- Trinity Blood -3章
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解決しない疑問。
誰にも会わなかった。
合わせる顔もなかった。
あの一件以降、任務へ呼ばれない事をひたすらに願っている。
薄汚れた臭いが充満する暗がりで、全身を拘束された罪人は目を閉じている。
「…俺が軽率だった」
誰に話す訳でもなく、ただ独りで呟いた。
築いた信頼関係は自らの軽率な行動で見事に砕け散った。
深くため息を付いた。
・
望み通り暫く沙汰が無かったが、突然にその時はやってきた。
4ヶ月ほどしてからだろうか。
任務の話は突然に飛び込んできた。
「あーあ…――」
列車の中で、レオンは盛大にため息をついたのだ。
しかしながら、今回は『彼』の名が一度も出なかった。
誰からも。
文字通り誰からも、彼の名が出る事が無かった。
一抹の不安を抱えながら、レオンは出発地点まで行ってしまったのだ。
誰も[#da=1#]の事を口にしなかったのは…――
「俺が軽率な行動を取ったから…か」
「問う。三.〇六秒前に『軽率な』と発言があったが、」
それまで置物の様に微動だにしなかった同僚の派遣執行官、トレス・イクス神父は突然に発言した。
「いや…なんでもねー」
普段と変わらない様に努めているつもりだが、これがナイトロード神父であったらもしかしたら[#da=1#]の事を切り出されていたかもしれないと思うと少し安心した。
僧衣を纏っていないと、おおよそ神父とは思われない程の大柄な大漢。
だらしなく胸元を開けた浅黒の男は、大げさ目にため息を付いた。
自分が原因である、という後ろめたさがあった為かレオンは自分から[#da=1#]の事を問う事を躊躇っていた。
「否定。卿は列車迄無駄な行動は認められなかった。『軽率な行動』とはをどこを示していた」
「やめろよ…」
平静を装う事に努めようと、欠伸をする振りをしつつ。
「――ったく、ちょっと前やった失敗を思い出してただけだ」
「問う。レオン・ガルシア・デ・アストゥリアス神父。卿の犯した『失敗』とは?報告書にはそういった内容は記載されていなかった」
「ぐ…」
間髪入れずに問い質してくるトレス・イクス神父は、時々神父アベルより厄介な様な気がする。
言葉が紡げない。
「回答を」
回答を迫るトレスに、しかしレオンは言葉が見付からない。
自分の犯した失敗を、どう説明したらいいのか見当もつかない。
例えばここで[#da=1#]との間に起った、いや自分自身が犯したあの日の顛末を話したとしてもただの言い訳にしか、ならないのだから。
「回答を。レオン・ガルシア・デ・アストゥリアス神父」
「容赦ねえなお前…」
「肯定。卿の発言意図は不明瞭だ」
項垂れたレオンに、容赦なく言葉を連ねる。
「『軽率な行動』とは、何だ」
何とも返答し難い。
自らの罪をここでさらけ出す事は避けなければ。
「人には聞かねえ方が良い事だってあるんだぜ?」
「肯定。それに項目については了解している。だが俺は人ではない、機械だ」
そうなんだよな…――
レオンは腕を組み、彼にとっては狭い座席に深く座り直した。
お世辞にも座り心地のいい椅子とは言い難い座席。
こんな座席でも、余る程広々と座ってたんだよな…あいつ。
何度も列車移動をしたし、車でも同乗した。
寝食も共にした。
そこで小さくかぶりを振って。
[#da=1#]と行動する事が、いつの間にか多くなって。
いつの間にか、距離が分からなくなって。
いや。
慎重に距離を取っていた筈だった。
何故。
俺は理性を失った訳ではない…筈。
だったら俺は…
『別荘』で何度も自問自答を繰り返した。
答えは未だ、出ないまま。
4ヶ月も経過しているのに。
任務に集中しなければ。
頭を乱雑に掻いて、大きなため息をついた。
「酒が恋しいぜ…」
酔えないだろうがな。
恋しい、だなんて。
[#da=1#]…お前今、任務の現地先に居ねえよな…?
「回答になっていない、神父レオン」
「独り言位言わせろよ拳銃屋…たまには独り言だって言いてぇんだよ…」
トレスは答えなかった。
混乱している訳でも困惑している訳でも、無いだろう。
静けさを取り戻した列車の中で、レオンは遠くであまり動かない景色へ目を向けた。
・・・
平和はいつ、戻ってくるのでしょうか…
いやはや…謎です(私が一番謎なんですよね)