- Trinity Blood -3章
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身分を偽ったままの[#da=1#]は『[#da=2#]』として席についた。
「身体の内側を清めなさい」
「はい、司教様」
両手を組み、感謝の詞を司教が唄う。
その声を聞きながら、[#da=1#]は司教の手元をじっと見ていた。
まるで何かを観察する様な瞳が彼へ向けられている。
「エイメン」
「…エイメン」
言われるままに食事を口へ運ぶ。
質素であるが食事の名目は『内側を清める』為のもの。
量としては少なくても十分な食事であることには変わりが無い。
口へ運んですぐ。
視界が揺らいだ。
食事に入っていたものが何か、すぐ分かった。
香と同じような、いや、恐らく同じ匂いが自分の口腔内で拡がる。
「…」
内側も清める、とはそういう事か
表情は変えないまま[#da=1#]は食事を口に運び続ける。
時間がかかるとはいえ、必ず解毒される身体だ。
食事の間は無言で食べ続けた。
言葉を交わして味を楽しめなければ食事の意味が無いと、司教がそういったからなのだが
その言葉の裏に何を思っているのかは安易に想像が付いた。
食事が長引く事で薬の効き目が始まってしまうと意味が無いのだ。
部屋に戻り、静かにベッドへ入り、ゆっくりと身体を休ませる。
そうすることで薬が身体中に回る。
逃げる力、抵抗する力等身体の自由を奪う一種の麻薬である。
味に苦戦する中、早速食べ終わった様子の司教は優しい笑顔でこちらを見詰めた。
「君は、洗礼を受けるのだよ?」
総てを包み込む様な瞳は、偽りの輝きを放っている。
「君への洗礼は明日の夜に」
繰り返す言葉は洗脳でも受けているかのようだ。
最後の一口を口へ運んだ[#da=1#]は、静かに手を止めた。
「司教様、私は洗礼を受けたら重ねた罪を許されるのでしょうか?」
「…勿論。神は総てを見ておられる」
偽りの笑顔が答えた。
「私達が重ねる罪は総て神の思し召しです。罪を重ね、その罪を悔い改め償い、私達は神によって正しい事が何かを学ぶのです」
間違う事で正しきを学ぶ。
[#da=1#]は笑いそうになった。
お前が正しい事を説くのか、と。
「さ、[#da=2#]君、これを飲みなさい」
最後に差し出されたそれは、小さなグラスに注がれた赤い液体。
一見すると赤ワインである。
「有難うございます、司教様」
後ろで静かに控えていたアジアナ・ループが、そのグラスを[#da=1#]の傍へと運ぶ。
「ありがとう」
彼女のか細い手が僅かに震えている。
中身は分かっていた。
香や食事に入っていたものと同じ匂い。
バスルームで香を消さず、その匂いを嗅いで入浴したり食事をしていれば喜んで口にした筈だ。
「洗礼を受けた彼女も飲んだモノだよ、安心したまえ」
「はい」
グラスへ口を近付けると、アジアナ・ループは下唇を強く噛んでこちらを見ていた。
その液体の正体を知りながら、止められない自分を悔やんでいる様だった。
その瞳をちらりと見てから、グラスの中身を口に含む。
空にしたグラスを見るなり司教が口の端を一瞬高く吊り上げる。
「精神と肉体は対になっているね?精神も肉体も、生きることで汚れるのだよ。君は生きる事で汚れた身体を清める必要がある。勿論君に限らず、子供は必ず汚れを清める必要があるのだ。その汚れを清めるために儀式をする必要がある。私が君の身体を清める事で君は清らかな精神と肉体を取り戻すのだ」
頷く[#da=1#]に、司教は続ける。
何度も「汚れ」や「清め」という言葉を続ける。
「[#da=2#]君の身体の暗闇という暗闇に寄り添い、身を重ねその奥の奥へと私は進み、身体に巣くう汚れという汚れを総て追い払いその身を浄化する。」
つまり『浄化する』という尤もらしい名目の下で身体を玩ぶという事なのだ。
「司教様…少し、眠い」
品の無い態度だが、[#da=1#]は満腹で微睡みはじめた様子を伺わせる。
いつまでもこんな下らない話を聞くのもつまらない。
「よろしい。では[#da=2#]君、部屋に案内させよう」
「はぁい…」
眠気を誘う作用があるという事は調査済みである。
司教が指示をすると、アジアナ・ループが「こちらです」と下を向いたまま扉を開けた。
「お休みなさい司教様」
「…ああ、ゆっくりお休み」
笑顔の奥に見える妖しい瞳がぎらぎらと光って見えた。
向かう先に、巨大な塔の様な建物が見える。
「ここは他の神父やシスターも使うので、少し不便かも知れません」
少し先を行くアジアナ・ループが小さな声で続ける。
「…まるで監獄」
[#da=1#]はアジアナ・ループの言葉を聞きながらすれ違う神父やシスターと会釈を交わしながら登っていく。
随分と登った所で、先に足を止めた少女は「ここです」と扉を開ける。
「…ありがとう」
礼を告げ、隣部屋の名前を確認する。
そこにはレオンの情報通り、アベルの名前が掛けられていた。
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長編で困るー…
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