- Trinity Blood -2章
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…」
心を輝かせるものは闇の中に在るのか、一瞬の瞬きを赦されるのは果たして人間なのだろうか。
隣で静かに座るトレスと、前で大口を開けて寝るレオンに囲まれた狭い席。
列車の中で新聞を広げ、読まないままでいるのをすっかり忘れて以前アベルと話をした時の事を思い出していた。
「貴方は難しい事を考える」と、アベルにそう言われた。
難しく考えずにものを見て欲しいとも言われた。
教授からは逆の事を言われた。
「もっと知識を身に付けたらいい」
対照的な考え。
対照的な言葉。
対照的な知識。
光と影の様だと思えた。
同じ光の名の下、教皇庁国務聖省特務分室派遣執行官として聖務をこなす同僚。
同じ道に立ちながら、考え方は光と影のような、どちらかというと正反対の存在。
真ん中に立った自分に出来たこの光と影は、いかなる存在であればいいのか。
知識を求めてつい小難しく考えるのが影ならば一般的な人と同じ様な考え方をするのは光だとでもいうのか。
難しく考えるを子供らしくはないというのだろうか。
考えるというのは難しい事だな
[#da=1#]はいつの間にか新聞にすら目がいっていない事に気付いついてすらいないだろう。
「何のためいきだ?」
「…え?」
不意打ちのようなレオンの声。
大柄で浅黒い肌を持つ、くせ毛が妙に似合う長髪の男。
「俺が見てただけで3回はため息ついてたぞ?」
もちろんため息を付いた記憶はないが、レオンの瞳は不思議だ。
獣のような鋭さが、こちらの動向をいつも見ているように思うのだから。
さっきまで大口を開けてすっかり眠っていた筈の彼は、赫い瞳と向き合っている。
「ガルシア神父…」
「まぁ人それぞれ悩みってもんは大なり小なりあるもんだ」といきなり[#da=1#]の言葉を遮って話始めた。
「その大きさを決めるのは他人じゃねぇと思わないか?」
話そうと思っていたのは光と影の…つまり自分が持つ知識についてそれは年齢的に赦されるのか、という疑問について彼はどう考えるのか意見が聞きたかっただけで、レオンが口にしたそんな言葉が聞きたかった訳ではなかった。
何となく妙に心を詠まれた気分になったが、こちらに向けて笑ったレオンの自信に満ちた瞳でその鬱屈した思考を跳ね退けてしまうのはどういう訳か。
「小難しく考えるクセを何とかしろ」やら「解るように説明してくれ」等と言われると思っていたが、しかしその考えはあっさりと否定されてしまった。
「頭は使うのと考えるのが仕事なんだからよ、使わせてやりゃ良いんだよ。なぁ拳銃屋?」
僅かな機械音の後にレオンの方を向くトレスから出た答えは、実に彼らしい言葉だった。
「使わせる?否定。そもそも頭は脳の伝達に「あー分かった分かった。ったく、頭が固いのはお前もだな」
「肯定。俺の頭部は「だー!てめぇに話を振って悪かったよ!だからそんなに怒るなって」
「怒る?否定。俺は機械「[#da=1#]、頼むからこいつ何とかしてくれ」
息をもつかせぬレオンとトレスの会話が次々と飛び交う間、[#da=1#]はただ2人を眺めている。
言葉を返す事を忘れる位2人のやりとりに驚いたのか、それとも呆れて言葉が出ないのか、はたまたどの言葉を投げ掛けたらいいのか悩んでいるのか。
結局頭ではそれを整理することも難しいらしい。[#da=1#]は不思議な感覚に深い興味を抱いた。
そんな中唐突にトレスが立ち上がると、一瞬だけだがレオンの瞳がぎらりと強い光を放った。
「見回りか?」と声を掛けた時には既にいつものふざけた様子のかれだったが、その瞳を見逃す者はいなかった。
「肯定。後338.1秒で『列車をジャックする』とした犯行声明の予告の時間だ。ミラノ公は一般人の人命確保と速やかな事態の解決を望んでおられる。卿等も準備を」
2人に僅かに聞こえる位の言葉を残して歩き出したトレスの後ろを追い掛けて歩く言葉は「大丈夫だって。任せとけ」と笑った。
「乗る前から数の勘定は済ませてあるんだ。観光地にしか停まらねえ列車に物騒なモン抱えて入る奴らの気が知れねぇよ」
獣の瞳。
獣の耳。
火薬の匂い、血の匂い、銃やナイフを持つ者の足音。
全てを聞き分ける集中力。
こちらを「惚れ直しただろ?」などとふざけて笑った彼にそんな能力があると誰が気付いただろう。
「闇…」
もはや彼らの運は尽きたといったところか。
「これが終わったらよ、飯食いに行ってそれから世界一の美女に挨拶だな。お前も来いよ?」
「…光?」
全てを光と闇に分けてしまう事はきっと出来ないのだろう。
[#da=1#]は頷くか悩んだ様子でレオンの瞳を覗き込んでいた。
彼の映した瞳の景色は一部を除いて全てが逆光。
浅黒の肌色に見合う、吸い込まれるような瞳に白と黒を宿すその不思議な現象は美しい。
この謎を解く鍵は「目は人を映す鏡」という東洋の諺。
もっと間近で瞳を見て、世界がどう映されて居るのか知りたい。
「…[#da=1#]?」
「?!」
好奇心のあまり忘れていた人との距離。
身を乗り出してレオンの瞳をじっと見つめる[#da=1#]は、好奇心の塊のようで。
「…すみま「そんなに俺様が格好いいってか?」
離れようとする[#da=1#]に顔を近付け、不敵な笑みでニヤリと笑う。
「まぁ俺様は男の鏡みたいなモンだからなっ」
その思考だけは誰にも負けないポジティブ思考。
豪快な笑顔で笑うレオンの自信だけはどこからくるのか興味はあるが、今はその事よりも瞳の中に覗いた世界がとても気になった。
「さってと…この続きはあと1分後の祭が終わってからにするか」
コロコロ変わる瞳は、しかしそのどれもが次々に不思議な世界を映している。
「…了解」
気にはなる。実に興味深い。
主よ…
[#da=1#]は今から見るであろう光を宿さない瞳にどんな恐怖が映るのだろうと少し不安になった。
今からきっと
また私は罪を犯します
レオンが静かに音も無く立ち上がると、[#da=1#]を置いてトレスが消えた方とは別の方向へ消えて行った。
逆光が映す命はほんの一瞬でも色を発するのだろうか。
疑問の波は消えず、しかしその疑問を解決するには今は少し時間が足りない。
あと20秒。
列車の中で『列車ジャック』の団体様が居座る中で一人置き去りにされた[#da=1#]は、結局読む事を忘れていた新聞を丁寧に折り畳んで鞄に入れた。
*
えー。
訳の分からない作品を作るのが得意でs(殴
…
…
…
ちょっとは文章のまとまった作品を作りたいです。