- Trinity Blood -4章
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客人・上
揺動に出ていただけだから、念の為シスター・ケイトに「俺は任務に於ける報告書要らねえだろ」と確認する。
彼女は笑みを浮かべつつ――その笑顔は実にひきつってはいたが『何をおっしゃっているんですか神父レオン?ホテルの滞在費はあなたの懐からではありませんよ?それに、往復の列車代も』と一蹴。
そして『ああ、それと…バーで飲まれた分とルームサービスは自費ですわ』と間髪入れず続けてくる。
「え?おい待てよ、あれは標的に目を付けられる様に派手に動けっていうから…」
言い訳等聞く耳持たないだろうとは思いつつ異論を唱えると『ええ、でもホテルのフロントでは目立つ様に心掛けて頂ければ良かった訳で、自室で何をしようと関係ありません事よ?それに…それに…不純な行為ま「分かった悪かったよ!」慌てて言葉を遮ると「今日中には何とかするから!」と強引に話を終わらせる。
『今日の執務時間が終わる迄が期限ですからね、宜しくお願いしますよ?』
「分かったよ…」
シスター・ケイトはその言葉を聞き届けるとその姿を消した。
彼女は泣き黒子が特徴の長い金髪の女性。
意識を空中戦艦「アイアン・メイデンⅡ」に取り込んでおり、彼女自身はホログラムで自身の姿を投影している。
普段は穏やかで楚々とした美女であるが、レオンやアベルの行動や、トレスの破壊具合に上司であるカテリーナ・スフォルツァ枢機卿と共に、日々頭を抱えている…らしい。教授がよく話していた。まあ教授自身も色々言われているらしいので「私も例外ではないらしいがね」と笑っていた事を思い出す。
仕方なく報告書を書く事にしたレオンは、教授がよく滞在している部屋に足を向けた。
「やあ、レオンさん!任務に出られていたんですね!」
曲がった先で。
「おいおい何だへっぽこ?ボロボロじゃねえか」
絆創膏が顔や首を埋めている。
銀髪を雑に纏めた長身で細身の神父は、レオンに突っ込まれて頼りない表情で笑った。
「ちょっと西の教会に伺った時にね、動物達が一杯で…いやこれもきっと動物に愛されまくった結果です…よね?」
という事はこの痛々しい絆創膏の山は動物に引っ掛かれた痕という事か?と、二度ほど頷いた。
「お前さんのお人よしもついに動物にまで及んだのか…」
「ああ、主よ…痛いです」
並んで歩くのも久し振りだ。
窓の向こうで誰かが歩いているのが見える。
「あれ、トレス君…と、誰でしょうあの白髪の方は…」
アベルの声につられて窓の向こうを見ると、トレスの肘辺りを頼りに白髪の女性が歩いている。
片方には杖らしきものを使い歩いているが、窓を挟んでいる事と、距離がある為かあまりはっきり相手を確認する事は出来なかった。
「『春』ですかね?」
そんな訳あるか。
突っ込みそうになる。
「不要な事はしないタチだぜ?春風なんて吹くかねえ?」
「分からないですよ、きっと来たんですよ!春!主よ、私、感激です!」
一人盛り上がるアベルに、しかしレオンは女性の方へと目を向けていた。
見覚えが…そんな訳…ないよな――
どうやら目的地は同じようで、レオンとアベルはその後も会話をしながらウィリアム・ウォルター・ワーズワース神父がよく滞在している部屋に足を運んだ。
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