- Trinity Blood -2章
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次に眼が覚めたのが、翌日の7時を回った頃。
起きた時の気分は良い方で、丁度点滴が終わった時刻だった。
「外出許可を頂きたいのですが…」
点滴を手際よく外すナースに声を掛けると「あら[#da=1#]さん、今日は気分がいいの?」と笑顔で挨拶をされた。
「…問題ないと思います」
まだあまり意識がはっきりしない中、しかし口調だけははっきりとさせて答えた。
そうでないと外出は許可される可能性が少ないからだ。
「そうね。10時からいけるか院長に話をつけておくわ」
ナースはにこりと笑って[#da=1#]の腕から針を抜いた。
「よろしくお願いします」
笑顔で去っていくナースの後ろ姿に声を掛けてから、自身の腕をそっと撫でる。
ガーセで止めなくてもすぐに治ってしまうのに…
丁寧につけられたガーゼを見て、心の中でそう呟いた。
天井を目に戻してから、[#da=1#]は手を胸元に置いた。
どこに行くかを考えながらあまり力の入らない身体をそっと起こすと、そこから見える窓の外をぼんやりと眺めた。
ここからの景色は嫌いではないが、やはりあまり視界がひらけないので外で景色を見たい。
室内で聞く鳥の囀りは不思議と気持ちが焦ってしまうが、じっと太陽が昇るのを見ながら時間が経つのを待つ事にした。
結局しばらく空を眺めていても外に出てからどこへ行こうかと考えを巡らせてみるが、一向に行きたい場所が思い浮かばなかった。
気になったのは、意識を失う前に巡らせた記憶。
自分が魅入った瞳が、自分の赫い瞳を見たのかという不安。
確かめなければ。
[#da=1#]はその意識の下で慎重に立ち上がった。
「…っ?!」
一瞬眩暈がして、ベッドに座り込んだ。
眩暈が治まるのを待ってから、[#da=1#]は再びゆっくりと立ち上がる。
どことなく不安定な身体を引きずって鏡の前へ足を運ぶと、いつもより少し顔色が悪いような自分の顔。
きっと大丈夫だと思い込むようにし、水錆びのついた蛇口を捻った。
水が生ぬるく感じたのは、きっと気候のせいだろう。
両手に水を受けて、ざぷりっと顔に押し当てる。
それを4回程繰り返し、濡れた髪や頬を伝い流れるしずくを全く気にしない様子で蛇口を再び閉める。
すっかり濡れた顔を鏡に映し、水で視界の悪くなった瞳がぼんやりと鏡に映った。
じっとしているのは少ししんどかった。
とにかく身体を動かそうと、洗面台に置かれたタオルを力の入らない手で持ち上げる。
顔を拭いて、再びその顔を鏡に映す。
赫く、血の様な色をしていた瞳が段々と黒に染まっている。
日を追うにつれ、自分の瞳には色がなくなってきているように思い始めた。
このまま瞳の色が黒くなったら、視力が失われてしまうのではないか
僅かな不安は拭えない。
もう一度タオルに顔を埋めて、[#da=1#]は瞳を強く閉じた。
これだけ気落ちするような内容ばかり思い浮かぶのもきっと病院にいるせいなんだろうと考えながら、タオルに埋もれたままの[#da=1#]は頭を軽く振った。
一つため息をついてから顔を上げると、視界が少しはっきりとした様に思えた。
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