- Trinity Blood -4章
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15*社交界。
フェザリア子爵の息子と名乗った第一子、ストークス卿から身を守ってくれたのに。
「――神は御心に…?」
どうして怖いと思っているのだろうか?
それとも、今目の前で起こった出来事に震える身体が落ち着かないだけだろうか?
動揺したままの身体が不安だと言っているのだろうか。
そうだと、思いたい。
目の前で、跪いている様子のこの男性。
勿論光を失っているこの瞳では、彼の様子をはっきり窺い知る事は出来ないのだが――分かるのは目の前にいるレオンが跪いている事。
初めて会った時はそんな風には感じなかったのに、今逢ってみるとどうしてか、印象がガラリと変わって。
過去への後悔が垣間見える発言に、心が曇った。
何も覚えていないのにどうしてそういう風に思ったのだろうか、それはもう、何故か覚えていなくて。
「…ガルシア…神父」
彼の居る方へゆっくりと座り込む。
自分が動揺している事には気が付いている。
その手をゆっくりと取る。
伝わるぬくもりに、心がざわめいた。
「私…助けて頂いたのに――」
恐怖を感じている。
どうしてかは分からない。
感情がパンクしてしまいそうだ。
「ごめんなさい」
声が出ない。
絞り出す様にして、手を添えた男性に声を掛けた。
「お嬢さん…」
大きな掌が[#da=3#]の手を包み込むと、肩が跳ね上がる。
誰かが自分へ触れるたびに感じていた違和感の答えに突然辿り着いた様な感じだ。
人の体温が、苦手なの?
自分自身にそう問いかける――何故かは分からない。
蓋をしてしまった記憶の箱は、それを取り出す事を赦さなくて。
自分自身の記憶なのにそれを思い出す事を拒んでいるかの様な、不思議な感覚。
「[#da=3#]――いえ、’お嬢さん’。私が軽率でした」
静かに告げる。
重なったその手に少し、力が宿った。
「…また傷付けちまったな」
何かを堪えた様な声色が耳に届く。
突然。
大漢の手が[#da=3#]を引き寄せた。
細く小さな身体が強張るのを感じながら。
壁の様に大きな男はどういう訳か確信を持った様子で、躊躇う事無く[#da=3#]の身体をぴたりと寄せた。
腰元から背中へ沿う様に腕を添わせてゆっくりと抱える。
肘を身体に当ててから隙間の無い様に腕を這わせ、肩甲骨辺りを掌で支える様に抱き締めてやる。
「お前が傍で居てくれるなら俺は…それだけで良かったのに…」
引き寄せられた先で、消えそうな声で呟いたレオンの声が届く。
彼の声は、何故か。
聞き覚えがあって。
とても…居心地が良かった様な。
ただ。
何故こんなに。
恐怖が、全身を巡る。
――体温が怖いの?
突然、世界が暗転する。
腕の中でまるで手慣れた様子で、[#da=3#]を抱き止めていた。
少し熱の上がったその小さな身体は、大漢のその腕でしっかり身体を支えられて強く抱き留められていた。
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