-短編-未完成作品
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予測していなかったとはいえ。
狭い所に閉じ込められてしまった。
時間がどれ位経過しただろうか。
四方が1mに満たない所だ。
呼吸も満足に出来ない、立ったままでいる。
あまり物音を立てては気が付かれてしまう。
人の気配が無くなるまでじっと息を殺して待っているところだった。
こんな所で閉じ込められるとは夢にも思わなかった。
暫く時間が経ち、足音や声もすっかり止んだ頃。
頭上から大きなため息が頭上から降ってきた。
「大丈夫ですか?あの、もっと寄って下さって大丈夫ですよ」
息が詰まりそうな狭い場所だ。
酸素がどれ位、吸収できるのだろう。
「あ…いえ――」
よりによって、こんな狭い世界で長身の神父と閉じ込められるなんて。
可能な限り壁へ寄っている。
いつまでも体力が保つとは限らない。
「すみません私のせいでこんな所に閉じ込められちゃって…」
「大丈夫です」
短く返す。
しかしあまり、大丈夫とは言い難い状態だ。
何とかしなければ。
一抹の不安を胸に、少年は天を仰ぐ。
僅かに光が差し込んでいるのが見える。
その光も実に薄暗く、黒の背景に僅かに絵の具でうっすら灰色に塗られた様な光が見えただけだった。
この分では、ここがいかに暗いかという事しか分からない。
一応[#da=1#]もカフスをはじいてみたが、やはり応答はなかった。
’教授’の発明品でも、やはり万能ではないようだ。
アベルはあまり評価していないようだが、あの踏み台無くしては、これらの発明も生まれていないだろう。
思案していると遥か頭上から「どうしましょうこれから」と不安な声が零れ落ちてくる。
涙でも流してしまいそうな声。
アベルは長身だ。
一度はみあげたが、見上げっぱなしは首が疲れる。
暗くて殆ど見えないが、[#da=1#]は足元へと瞳を落とす。
「流石にこの距離では通信も繋がらないですね」
試しにカフスをはじいたらしいアベルはため息をつきながら外の様子を窺っている。
膝を折って座り込んでも幼い神父一人だと問題ないだろうが、アベルと2人だ。
そう簡単には一緒に座れないだろう。
左右の壁を触ると、手袋越しに硬く、ぼんやりと温かい感触が指に伝わる。
中に2人も居るからだろうか。
暗所恐怖症がある訳でもないし、閉所恐怖症がある訳でもない。
ただ、文字通り距離が近くて。
意識をすると、呼吸が浅くなってしまう。
意識するなと、心に言い聞かせる。
人の気配を感じて、ここへ入ってと長身の神父にその腕を引かれて入ったスペースが思いのほか深く狭い場所だ。
入ったはいいけど出られなくなったというのは運が悪い。
何とか見張りらしき人をやり過ごせたのは良かったのだが。
「取りあえず…何とかして、ここを出ましょう」
手を伸ばした先。
アベルの手が入ってきた先へと伸びて――
空を切った瞬間に「へ?」と間の抜けた声が狭い空間に響いたのはその瞬間だった。
「あの…[#da=1#]さん?」
言いにくそうに。
アベルが同じ僧衣を着た幼い顔立ちの少年の方へと向いた。
「なんていうかその…届かないんですけれど…」
薄暗い中でヘラッと頼りない笑顔がこちらを向いた。
申し訳なさそうに笑うアベルの表情は、可愛いと表現される事が多い。
相対して[#da=1#]と呼ばれた神父はアベルと比べるとほんの小さな子供だが、この子供も立派な同僚である。
この狭い空間に、2人でいるとして。
そうなると出る手段が無い。
入ってきた先の天井を眺めながら、アベルはうーんと唸った。
「私達ここで朽ち果てるんでしょうか…っ?!」
「誰かー!」と叫び出さんかの様子のアベルを、落ち着かせる術は全く無い。
少年はどうしたものかとぼんやり思案しながら天井を見上げていたが、天井から差し込んでいる灰色が少しずつその色を濃く塗りつぶしている。
「どこか壁に秘密のスイッチとか、ありませんか?」
