- Trinity Blood -2章
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言葉を交わす事も
頷く事も
起き上がる事も
立つ事も
歩く事も
走る事も
そして
病院を退院する事さえ[#da=1#]には可能だった。
そんなことを考えながらぼんやりと天井を眺めている。
電気の周りは明るいが、その奥の、角の部分には十分な光が届かない。暗い天井は、些か不気味だ。
そんな天井がじわじわと下に降りてきて、いる様な気持ち悪さで。
体調が悪いとどうしてもこの様な視覚の奇妙な錯覚が出現し思わずベッドの中へ潜り込む。
潜り込んだベッドの中はただただ暗く。
静かな病室で、潜り込んだベッドの中は一層に静かだ。
暗闇の中で瞳を閉じると、ふと自分の心音が聞こえてくる。
心臓の音が段々とボリュームを上げていく。
煩く、感じる。
自らの心音を、騒音に向ける様な苛立ちで聞いていた。
だがこの心音を感じるという事は今、ここに生きている証なのだ。
確かにこの心臓は一度止まった筈なのに…
呼吸が早くなる。
心が痛い。
たまらずベッドから飛び起きる。
明るさを取り戻す視界。
たった今の暗闇の中へ入った筈なのに既に眩しさに目が眩んでいる。
横になっても眠れず、起き上がっても眠れない。
どうしたらいいものか。
世界はぼんやりとしていて。
何故か視界が定まるには少し時間が掛かる。
視力が悪いとは思わない。
もしかしたら、集中に欠けていたら視力が不安定になるのだろうか。
ベッドの上で膝を抱いて、壁へもたれる。
誰かが来るとかそんな予定はない。
今のところ。
来客なら不要だ。
窓がコトコトと鳴る。
誰かが来るという事は声が聞こえるという事。
沈黙が破られるという事。
この場所は静かで嫌いではないが、街の賑やかな場所で古新聞を読みながら人を観察するのも好きだ。
同僚、と言ってもいいだろう彼ら巡回神父は、研究施設の一室や病室などへよく訪ねてくれる。
そうして、色々近況を話したり、たまにお菓子を持ってきてくれたり。
よく話し相手になってくれる。
彼らに逢いたくない、という事は無いが。
ただ、今は少し違う。
今日はあまり、人に会いたいと思わない。
それは例えば、ここへ採血にくる看護師でも同じだ。
そう思っていた。
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