- Trinity Blood -2章
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トレスと離れて暫く歩いていたが。
辿り着いたのは一軒の廃屋。
この場所に来たのには意味があった。
[#da=1#]が生まれる前に起こったこの街の事件の見出しはこうだ。
“影に滅ぼされた街”
影が現れて、夜に紛れる。
夜な夜な現る影がこの街をダメにしてしまったという、証言が記載されていた。
インタビューを受けた一人の男の言葉を思い出していた。
この建物はその新聞に大きく映っていた建物の一つだ。
風化して崩れている部分が多いがここは古新聞で見た、写真と同じ建物に相違ない。
少し街から離れたその場所は、小高く、街が一望できる筈だ。
すっかり明かりも灯らない、淋しい街。
この小高い丘の下部分は、月の光が届かない様な湖…いや、沼の底の様だった。
小高い丘の、この建物は第一被害者であるロウディ=ヴァッハの家。
被害当時は18歳と書いてあったが、その青年が暮らしていた家である。
月照らされて不気味な表情をこちらに向けている。
ふと屋根の上で何かが、音もなく笑った。
影が、こちらを向いている。
弓なりに口が吊り上がっている。
不気味な光景だった。
思わず、息を呑んだ。
途端。
影が間近に迫った。
視界に突如として迫り来た闇に驚きはしたものの、即座に身体が反応する。
影が到達した瞬間、大きく身を引く。
そのまま右手を地面について、そこを支点にして大きく身体を回転させる。
右手首に付いた腕輪が、高い音を立てた。
腕輪についた十字架が当たったのだろう。
金属同士が当たり、高く乾いた音を小高い丘に響き渡った。
懐へ飛び込んできた影を、低い位置でやり過ごす。
大きく後退した身体は地を蹴り、円を描くように身体を回転させる。
刹那――
蜘蛛の糸の様な、目を凝らしても見え難い様な光が月の光を受けて閃く。
影は靄の様な光から逃れる様に、遥か空へと舞い上がる。
空中で孤を描いた影は、僅かにブレた様に見えた。
追った身体はしかし、何かに引かれた様にぴたりと立ち止まる。
一方で影が屋根の上へと音もなく降り立った。
2人はお互いに。
最初の位置に戻る。
影は高い位置で、月を背負ったまま[#da=1#]を見下ろしていた。
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20220214
加筆修正を行いました。
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