- Trinity Blood -3章
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黒色の獣・下
窓を開けると、日中感じた風とは違う体温を下げるような風が頬を撫でた。
出窓に腰を下ろすとすっかり月が夜を告げている。
むしゃくしゃして頭をばりばりと掻いて、両手でその頭を抱え込む。
「何やってんだよ俺は…」
心がとても痛い。
押し付けられたような痛みが、とても苦しい。
「くっそ…っ」
確認なんて、言葉でもできた筈だったのに。
自分がした事をこれほど後悔したのも久し振りだった。
ソファからベッドへと移された[#da=1#]は、一部の隙もなく丁寧に寝かされていた。
怖い思いをさせてしまった。
目が覚めた時、何と言うだろうか。
軽蔑されるだろうか。
目が覚めないまま居てくれないだろうか、どれだけ強く願ったらこのまま眠り続けてくれるのだろうか。
目を覚ましてくれと強く思ったあの日が、後悔に変わってしまいそうだ。
出窓のわずかな壁の部分に背中を預けてぼんやりと空を見上げている。
他の同僚にも、今は顔も合わせられない。
先ほど別地区に身を置いているアベルと連絡を取ったが、平静を装う事にこれだけ労力を使う事だったかとさえ思った。
一気に疲れが出た。
フロントに電話して持って来させたワインが、出窓から注がれる月の光で薄く光を帯びている。
今度はグラスに注がず、そのまま煽っていく。
恐怖を与えてしまった事を忘れてはいけない。
ただ、今この瞬間だけは自分が犯した罪を一時でもいいから忘れたい。
矛盾した心は、注がれたワインでもその傷を埋める事は出来ずにいる。
傷付けてしまった事に傷付いただなんて、小説でもあるまいし。
[#da=1#]の能力では外傷は治せても、心の傷を癒す事なんてできないのに…
後悔先に立たずとは本当に良くできた言葉だ。
項垂れた大漢は、これまでになく小さく影となって映っていた。
横目で影を見やるとその視界の端では、確かにきちんとテーブルへ置いた筈の空の瓶とグラスが床に転がっているのが視える。
酒に呑まれる事など、無かった。
自分の中で渦巻いていた獣の部分が、抑えきれなかったのだろうか。
しかし記憶を巡らせる程に、自分がいかに冷静だったかを指し示す記憶しか出てこないのだ。
酒の勢いでと言い訳をするなど、以ての外である。
何故なら相手が誰でも良かったという事は微塵もないのだから。
ただ、[#da=1#]を選んではいけないと、自分を抑えていた事は確かだったのに。
・・・
文字で表現するのは、素人では難しいという事はよく分かっていたのに…どうしてこう、自分のハードルを高く上げ過ぎてしまったのだろうか。
テンションでやってはいけない事を、管理人はよくよく、理解しました。
また挑戦したいです←(おい待てよ)