書けなかった大切な第一章の出会いのシーンを追加したくて書いたものです…が!
これは前後が合わなくて
中途半端なので
未完成の方へ…☆
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