- Trinity Blood -2章
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危機的状況。
四面楚歌。
オールレッド。
言い方はそれぞれだが、現在の状況は手に取るように分かる。
不利な状況である。
暗がりの街中は既に廃屋が目立つ。
扉が吹っ飛んでも、植木鉢が割れても、人が出てくる事もどこかで悲鳴が起こる事も無い。
小柄な顔立ちの青年は月の光を受けて妖しく光る刃に囲まれていた。
どこからか雑音が強く混じった様な歌声が流れてくる。
それはオペラ会場で聞いたら総立ちになり、嵐の様な拍手が降るだろう美しい女性の声だった。
「拳銃屋!」
急に飛び込んで来た声に眉一つ動かさず、漆黒の僧衣を着込んだ青年が反応する。
反応とは言っても、この端正な顔立ちの小柄な神父は声の主へと振り向く事はおろか、瞳さえ動かさない。
反応したのは生態反応装置。
僅かな機械音が風に乗る。
風を切る何か羽音の様な、何とも捉え難い音が耳に届くと同時に。
身体だった部分が飛び散る。
小柄で整った顔立ちの青年と同じ漆黒の僧衣を着込んでいる、まるで同じ神父とは思えない大漢が駆け寄る。
月の光を受けて閃いた刃が一瞬怯んだのを感じた。
その隙を逃さない端正な顔立ちの、小柄な神父の持っていた愛銃が、咆哮し火を噴いた。
休む間もなく次々と火を噴くと同時に刃を手にした者達は次々と手を離れていく。
「戦域確保」
言葉と同時に。
最後の刃が崩れ落ちるようにして地面に落ちた。
「平気か?」
「肯定」
雑音混じりの女性の歌声は、いつの間にか聴こえなくなっている。
街は沈黙に包まれ、不気味な景色へと色をガラリと変えた。
「おい、あいつどうした?」
トレスの傍に居たと思った幼い少年の姿が無い事に気が付いた。
「確かお前さんと行動していた筈だろ」
レオンの言葉に、トレスは機械音を静かな街に響かせて「肯定」と言った。
「卿を待つように言われた」
「あ?」
つまりは一緒に現地入りした筈の幼い神父とは現在別行動。
彼の言う通りならば、この道を辿れば[#da=1#]に合流できるという事だ。
「卿はこの調査に於いて元々予定に入っていないが同行を希望した。[#da=2#]神父は卿の身を案じていた為俺が合流地点で待機する事になった」
トレスと行動を共にするなら心配ないと思ったのに、合流地点に戻ったらトレスはその場で数人に囲まれていて、[#da=1#]は合流地点に居なかった。
「俺だけで標的を沈黙させることは十分可能だ。[#da=1#]・[#da=2#]神父には主犯の拘束を最優先として伝えた。現在俺はレオン・ガルシア・デ・アストゥリアス神父と合流したが、それぞれ単独行動だ」
ただの調査だというから付き合ってやろうと言ったが、まさかこんな所で戦闘に巻き込まれようとは。
トレスからの説明を聞きながらレオンはぼさぼさの頭をバリバリと掻いて項垂れる。
レオンは左右に頭を振ってから「で、アイツどっち行った?」と確認する。
「同行を。直ちに急行する」
言葉の後一呼吸置いて、トレスは足早に歩き始める。
レオンはその後ろをついて、同じく歩き始める。
無事だとは思うが、本人を見る迄は安心できない。
どうもあの幼い少年は時に危なっかしい行動を取る。
自分は傷付かないとか、そういう確信でもあるのだろうか。
[#da=1#]はコードネーム’リジェネーター’というだけあって、自己回復能力を特殊に身に付けているので問題はないだろうが、とはいえつい昨日病院から連れ出したばかり。
流石に単独では危険の様な気がしてならない。
一抹の不安が拭えない。
レオンは彼が今この瞬間にも、彼の身に何か起こっていないか心配で仕方が無かった。
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20220215
大幅な加筆修正を行いました。
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