- Trinity Blood -3章
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少し肌寒かった。
羽織も持たずに素足のまま床を歩き、外へ通じる扉を慎重に開けた。
まだ太陽の昇らない空がこちらを睨んでいる。
薄暗く寒い中バルコニーへ出ると、体温の無い身体に冷たい風が当たる。
司教に呼ばれ、この教会に昨夜から滞在している。
静かだ。
こんなに凍る様な寒い風。
薄暗く凍った様な空。
体温を容赦なく奪う床。
身体に悪いことなんて、もうだいぶ前から分かってはいる。
崩れ落ちる様に壁にもたれると、冷たい壁が服を通して伝わって来る。
「もう起きられたのですか?」
「神父…」
銀の美しい髪を乱雑にまとめた、長身の神父。
にこりと笑った神父に、[#da=1#]は若干の警戒心を覚えた。
どうやら先にバルコニーに居たらしい。
バルコニーは居室に付いた窓ごとに区切りはあるものの、その幅は狭く、こちらに渡るなど派遣執行官である自分達には勿論、この建物の高ささえ気にしなければ一般の人間でも容易だ。
「寝ていないのですか?」
「え?あ、はは…お恥ずかしい」
[#da=1#]は先に声を掛けることで自分への質問を回避させた。
困った様な笑顔に、どれだけの人が騙されるんだろうか…と思ってしまう辺り、自分はひねくれている様に思う。
「何だかこの寒さで全然寝付けなくて…」
下を向いてしまったアベルの笑顔は弱々しいもので、言動が少し気になった。
「寝なかったのでは…なくて?」
視線を離したのは、聞いていい質問なのか悩んだから。
「あの…私そんなに分かり易いですか?」
アベルが投げかけてきた質問は、何やら言い知れぬものを含んでいる。
「いえ」
ゆっくりと視線を外し下へ瞳を落とすと、素足が触れるバルコニーの床が映し出された。
昨夜は月が綺麗に見えた夜だったから、と思い出しながら[#da=1#]はその瞳を閉じた。
僅かに沈黙した時が流れる。
*