- Trinity Blood -3章
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黒の世界が周囲を塗り替えていく。
夜が近いのだという事が理解る。
その頃にはつまむものもないままボトルはすっかり空いてしまっていた。
殆どこの浅黒の肌を持つ大漢が空けてしまったのだが。
レオンと[#da=1#]はその間殆ど会話をする事がないままで、会話をしていた。
酔った様子もなくグラスに残ったワインを飲み干したレオンは大きくため息を一つ。
向かいに座っていたレオンがこちらへゆっくりと座り直してくる。
普段は少し表情などを確認する仕草があるレオンの瞳は、この瞬間だけは何も行う事が無かった。
静かな静かな空間に、ソファが軋む音が耳に強く響く。
違和感を覚えたのはその時だった。
目が合っている…気がしている。
逸らす事もきっと出来ただろう。
しかし眼を離す事に、とても恐怖がよぎる。
前髪で器用に隠れた[#da=1#]の瞳は、視界を覆い尽くす大漢をしっかり捉えている。
一人で座った時には広く感じたソファにも今や一切の余裕すら感じない。
鼓動が危険だと知らせている。
しかし[#da=1#]の身体はもう、何かに囚われた様にピクリとも動かない。
蛇に睨まれた蛙と言わんばかりである。
近付いてくる瞳は、ぼんやりと光っている様な…
その妖艶な色が、白と黒の世界の中で色を伝えてくる。
段々と狭くなってくる視界は黒く黒く塗り重ねられていき、ついにレオンの髪の間から漏れていた夕日らしき白い光を遮った。
「…!」
背中に何かが当たった。
その『何か』は一体何かを直ぐに理解した。
逃げ場を失った事を自覚するには十分だった。
それでも光を纏った瞳は少しずつ間合いを詰めてくる。
やっと絞り出した拒否を告げる声も、きっと届いている筈なのに。
ソファが再度軋む音にかき消された。
いつも見せる柔らかい表情とは全く違う。
左の手首を大漢の指が捕える。
慌てて引き抜こうとしても抵抗も空しく、か細いその手首は動く気配もない。
視界を覆い尽くす漢の髪が首元に届いた時だった。
光をぼんやり帯びたその色が、金色を纏っている事に気が付いた。
あまりに近い近い所で喉を鳴らす音が聴こえる。
鳴らした喉の主は果たして誰なのか分からないままでいる。
鼻をかすめる匂いは、同じ銘柄を飲んでいたとは思えない匂い。
黒く差し迫る影から香る、まるで獣の様な…
覆いかぶさって左手首を捕えたままのレオンの体温が少しずつ[#da=1#]の身体へと入り込んでくる。
意識をすると、自らの意識を手放してしまいそうな恐怖が、移り込んでくる体温と同時に身体を支配し始めた。
正常に呼吸が出来ているのだろうか。
逃げる隙がなく、いや、逃れる事ができない事を悟り、[#da=1#]は一度強く瞳を閉じて視線だけを逃した。
次に目を開けた時は、囚われた自らの左腕とレオンの右腕。
そしてその隙間からぼんやりとレオンがテーブルへ置いたグラスが視えただけだった。
覆いかぶさった黒の世界から抜け出す事は叶わないと悟るしか手立てがない。
抵抗する事が最早無駄でしかないと、この光を纏った瞳が語っている。
どこに意識を集中させたらいいか分からない。
恐怖が身体を支配するのが先か、意識を手放すのが先か。
残る意識の中で再び黒い獣へ眼を向けると、やはりじっとこちらを見下ろしている。
金色の瞳に向かって首を左右に振りながら、身体中が震え出し恐怖を感じている事が理解出来た。
その金色の瞳は黒く塗りつぶされた世界の中で、諦めろと告げているかの様な強い光を宿している。
震える右手が獣となりつつある左の肩口へ触れた途端――
光を帯びたその瞳が色素の薄い肌をその瞳に映し、吸い寄せられる様に沈んでいった。
黒色の獣 -夜-[鍵]の世界を垣間見る?
【裏夢に付き閲覧PASS設定有】