- Trinity Blood -3章
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朝食を共にしているなんて、普段の光景。
2人は言葉を交わすことなく朝食を下のテラスで摂っていた。
一切の言葉も交わさないまま、既に1時間が経とうとしていた。
食べているのに、味のしないサンドイッチ。
コーヒーも黒い水。
砂糖を入れるのは嫌いだが、味を感じないから入れてみたものの結局はただの黒い水だった。
気まずくなって言葉をかけようとしても、果たしてなんと声を掛ければいいかと思うと声も出ない。
この状況で2人で食事を摂っている事が、信じられない位だった。
謝罪をしたい。
浮かばない言葉。
すまなかった
例えばこの言葉がどれほど平たくて意味のないものか。
とてもよく分かっている。
だからこそ、何と言えばいいのかレオンはずっと悩んでいたのだ。
味のない朝食を口へ運んでも、お腹は満たされない。
いや、満たされたとしてこれは食事なのか。
やがて終えるだろう空になっていく器や皿を見て、渇きもしない喉に黒い水を流し込んで。
どれだけ小分けにしても、量は変わらない。
子供にでも言う台詞だった。
謝罪をしたとして、誰が満たされるのか分からない。
謝罪をしたとして、気持ちの整理をつけたいのは俺だけだ…――
視線をそっと皿から外し、[#da=1#]へと目を向けた。
あちらも進まないようで、持たぬままカップの中の紅茶へと静かにその瞳を沈めている。
「――…[#da=1#]」
言葉も見付からぬまま、レオンは声を掛けた。
こちらへと目を向ける事がない[#da=1#]を見つつ。
「軽率だった…どう謝罪していいか、分からねえ」
頭を下げてしまいたかった。
だけど、片時も目を離すつもりがなかった。
交わる事のない瞳を追い掛けていく。
様子を窺おうとしても、[#da=1#]はこちらへと目を向ける事は無い。
誰かに聞いた訳ではない。
いや、多分誰かから聞く事は容易だった。
本人の口から自分の話が出る事は無く、それをレオンは気にしない様に努めていた。
当の本人が言うつもりをしていないのに全く持って浅ましい行為だった。
伏せてしまった瞳に意識を奪われ、言葉を忘れてしまいそうになる。
「心ない行為は…雨を降らせるのですね――」
小さな、しかしはっきりとした口調で[#da=1#]は静かにそう言った。
瞳は伏せたまま。
その言葉は、深く突き刺さった。
心ない行為を働いた自分に対し、赦すべきかそれこそ悩んだのだろうと思う。
けれど心から赦せる筈もない愚行である事は自分が一番理解していた。
「――神は御心に…?」
誰に、問い掛けたのか。
風に消える様な小さな声。
聴覚の発達したレオンの耳にはその声はよく響いた。
息を呑む。
呼吸を忘れてしまいそうになる。
僅かに震えるその手を静かに抑えて、[#da=1#]は少しだけ息を吐いた。
「ガルシア神父」
言葉を選んでいる様な[#da=1#]の口元をレオンは目を離せないでいる。
名を呼ばれて次の言葉が待ち遠しい事など、どれほど記憶を遡った先にある事だろう。
「神は赦される」
そして、ぴたりと瞳が合った。
「…しかし私にとって、これは試練となる」
つまり、神がその罪を許したとしても自分はこれを許せない。
神が試練を与えたのだと、[#da=1#]は言ったのだ。
「これは、俺の罪だ」
レオンははっきりと答えた。
偽る必要がどこにあるのか。
不信感を植え付けてしまった。
体温を嫌がる[#da=1#]には辛い仕打ちだった。
抵抗が意味を為さない事にどれだけ恐怖した事だろう。
昨夜の事を忘れさせてやる事ができたなら…
「例えばこれが神父レオンの罪だったとして、元を糺せば自分が一つだけ神に背いている事が罪である事に相違はないのです」
もう知られている事でしょうが…とため息交じりに小さく続けた。
偽り切れない性別は、暗黙の了解とされているものだ。
匂いも違う、骨格も違う、仕草も、文字も、言葉遣いも、全部[#da=1#]・[#da=2#]を表している。
性別なんて、どうでもいい。
[#da=1#]・[#da=2#]神父としての一人格でしかないのに。
「…っ」
[#da=1#]はとっくに消えている筈の下腹部の鈍い痛みに違和感を感じながら、重たく感じる紅茶のカップを持ち上げていた。
!読んだよ!
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書いていてとてもつらいー…
最推しのレオン神父がとても気の毒で仕方がないですが、
[#da=1#]が已然の自分とは違う今現在の自分と向き合う時が、改めてきたものとして、レオンさんが重要な役割を担ってほしかったのです…切な過ぎて続きが書けそうにない位ダメージを受けているところです…^p^