- Trinity Blood -3章
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静かになった室内で、どちらも言葉を発する事はなかった。
ただ静かに、時だけが過ぎる。
黙っている事を責められる事はない。
称賛されている訳ではないとは思っているし自覚はしている。手土産に渡された古新聞が古棚の上に何部か置かれている。少し開けられた窓から風が緩やかに入り込んできた。窓際に座って景色を眺めている彼の僧衣から嗅ぎ慣れた香りが漂ってくる。
何もしない。
話掛ける事も、質問をする事も、例えば問い詰める事だってしない。
ただそこで居るだけ。
心地よい時間。
さっきまで、この状況を説明しなければと焦っていたのが嘘のようだ。
任務に支障が出ると判断し、教皇庁国務聖省を務める特務分室の派遣執行官直属の上司である、カテリーナ・スフォルツァ枢機卿へ連絡を取った。
彼は気が付いていただろうと思う。
ただ彼は、止める事をしなかった。
任務を遂行できない理由は、お互いにもう分かっていたからだ。
一緒にいる事がこんなにつらく居心地の悪さを感じるだなんて、初めて知った様な感覚。
勿論神に背いていたのは自分自身。
赦しを乞うたとて許される事ではないのだと思い知らされる。
ただ、このままの自分でしかもう、心が存在できないところ迄きている――
神に与えられた『自分』で生きていた時間は既に、終末を迎えたのだ。
それ以外の心はもう、創れない…――
主よ…――
掠れ消えそうな声で、小さく唇が動く。
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