- Trinity Blood -4章
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眠っていたのだろう。
気怠い。
脱力している身体を覚醒させようと何度か瞬きをして、左右を確認する。
指を周囲へ這わせるとベッドのシーツの様な感覚。
ベッド上に居る時は大体いつも左側にいる相手が指に当たらない。
上半身を起こしてすぐに、腕に付いた十字架を鳴らす。
反響音の範囲はそこまで広い訳ではないが、どうやらこの範囲にレオンは居なくて。
「…レオン?」
起き抜けであまりはっきり発音できていないが、扉へ向かって――視力を失ってしまった[#da=3#]にとって朝も夜もただの暗闇であり、扉もベッドも全て暗闇の中で展開される想像上の存在でしかないが――呼び掛けた。
一方、その声を聞いて手を止めたのは呼ばれた相手である。
立ち上がったレオンからは椅子を引く音も衣服の些細な音でさえ発生する事はない。
[#da=3#]のいる寝室スペースへ向かうと僅かに開けてあった扉のノブへと手を掛けて――
「レオン…いないの?」
動けなくなる。
「起きたのか」と声を掛けるつもりだった言葉さえすっかり出し損ねてしまう。
問い掛けられた相手はもちろん自分なのだが、ベッド上で膝を抱えて小さく丸くなった少女が目に飛び込んできたからだ。
そのまま眺めていたいところだがそうもいかない。
なるべく自然に振る舞ってやるため、扉を大きな音でノックしてやる。
「開けるぞ?」
勿論扉は開いているけれど、ノブをガチャリと鳴らして僅かしか開けていなかった扉を大きく開く。
「…あ、」
「起きたんか?」
声を掛けながら近くへ寄って、[#da=3#]から見て左側に腰を下ろしてやる。
膝を降ろした少女がこちらを見上げた。
瞳は勿論こちらを間違いなく見ているが、その瞳にレオンが映る事は無い。
硝子玉の様な一見透明な瞳は、ただオーロラを切り取った様な虹色で美しい瞳。
愛しくてつい伸ばしてしまった指が色素が抜け切った白髪をさらりと撫でると、両肩を寄せて不安な表情をこちらへ向ける。
「あー、だめだ…」
突然ため息が出てしまって「一回キスしていい?」と勢いのまま問い掛ける。
問い掛けに対し、次第に頬が紅潮していくのを隠す様にして両手で顔を覆った[#da=3#]は戸惑いながらも、ゆっくり頷いてくれる。
左の手首をゆっくりと包む様にして握ると、少女は更に両肩を寄せる。
身体が緊張しているのが分かる。
こちらを向いた少女「目、閉じろよ?」と言いながら肩から後頭部に掛けて支える様にして、唇を重ねる。
レオンの腕に支えられ、その動きに誘われる様に身体が倒れていく。
逃げ場を失った背中はレオンから逃れられないまま、唇はまだ離れない。
左手首を持っていたレオンの手は身体のラインを撫でながら腰元へと滑らせていく。
自由になった手が反射的に大きな身体を押すが、びくともしない。
舌で唇を割って、口腔内に侵入させる。
味わう様に舌でつついてやると、喉奥で声が上がる。
全身が震える様な、くすぐったい様な変な感覚に戸惑いを隠せない。
抗議の声を上げようにも唇は塞がっていて、両手が自由でも、その手で目の前の壁の様な大漢はピクリとも動かない。
呼吸が苦しいのだろう、顎が上がっていくのを感じながら、それでも唇は解放してやらない。
一度酸素を求めて大きく口開けたタイミングで深く舌を差し込まれた事を覚えているのだろう。
なかなか音を上げない様子で、唇から逃れようと、小さな手が胸を押している。
もっと唇を重ねていたい。
ただ少女が恐怖に思ってしまうと、これからキスを強請っても抱き締めたいと願っても、勿論それ以上でさえも拒否されてしまうのではないかと一抹の不安はある。
一度無離した唇は、名残惜しくて頬に触れる。
「ふ…あっ」
僅かに仰け反った腰に触れると、上擦った声に身体が反応する。
愛しい存在。
今すぐにでも抱きたい。
しかし、すぐに頭を左右に振った。
紅潮した肌に興奮している身体に落ち着けと言い聞かせながら、唇を耳元に寄せて呼び掛ける。
「なあ[#da=3#]、…」
耳朶を軽く噛むと仔犬の様な声を上げる[#da=3#]の耳に流し込む様にして、ゆっくりと「本当はもう一回、したいんだけど」と囁く。
「[#da=3#]」
「んん…っ」
耳の付け根と首筋の境目にキスを落として「だめ?」とすり寄ると、腕の中の小さな身体が強く仰け反った。
音を立てて首筋にキスをする。
小さな悲鳴が腕の中で上がった。
腰元からラインに沿って指を這わせていくと、喉奥で何か言った――けれどそれは言葉にはならなかった様で、腕の動きを止めようと慌てて手を当てる。
それが興奮を誘っているという事に気付いてない。
何度か言ったのに。
ああ、くそ。
「好きだ」
「ひゃう…っ」
首元を甘噛みする。
「や、レオ…あ――っ」
逃れる様に身体を捩る[#da=3#]を解放してやるつもりはない。
上擦った声が耳に届く度に快感が身体中を走り抜けていき、次第に下腹部が主張を始める。
顎のラインを鼻先で撫でながら、喉元の柔らかい部分へ音を立ててキスをする。
両手で服を掴み、壁の様な身体を押して弓なりに反って逃れようとしていた身体を抱き上げた。
「きゃっ」
小さな身体はレオンの腕では余る程だが、引き寄せる様にして一度だけ強く抱く。
身体を起こしてやるが小さな手はレオンの服をそのまま掴んだままで、離れる様子はない。
度が過ぎたか――?
