- Trinity Blood -4章
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紳士。 微裏?
揺れているような。
いや…揺られている、ような。
僅かに身動ぐと「よう、眠り姫」と真上から声が降ってくる。
驚いて身体を起こそうとするが、身体はすっぽりと何かに収まっていた。
「ん…っ」
「日中暖かくてもこの時期の夜は冷えるぞ?」
どうやら抱えられている。
移動している?
今、窓辺に腰を下ろしていた様な。
何が起こっているのか分からない。
何となく。
いつもと雰囲気が違う…様な。
ピリッとしている様な。
いや…気のせい?
腕の中で不安そうな様子の彼女をベッドの端へ座らせる。
レオンは彼女の前に立ち、少し身体を低くする。
覗き込む様にして[#da=3#]を見詰めると、その目に光は宿っていないが、レオンを見つめ返している様だった。
「また伸びたな?」
会う度に髪が長くなっている様な。
最後に会ってから少し時間が経過したのもあると思うが、彼女は確実に髪が伸びつつあった。
初めて再会した時には肩の辺りにあった髪が、もうすっかり腰を隠し切っている。
さらりと流れるその髪に少し触れる。
肩が少し跳ね上がる。
指先で耳を触ると僅かに上擦った声が静かな寝室に響いた。
「いや…っ」
レオンの指先へ自分の指を重ねる。
その手を退けようとしたが、相手はレオンだ。
そう上手くいくものではない。
耳から離し[#da=3#]が重ねたその手を取って、レオンは腰に手をやってその身を寄せる。
「嫌ならあんな人目に付く所で、無防備に寝るなよ?」
普段と違う、違和感の正体はきっと。
何か妙な怒りを感じて。
しかしその唇は[#da=3#]に触れる事は無かった。
耳を包む様に、指が触れて。
「んうっ」
レオンの耳にその声が届くと、欲望を刺激する様に背中をするりと撫でて通り抜けた。
大漢の瞳が金色に光る。
喉が鳴る。
甘く、心地よい香り。
「やめ、…っ」
首元へ甘噛みすると声が跳ね上がった。
白髪の女性の耳元で低く唸る様に「いいか?」と声を掛けた。
「あまりどこでもかしこでも、無防備に寝るなよ?俺みたいな紳士ばかりじゃ、ねえからな?」
耳元に声をゆっくり流し込む様に。
レオンはそう言った。
流れ込んで来た声が、吐息が身体の自由を奪っていく。
痺れる様な、内側から説明し難いこのゾクゾクと湧き上がってくる感覚に犬の様にクンクンと声を上げる[#da=3#]。
仰け反った身体は、妙な感覚から逃れようと必死だ。
しかし腰に回したこの手が[#da=3#]を逃す訳がない。
「耳が、好きなんだろ?」
「あ…あっ」
俺は知っている。
隅々まで。
力が入らない様子で、服の裾を掴んだ。
耳朶の端を噛みながら耳元で囁いてやる。
痛いでも痒いでもないこの変な感じが快楽だと知った時。
[#da=3#]がどんな反応をするか。
興味がない訳が、ない。
「分かったのか?返事は、どうした?」
「いや…っ、やめて…っ」
耳元で声を掛けると、慌ててレオンの身体を押し退ける。
自由なもう片方の手がどれだけレオンに抵抗しても意味はないだろう。
「俺だから無事だったんだぞ?」と、耳元で続ける。
「男ってのは俺みたいな紳士ばかりじゃねえからな――」
あまり無防備にしないでくれ――
レオンは心の中で、そう呟いた。
喉が鳴る。
[#da=3#]・アーチハイド伯爵令嬢として再会した時。
それだけでも十二分に驚いた。
本人は記憶が無く、同僚だった頃の[#da=1#]・[#da=2#]だった記憶はない様だった。
驚愕として情報が上手く整理できないまま。
男に乱暴されたと聞いた時は、耳を疑った。
養父であるアーチハイド伯爵が処分したと聞いたが、できれば制裁を加えるのは自分でありたかった。
手を出した男が生きていたら、レオンはきっと地の果まで男を追い掛けただろう。
震えたままレオンの衣服を力なく掴んでいたその震える手を、ゆっくり解いてやる。
これ以上は止められなくなる。
腕の中で震える白髪の女性をゆっくりと、ベッドへ寝かせてやる。
自由になったその身体はすぐにレオンの視線から逃げる様に小さく丸まってしまい、[#da=3#]のその表情は窺い知る事ができない。
伸びた髪を撫でるとぴくりと肩が跳ね上がる。
嫌われる事より、その身の安全を保証してやりたい。
「俺がいつでも護る事が、できたらいいんだがな…」
レオンは視線を落とす。
静まり返った室内に風が入り込んでくる。
痛い思いをすると、赤ん坊でも学ぶ。
ため息を付いた時。
ベッドで小さく丸まった[#da=3#]が消える様な小さな声で「ごめんなさい」と言った。
赦しを乞う様に。
こちらの様子を窺う様にレオンの顔を覗き込んだ。
瞳は何も映さないのに。
「いや――
俺も悪かった…強硬手段に出るべきじゃ、なかった」
正直言って、自分を抑える事に必死だった。
誘惑に負けそうだった。
一度アベルに「お召し上がり下さいって言ってる様なものだ」と言った言葉を思い出す。
正にその通りだった。
風に当たって心地良さそうに寝息を立てていたら、誘惑に駆られて髪の一本でも触れたくなる。
人にあまり触れられて来なかった、感度が良い女性が目の前で上擦った声を上げたらもう、止まらない。
「そこで寝てるお前さんを見た瞬間、冷や汗掻いたぜ」
「俺みたいな紳士じゃなきゃ」と言い掛けて。
指先に何かが触れた。
[#da=3#]が指先に手を添える。
「軽率でした…ごめんなさい――」
ゆっくりと添えられたその細い指に、息を呑む。
レオンの指先に添えられた手は僅かに震えていて。
理性よ、思い留まってくれ。
信頼は常に髪一本程の糸でしかない。
増やす事は非常に難しい。
しかし切れる瞬間はとても早い。
一度後悔したのに。
媚薬の様な香りが血管を通して全身に回り込み支配していく。
酒を煽った様な、いい気分になる。
残念ながら酔った事は無いが。
機密情報を多く取り扱っていた元軍人である。
酒で潰されて情報を掴まれる事など、あってはならない。
不安なのか、震えたその指はレオンの指を握っている。
「いいから…もう寝ろ」
傍に居てやるから。
沸き立つ気持ちを押さえつけながら細い指から力が抜ける迄、傍で座っていた。
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まあうん、ええ。
えーっと。
はい。
微裏の注釈いるかな…??
どうでしょうか…
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