- Trinity Blood -3章
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一枚の手紙
一人の礼拝者から「神父様が友達を連れて行ってしまった」と手紙を貰った。
送られた先の住所は街でただ一つの教会。
「…変ね」
書かれた手紙をテーブルへ置いて、緋の法衣に身を包んだ鳶色の瞳の女性が小さな声で呟いた。
「どうかされましたか?」
「ええ、シスター・ケイト…これを」
後ろの壁模様が僅かに映る、泣きぼくろが印象的なシスターがどこからか現れる。
このヴァチカンを統治する…いや、名目上は違うが彼女は義兄と共に確かに裏でこの国を統治している緋の法衣を纏いソファーへと身を沈める女性に、手紙を読む様に瞳で差して促した。
受け取った手紙を読みながら、シスター・ケイトは下唇にその柔らかな指の先を乗せて眉を寄せる。
「あの、カテリーナ様?」
「気になるわね」
言われて「ええ、確かに」と返したシスターは、もう一度手紙を見遣り「神父が…?」と、手紙の言葉に疑問符を投げかけた。
「神父を派遣しましょう」
彼女の声は、いつもの少しハスキー掛かったそれとは違った。
「ええでも…」
シスター・ケイトの言葉を遮る様に低く、怒りの感情を抑えた声が広い部屋に響いた。
「ナイトロード神父をここへ」
「分かりました。すぐに」
一礼すると、シスター・ケイトはすぐに下がった。
その後すぐ。
「イクス神父」
それまで僅かな気配すら感じさせなかった小柄で端正な顔立ちの青年がこちらを向いた。
「命令を、スフォルツァ枢機卿」
「先に彼を派遣します。神父アベルからの報告を待って、貴方を含め3人を派遣します。手続きを進めなさい」
トレスは僅かな機械音を立てて「肯定」と短く告げて足を進め、すぐに扉の前に辿り着いた。
静かな部屋に少し強い光が降り注いだ。
*
「好かんな。こういうのはよ」
4日後。
任務地に赴かんとトレスと共に列車に乗り込んだのは、大柄で浅黒の肌を持つおおよそ神父とは言い難い男性。
「肯定。スフォルツァ枢機卿は可及的速やかに、慎重に任務を遂行する様命令されている」
「そうは言ってもよ…俺は子供絡みは気が進まねぇ」
「それについては了解している。しかし卿が適任だとも言っていた」
「俺は爆弾の解体とかは得意として、子供扱いには慣れちゃいねぇンだ」
「否定。確かに卿は子供は苦手だとよく発言しているが、ナイトロード神父に劣らず扱いなれていると認識している」
「要らん認識だ。消しとけよ」
「否定。俺個人の独断ではなく多数の意見を取り入れた結果だ。削除できない」
「おいおい…」
そこまで消せないと断言されてしまったら、こちらとしても強制する事も出来ない。
仕方がないといった様子の表情でレオンは一旦外へと瞳を向けた。
「で?」
「彼なら2本前の列車に乗った。現地にて待機中だ」
「お前本当にエスパーに転身した方がいいんじゃねぇか?」
「エスパー?否定。俺は超能力は持ち合わせていない」
「俺の心を読んでるだけでも結構凄いと思うけどな」
「発言の意図が不明だ。回答を」
「あーつまり…や、忘れてくれ。頭痛くなってきた」
投げやりにそう言ってから、レオンは狭い座席に無理やり身体を預けた。
「着いたら起こしてくれ」
「…肯定」
大柄な男の睡眠を妨げない様に静かにそう答えてから、トレスはまるで人形の様にピクリともしなくなった。
*