- Trinity Blood -4章
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薄暗いバーカウンターで女性とのひと時を過ごしてから、暗闇と近しい道を独りで歩いていく。
暗闇に紛れて足を進める。
煙草を咥え、乱雑に胸元のポケットへと突っ込む。
火を点けようと別のポケットをまさぐる。
噴水が月夜に照らされているのが見えたその時。
風に紛れて鉄の様な独特の香りが鼻についた。
「やれやれ…こっちはそれどころじゃねえってのに」
咥えた煙草を口元から離すと、レオンは金色の瞳にその対象を映した。
「人斬りってのはてめえか?時代錯誤も甚だしいぞ?」
そう、任務の真っ最中。
戯れている場合ではないのに、一向に集中できないまま、とうとう標的に遇った。
「俺は鼻が利くんだよ…」
「へー」
それはまるで、どうでもいいという様な返事だった。
「でも全然気付かなかったよね」
そうこの声は。
昼間レオンを見送ったボーイの声。
細身で身軽そうな小柄な男性だった。
「おいおい…見くびるなよ?」
ギラリと光るその瞳は、ボーイを、いや標的を捉える。
「皇教庁国務省室特務分室派遣執行官、レオン・ガルシア・デ・アストゥリアス神父。コードネーム’ダンディ・ライオン’」
チャクラムが指先で風を切って唸る。
「スティシ・オルレン、合計14名の男性殺害及び…俺への殺害未遂も含めてお前を拘束する」
「捕まらないって。僕の足早いからね」
「やってみなきゃそんなの、分かんねえだろ?」
口の端を引き上げたレオンが、言い終わらない内に。
スティシ・オルレンは地面を蹴る。
自分が身軽だと称するに値するだけあって跳躍力は高い。
飛び上がる標的のオルレンは月の光を浴びて黒く染まった。
「張り切ってやがるな!」
風を切りながらオルレンへと向かうチャクラム。
しかしオルレンは軽く躱して壁を蹴り上げながら細い道を飛び上がっていく。
「ははっ!!僕の事なんて誰も捕えらんないよ!」
「…ばーか」
そっちには同僚が待機している。
月夜に響く銃声。
容赦なく注がれた銃弾に今頃悲鳴すら上がっていないだろう。
スティシ・オルレンの非常に短い抵抗に「お前が拘束の最短じゃねえか?」と、おそらく聞こえていないだろう本人に向かって呟いた。
「気の毒になぁ…エィメン」
嘲笑を含みながら。
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