- Trinity Blood -3章
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行方知れずの心
一番高いところで、空を見上げていた。
ただ、ひたすらに。
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ざわついた雰囲気で先ほどから壁の向こうが騒がしい。
何かあったのかと、優雅な食事の時間を邪魔されて少し不機嫌な、その風貌に似合わない僧衣を纏った男は立ち上がった。
「なんだよ…ったく」
あんなに町が一斉に視線を向けていたら気にならない訳がない。
大柄な図体をした男は、金をテーブルに置いて外へと繋がる扉へと向かう。
中核都市といえるこの街でも、こんなに人が纏まって同じ方向を向いていることは珍しい光景じゃないかと思う。
人の視線が集まる先、つまり遥か頭上へと、男は視線を向ける。
「…あ?」
人並み外れた視力。
軍人は遠く離れた四等星が見えるか否かを問われるのだが、実際のところ、彼の特殊な能力をもってすればそんな事は朝飯前といえる。
遥か視界の先にうつるのは、黒を纏った影のように見えた。
その影を見付けるなり、まるで普段見慣れたような口振りで「なんだ」と小さく呟いた。
そのままゆっくりと足を進めて、建物の中に入っていく。
「おい、ギャラリーを追っ払えよ…損害は一切無しだからな?」
それまでまるで置き物の様に動かなかった青年は確かに「肯定」と抑揚の無い声で言葉を発した。
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