- Trinity Blood -3章
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10果てる身体。×
暗い部屋。
石の台。
蝋燭。
ひんやりとした空気。
例え様の無い酷く甘い匂い。
錆の強い匂い。
横目で見ると、明々と燃える火から先がほのかに赤くなった鉄の棒が飛び出していた。
2人の神官と、司教。
アジアナ・ループは神官と共に扉の前で残された。
これからする忌まわしい行為と同じ事をされた彼女を入れてしまうと、フラッシュバックで暴れる危険があるからだろうか。
ぼんやりと思考を巡らせる。
思い出したように左右に首を振り心の中で「いけない」と呟く。
いつもこうだ。
つい考えてしまう。
「捧げます、神の肉よ」
空の器を差し出す。
「捧げます、神の血よ」
空のグラスを差し出す。
正装をした司教が石の台へ2つ共置いた。
代わりに司教がその手に持ったのは細身の剣。
腰のベルトに固定させ、こちらを振り向き静かに言った。
「浄化の儀式を執り行う」
差し出された掌に従い前へ進むと、石の台で足を止めた。
器の前に並べられた鈍い光を放つ鎖が堂々と横たわっている。
「さあ、神の前で生まれた姿になりません」
3人に背中を向けたまま、[#da=1#]は上着を脱いた。
あらわになった白い肌を見た司教の舌なめずりが聞こえる。
浄化の儀式として、悪魔との切り離しの際に悪魔が暴れて自分自身の身体を傷付けない為に、両手を出すように指示される。
後ろから近付く2つの気配。
細心の注意を払う瞬間だ。
『少年』として受ける儀式。
胸の膨らみに気付かれたところで、任務は失敗してしまう。
背の高い神官と背の低い神官がそれぞれ左右に立ち、各々片方ずつ鎖に繋いでいく。
幸い長い髪に隠され、[#da=1#]のそれに気付かれる事無く鎖は両手首とも繋がれた。
鎖に繋がれた両手がとても重く感じる。
これで後ろの動きは耳からの情報のみ。
不安は広がる。
火によって水分が飛び、乾いた木片がガラリと音を立てる。
同時に重い金属の音がどこかにぶつかって耳障りに響き渡る。
「悪魔よ、この少年は浄化される」
背中越しに金属が石畳の床に触れて甲高い音が鳴った。
同時に近付く足音。
「立ち去り給え!」
「っあああああぁぁっ!!!!!!」
皮膚が焼け焦げ、強く言い知れぬ痛みが身体を襲う。
「う…くぁっ」
鎖に止められた手首が引き千切れんばかりに腕を引く。
身動きのならない身体。
身体を曲げる事すら出来ない痛みに意識を手放しそうになる。
自分は自己修復機能がある。
心臓を貫かれても[#da=1#]は息を吹き返した過去がある。
しかし、手足を焼かれ切り刻まれる事は未だに恐怖が残るのだ。
「その身は焼け、肉となり」
耳を貫く様な金属の音。
床に落とされた、背中に押し付けられた鉄の棒。
「その身は切り裂かれ、血となる!!」
ベルトへ付けた細身の剣が引き抜かれ[#da=1#]に向かって一直線に光が飛んでくる。
両手が固定され、背中の痛みも伴い逃げる事が出来ない。
膝をついた[#da=1#]にその切っ先が辿りつかんと牙をむいた。
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