理性が吹き飛ばなかっただけ感謝して欲しい。
身体を起こしてベッド端へ座らせてやる。
下腹部が快楽を求めて主張しているが、落ち着けと自身に言い聞かせながら、戸惑いの表情を浮かべる少女を見詰め「気持ちよかった?」と声を掛けた。
「…え?」
問い掛けられて戸惑った様子で金色の瞳を覗き込む様にしてレオンを見詰める――その瞳に確かにレオンは映っているが、ただ彼女の瞳は相手の姿を映す事はできても見る事はできない。
「くすぐったく感じたり身体が仰け反ったり、思わず声が上がったりするのは、頭が『気持ちが良い』と感じてるからだ」
気持ちが良いというのは、定義として「快適である」「心地よい」「快い」という意味があるのは知っている。
ただ触れられる度にくすぐったく感じたり、意図せず声が上擦ったり、反射的に身体が仰け反ってしまったりするのが『気持ちが良い』とどうつながるというのかが繋がらない。
『くすぐったい』と『気持ち良い』は、同じ様で違うという事なのだろうかと、ぐるぐると思いを巡らせる。
だとすると、耳元で声を掛けられた時に、首元に吐息が掛かると背中に何かが走り抜ける様な感覚、あれも『気持ちが良い』という事なのだろうか。
あれはくすぐったいでは、違う表現なのだろうか…?
けれど、レオンが触れる所は何故か妙にくすぐったいと感じてしまう、あの不思議な感覚が『気持ち良い』という事だという事になる。
『くすぐったい』と『気持ち良い』の境界線は実に曖昧なところにある。
声が上がってしまったり、身体が反応してしまうのは、脳がこれを快楽と認識してしまう、という事なのだろうか?
自分の身体が自分の意と反する事で勝手に反応してしまうのは、脳が気持ちが良いと認識してしまったからだという事なのだろうか。
今迄知らなかった感覚に名前がある事を知ってすっかり困惑してしまったらしい。
心が追い付かない様子で、赤面したままの[#da=3#]に「お前の反応やその声を聞くと、我慢できなくなっちまう」と伝える。
「成長すれば男女関係なく、誰でも経験する事だ」
触れたいが恐怖を与えたくない。
「お前に全て教える役目は、俺に、やらせてくれ」
[#da=3#]と愛を育みたいが乱暴は働きたくない。
以前乱暴を働いた事を正直に打ち明けたレオンが本当に許されたかった相手は、彼女の心の奥深くで眠っている。
記憶を閉じ込めた箱が開く事は、二度と無い。
少女は記憶を手放し、視力を失っており、色素が大きく削られ、能力を失くしている。
少し身長が伸びて、髪もすっかり長くなった。
会う度に感情が抑えられなくなって、しかし無理矢理組み敷いた苦い記憶がレオンに蟠りを残していて。
自分でも気恥ずかしい気持ちはあるが、一つずつ教えて行く事を決めている。
今すぐ抱きたいと思っても、キスをしてもいいか、抱き締めてもいいかと聞く事で[#da=3#]へ感情を伝えて、同意を得てから――我慢ができなくて身体に触れてしまう事もあるが――抱き締めるにしても、キスをしたいと思っても一呼吸を置く様に努めている。
視力を手放してすぐ、乱暴を働かれて深い傷を心に負った少女。
泣き寝入りをしたくないと自分を奮い立たせ、半年山荘に籠り訓練を積んだ。
時に川に流されたり、転落して深く傷を負うなど苦しい訓練ではあった様だが、その訓練の末、白杖を持たずに生活を送る事が出来る様になった。
’教授’が開発した、左耳に補聴器を応用した空間把握型の装置が反響音を集音する事で周辺の空間を把握できるようになっている発明品が今の、殆ど不自由のない生活を送っている。
下手をすると視力を失っている事にも気付かれない程生活を送る事ができるのは、’教授’の補助があったからこそだと本人はいつも言っている。
慣れ親しんだ武器を装飾品に変えて「訓練のご褒美だよ」と両手首に装着したという十字架の付いたブレスレットは、[#da=3#]が[#da=1#]であった事を示すものだが、’教授’がそれを口にする事は絶対に無い。
ただ彼女が確かに生きている事を証明している。
それを知る事が出来るのは恐らく、同僚だった派遣執行官である彼らだけであろう。
「[#da=3#]」
後僅かな命だとして、死を迎えるその瞬間まで彼女をこの腕で抱いていたい。
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夢小説になってきたのではー?!
わっほい^Ч^
夢小説を謳っていたのに全然進歩無しで
ゆるゆるしていたのに
段々と夢小説っぽくなってきたように思うと
めちゃくちゃ嬉しいぞー
ただ言葉のバリエーションやシチュエーションの引き出しの少なさにパッとしない事は多いのでそこはちょっと…
誤字脱字説明不足を少しずつ直していきたい…
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