- Trinity Blood -2章
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
*
「常駐戦術思考を哨戒仕様から殲滅仕様に書換え――戦闘開始」
会場のオークションが終了したと同時に、今回の任務は始まりのを告げる。
「発射」
乾いた空気が流れる闇に、無機質な声が僅かな機械音と共に響く。
途端に彼の愛銃が咆哮を上げて火を噴いた。
銃声と共に煩いまでに会場内に銃弾が雨風の如く降り注がれる。
闇に同化した黒い、恐らくは人であろう何かが煙とともに転がるように会場に飛び込んできた。
「全員そこを動くな」
精密機械のように無駄な動きのない端正な顔立ちの小柄な青年が風通しの良くなった壁を背に立ち塞がると、あまりに目まぐるしく物事が起こったが為にそれまで何が起こったのか理解できなかった会場内で次々と悲鳴が起こった。
客や商品として売られていた子供達の中には泣き叫ぶ者もいる。
「撃て!」
会場で司会をしていた紳士が鋭い声で叫ぶと、それまで商品を見張っていたらしい警備の者達が一斉に銃口が向ける。
一瞬銃声が止まった会場内で、再び銃声が一人の青年に降り注ごうとした瞬間。
「0.34秒遅い」
青年の声と共に、引き金に指を掛けた警備員が次々と銃弾に倒れていく。
「貴様…っ」
「教皇庁国務聖省特務分室派遣執行官トレス・イクス。コード"ガンスリンガー"。開催主催者ファルザー・シオン、本名シオン・フェルザー卿。卿を未成年者46名拉致監禁ならび人身売買及び虚偽書類提出による違法なオークション会場借用・開催及び聖務員執行妨害の罪で逮捕する。抵抗はやめ、速やかに投降することを推奨する」
「く…っ」
手を伸ばす先に見えた拳銃を見るが早いか、トレスは正確にシオン・フェルザー卿の拳銃を後方へ弾き飛ばした。
「キャー!!」
「助けてくれ…っ!」
再びざわめき始めた会場に静粛を求めたトレスの拳銃が天井をを向いた。
「はーい、会場内の皆さんは騒がないで動かないで下さいね」
会場の前方、先ほどまでファルザー・シオンと名乗っていた司会者が立っていた場所でマイクを片手ににこやかに手を振るのはやや不健康そうな顔立ちの長身の神父。
「皆さんにもきちんと事情を聞かせて頂きます」
にこりと笑う彼の笑顔に、逆に恐怖感を煽られた客達の叫び声は徐々におさまっていった。
叫んでいた者達も静かになり、抵抗を試みた者も彼の恐怖に負けたのか拳銃やナイフを床に捨てて壁に手をつける。背を向けた者達に向けられたトレスの愛銃が、今にも火を噴かんと鋭い銃口を突き立てている。
アベルがシオン・フェルザー卿に手錠を見せると、彼は僅かに掛けた抵抗の引き金から手を離してがくりと肩を落とした。
「大丈夫ですか教授、[#da=1#]さん」
結局ちらつかせただけの手錠はシオン・フェルザー卿の両手に掛かる事はなく、代わりにトレスの掌が彼を拘束する。
「やれやれ。出発前にも聞いたけど私達はこの任務に出る必要性があったのかい?」
「肯定。出発前に回答した筈だ」
「しかし通常現行犯というのはだね」
「それについては了解している。しかしこの件に於いては出発前に回答した筈だ」
足を引きずる事を忘れた紳士は端正な顔立ちの番犬と話を続けながら、すっかり暗闇が壁になってしまった方へ男を引き連れて歩き始めた。
「私達はここの後片付け…ですかね?」
「まいったな」等と困ったように笑いながら会場に残された客に的確に指示を出すアベルは、同時に天空に待機していたシスター・ケイトに降りて来るように指示を出していく。
事前に渡されていた書類を思い出しながら『芸術』として飾り付けられた愛玩人形達を保護していくと取り戻した自由を理解したのか、瞳の光が戻った子供達の泣き声が次々に上がり始めた。
「子供から親を奪う権利が、彼等には無いという事に気付いた大人は何人いたのだろうね」という教授の言葉を思い出しながら、アベルが子供達を宥めながら船に誘導するのを[#da=1#]はただ何にもせずぼんやりと眺めていた。
*
いや…仕事しなよ[#da=1#]さんとかいうツッコミは無しで…。
すみません…笑