- Trinity Blood -4章
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甲高い何かが、耳に届いた。
「――う…ん」
ぼんやりする頭を押さえながら。
腕についた十字架の装飾を鳴らして周囲を確認する。
しかし誰もいない。
私は誰かと…いたような…?
ぼんやりと、はっきりしない頭で思考を巡らせた。
煙草の匂いが僅かに残っているが傍には誰も居なくて、残り香だけがその場に留まっている様な、これがとても安心する者だったような気がして不思議な感覚。
「…わたし?」
そういえばそう、何故こんな所で自分は寝ているのか。
感触を確かめ、自分がどうやらバルコニーのチェアに座らされて器用に眠っていたらしい事が分かった。
そういえば。
私…さっき――
慌てて左右を確認しても、レオンらしき気配はなかった。
何故。
彼が懐かしく感じるのかは、残念ながら全く覚えていない。
けれど、どこかで相手に恐怖を感じてしまっている様だった。
何故かは、全く分からない。
立ち上がりかけて、それまで一切気付かなかったが、肩に手触りの良い何か暖かい物が乗っている事に気が付いた。
どうやらこの肩に乗っているのはスーツの様で。
心地良くそして、懐かしい感覚。
カランッ
風ではなく、物理的な動きで唐突に甲高い音が耳に届いた。
扉に付いた鈴の様だ。
もしかして、先程聞いた甲高い音はこの音だったのだろうかと思案するが、さっきはぼんやりとしていたのではっきりとは思い出せなくて。
「何をしている」
突然声が掛かる。
「えっと、あ…イクス神父?」
「肯定。伯爵公が捜している、同行を」
立ち上がると、僅かにふらつく。
ふらつく身体を無理矢理立ち上がらせると、一度世界がぐらりと揺れた。それは時々起こる現象だけれど、これがいつから起こっていて何故起こるのかは分からない。
「問う。何故男性用の上着を羽織っている」
それは自分が一番知りたいところだ。
「教皇庁国務聖省特務分室からの支給品と推定される。回答を」
「…あ…の?」
トレスが問いかけるが、どう答えていいか分からない。
「何故だかは…私も――」
肩に掛かった上着を取ると、肩が突然ひやりとする。
何かを、求める様に。
肩口を押さえ――
「同行を、[#da=3#]・アーチハイド伯爵令嬢」
「はい、」
言われて[#da=3#]は上着を簡単に折り畳み、トレスの後ろを小走りで付いていった。
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