アベルの指先へ導かれる様に、幼い少年は壁を暗がりの中でぐるりと壁を見渡した。
先程うっすらとまだ灰色が残っていた天井は今や暗く染まり切っている。
瞳を凝らすと、ぼんやりと凹凸がある様には見えるがしかし、ボタンやスイッチがある様子は無い。
暗闇の中で集中するが、足元を見てもやはり何かが見える訳ではない。
ふと。
後ろへアベルが足をずらしたのが視界に入ったと思った途端。
長身の筈の神父が目の前に迫って。
間一髪、アベルの左手首を掴んだと思ったが。
幾ら細身で標準に届きもしない体重だとしても。
アベルを支え切る程の力は[#da=1#]には無くて。
引き寄せるには高さが足りない。
突然の事に周辺の状況はあまりはっきり見えないが兎に角と、アベルの身体を引き寄せる。
「いけないっ!」
身体が床へと届く直前。
衝撃が走る。
「ぐ、うっ」
まるで封じられたかの様に、身動きが取れなかった。
視界全体に広がった世界はやはり暗いが、鼻は痛くない。
内臓全体に衝撃が走る様な痛みがくると覚悟していたのに、思いの他衝撃が無く。
「ごぶじ、です…か」
真下で言葉が聞こえて来て。
「あ、え――」
その声はまさに、消えそうな。
いや、腹筋に力が入っている様には思えないほど弱々しい声だった。
身体に纏わりついているものが絲である事、衝撃が予想と反していた事。
周囲が暗く分からないが、無数の絲が身体に纏わりついている。
その絲が暗がりの中で柱や大きな瓦礫などを支えにして身体が落ち切るのを支えている様だった。
暗がりの中では全てを支えきる事が出来ない事は分かっている。
視界がクリアなら周辺を把握できたのだろうが…
だからこそ自分がクッションになり衝撃を緩和させることにしたのであろう。
状況を把握したアベルは飛び上がりそうな勢いで身体を起こした。
「何て、事をっ!」
[#da=1#]の身体をクッションにして、衝撃が吸収された事に気が付いた瞬間。
「そんな!どうしてこんな…っ」
しかし返事が返ってくる事はない。
いや、実際には返していたのかも知れない。
声が聞き取れないだけだ。
「ああ…っ」
ぼんやりと光に包まれる幼い神父。
口元で僅かに笑っている様な、気がする。
抱き上げると別の場所を損傷してしまう危険がある。
光が収まる迄は身体を動かす事はできない。
「お願いですから…っ、もうこんな――」
覆い被さったまま大粒の涙をこぼす子供の様なアベル。
大丈夫だと、声は出せない。
ゆっくりとその指を動かして、傍へ垂れたアベルの銀髪へと触れる。
長髪の神父は反射的にその顔を上げて。
「[#da=1#]、さん…っ」
アベルの方へと瞳を向ける。
痛みが強く、顔の向きを変えるだけでも負担が掛かったが。
「私、貴女が傷付くのが嫌なんです…!」
少年はまだ8歳ほどの容姿だが外観に反して立派な青年だ。
いや。
神父としての称号を取得しているが、[#da=1#]は唯一神に性別を偽っている。
「私は大丈夫ですから…っ!お願いです、お願いです…っ!」
言葉を返す余裕は全くない。
呼吸もままならないが、暫く指を動かす事に神経を集中させる。
身体は勝手に回復してくれるが。
こういった行動をする事でアベルが傷付くのは分かっていたのだが、何より彼の生命を優先した結果だった。
「」
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アベルさんは
非常に書きにくいので、
めちゃくちゃ悩みつつでした…
何せ公式で想い人や想われ人が
ごちゃごちゃいらっしゃるし…
自分の命を粗末にする「人間」が許せないアベル神父が、[#da=1#]の「能力」を過信したその身の犠牲に、悲しみの感情を超え怒りの感情さえ持っているという事をどう表現するかというのが当面の課題なんだけれども…
続き…うん
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