- Trinity Blood -4章
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過去と教授。教授
「…ん、」
欠伸が一つ。
起き上がろうとして手を――
「え、あっ」
声と同時に身体が落ちる。
「おや、起きたのかい?」
痛みの余韻を呑気に味わっている場合ではない。
聞こえて来た声に慌てる、前髪で目を器用に隠した白髪の女性。
「……え、わ…ワーズワース神父?!」
真っ赤になった顔を覆って「わ…私ったらみっともない…っ」と恥ずかしそうに小さくなる。
「なに、朝から検査漬けだったのだから仕方がないよ」
そういいながら、何故か’教授’は笑っている様な?
コツコツと、足音が響く。
近い。
しかし、’教授’はここからの距離を無理に詰めた事は一度も無い。
「でも私…さっきまで検査台に――」
はっと頭を上げて左右を確認している様子。
検査台から落ちたならもっと、高さの距離が有る筈。
「検査が終わったと声を掛けても反応がなかったのでね」
’教授’は愉快そうに「あの電波検査で心地良さそうに寝たのは君が初めてだと思うよ」と、堪え切れない様子でフフ、と笑う。
「あ…や…お恥ずかしい」
電波検査は不快な音が多く、不快感を感じる者が殆どだ。
十人十色とはいえ、こんな前例は無い。
実に興味深い。
「好きなだけそこで休んでいき給え」
寝かされていた先はソファの様だった。
触った感じ、何度か座った事があった様な気がする。
「何なら特等席で過ごすと良いよ」
そう言って、’教授’は手を差し伸べてきた。
[#da=3#]はその手に気付いた様子で、距離を図りながらゆっくりと、遠慮がちにその手を差し出した。
「さあおいで」
’教授’の力は強く、それでいて優しく身体を引き寄せる。
肘にその手を当てがって急がずに誘導してやる。
「そこは君が一番好きな席だったからね」
「…え?」
あまり進まない内に「石段が広がっているからね」と声を掛けられた。
腰を下ろして手を広げると、3段の高さの石段が広がっていて、少しひんやりして気持ちがいい。
どうやら出窓の様だった。
窓枠が指先へ触れ、上へ行く程硝子が当たった様な感触。
近くの、すぐ60cm程右側から炭の様な…暖炉だと思い至ったのは少し周辺の香りを嗅いでからだった。
「あの…――」
何故懐かしさを感じているのか。
分からない。
知っている、ような。
「何かな?」
「私は以前から、皆さんとは知り合いだったのでしょうか」
ずっと、湧いては抑えつけていた疑問。
とうとう、[#da=3#]はそう問いかける。
「記憶を失くした君に、混乱させる事を言いたくないのでね…」
少しの間を置いて「宜しい。では少しだけ」と、’教授’は[#da=3#]傍へ座った。
甘く優しい香りに包まれた’教授’の傍にいるのは、好きだった様な、ずっとそんな感じがしていた。
「君と私は、いわゆるお茶会仲間だったのだよ」
短く告げられる。
杖を傍へ置いて。
ゆっくりと、語る。
見えては居ないが、表情を見られている様な感覚だった。
「お互いに持ち寄った話でよく問答をしていたものだ」
恐らく混乱して落ち着かなくなったり、発作が起こったりと、そういう反応を気にしているのだろう。
ピンとはこないが妙に腑に落ちた。
「実に博学でね?ふふ…私にとってそれはとても貴重で大切な時間だったんだ」
とても懐かしそうな、思い耽る様な声。
凄く好きだった気がしている。
心でぼんやりと浮かんだこの暖かさが、苦手だった様な。
「君さえよかったら、また好きな時に此処へ来てくれ給え」
’教授’は、無理に踏み込まない人だ。
何故知っているのかは分からない。
でも、だからここに居るのが好きだった。
「無理に思い出してはいけないよ?」
「…え?」
突然何を。
思案に暮れる事を見抜かれていたというのだろうか。
こちらを向いている様な…?
「…君は過去に一度記憶を失くしているんだ」
知る事を望んだ以上、’教授’は知りたがっている彼女へできる限りを教えてやりたい。
ただ。
混乱があってはいけない。
表情を観察しながら、自然に、慎重に。
言葉を選んで、’教授’は話進めてていく。
少し不安の色が滲む[#da=3#]に、手を握ったり、肩に手を掛ける事はしない。
記憶を失くすという事は、とても怖い事だ。
勿論忘れた方が良い事もある。
でも、そういう事ではない。
知る事を望むのは、ずっと、以前から。
彼女の探究心がとても好きだった。
「あの時は、生きた心地がしなかったよ」
記憶を失くすのが、今回が初めてではないという事は勿論衝撃だった。
自分がどういう人間だったかは分からないが「生きた心地がしなかった」と、言われるだけの人間だったのだろうか。
申し訳ないような。
今の自分を振り返ってしまいそうな。
「私にとって君は、大切な知識の友だったからね」
不安な気持ちが湧き上がる瞬間に、絶妙なタイミングでワーズワース神父は言葉を重ねてきた。
「だから、どんな形で会っても君がこうやって尋ねてくれる事に感謝しているよ?」
「ワーズワース神父…」
ふふ、と。
‘教授‘は静かに笑った。
「ああ、それと」と、続ける。
「君とはまた、お茶会をしたいと思っているよ。約束してくれるかい?」
突然の申し出だったが、それを拒否する理由はなく。
いやむしろ、何故か。
それを楽しみにしていた様な。
静かな時間も、賑やかな時間も。
「こちらこそ…あの、本当にいいんですか?」
問いかけに対し、’教授’は「勿論」と笑った。
この優しい声が好きだった…ような。
膝を抱えて、[#da=3#]は少し嬉しそうな、照れくさそうな笑みを浮かべる。
気恥ずかしいのか、すぐに顔を埋めてしまったが。
「また君とお茶会を開けると思ったら、今から楽しみだよ」
触れる事は無い。
’教授’はこの距離を大切にしてくれる。
傍に居る事が、安全だと知っている様な。
いや、知っていたのかもしれない。
ここに居る事が、安全であると。
「きっと来てくれ給えよ?」
覗き込むように声を滑り込ませてきた’教授’に、恥ずかしそうに顔を隠して「…はい」と、消える様に返事を返した。
!読んだよ!
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照れ照れじゃないか(真顔)
照れっ照れじゃあないか(真顔)
管理人は何を考えているんだ(真顔)
いいぞもっとやれ←ええ???
いや、ワーズワース神父とのやり取りは、これ位がいいと個人的に…
何というか、’教授’のこの(エセ…いや大丈夫きっと)紳士な感じが好きなのです。
もう既に妄想に近い感じですまない…
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