- Trinity Blood -3章
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
黒色の獣・上
段々色の見分けも分からなくなって、慎重に生活している。
色に違和感を覚え始めた頃よりも更に白と黒で世界が彩られつつあった。
陰影ははっきりしているから、よく観察していると眼の方も慣れて来たのか普段と変わりない様に生活出来ている筈だ。
人気のない荒廃した地区での作業をしている同僚の代わりに、見張りとしてこの場に立っているのだが。
急な風にふいにバランスを崩す。
「…っと!」
急に身体が引き戻される。宙を浮いたような感覚。
拳大の石が辺り一帯に転がっていて、足元が平らではない。
バランスが思ったよりも取りにくい所であることは、理解していたつもりだったのだが。
「足元に気をつけろって言ったろ?」
残った手で導火線を丁寧に隠しながら、浅黒の大漢が一息にそういった。
引き寄せられた僧衣は、纏った主がバランスを整えてきちんと持ち直す事ができた事を確認した時にゆっくりと手放された。
「すみません」
「そういう時は『有難うございます、今日は一杯奢ります』っていうんだよっ」
勢いよく背中が叩かれる。
痛くはないが、とても威勢のいい音で鳴ったので、[#da=1#]は思わず両肩を跳ね上げた。
「さて…これで全部だ。さっさと戻ろうぜ」
ここまで戦場にならない事を祈るところだけど、と呟いたその声は、しかしはっきりと[#da=1#]の耳に届いていた。
・