- Trinity Blood -2章
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普段自由時間以外を検査や研究の為に病室で過ごす[#da=1#]は、今までずっと避けてきた、その日の事件に関連した新聞を簡易テーブルに並べていた。
今まで逃げてきた訳ではなく…いや、そう思っている時点できっと現実から逃げているのだろうと冷静に考えることだけは出来るようになってきた。
急がなくてもいい、とスフォルツァ枢機卿は落ち着いた表情でそう言った。一見冷ややかに見えるあの綺麗な鳶色の瞳の持ち主の言葉に、救われた気がした。
現実を受け止めるには…などと理論的な事を考えてばかりではきっと根本的な解決には至らないだろうと思うのだ。
だから現場に足を運ぶ事も考えてはみたが、果たしてそれで何だというのだ、と再び現実から逃げてばかり。
そもそも現実を受け止める事で自分が何か変わるのか、自分自身がどう受け止めてどう変わるかなんて周りに一体何の関係があるのだろうか。
大体…
[#da=1#]は首を左右に振ると窓から見える空を仰ぎ見た。
「…」
自分が変わろうとする事にこんなにも自分が反発するなんて。
いつか誰だったかは忘れてしまったが、夕日を見た時に誰かが「記憶は今から創ったらいい」といった。
忘れた方がいい記憶もあるという事だろうか。
難しい。
現実を受け止めるということはどういう事なのだろうか。
大人の考える事なんだろうか。
大人はいつだって難しく考え過ぎなのだろうとため息さえ出る。
あちこちの新聞社からあの事件の事が書かれた新聞を取り寄せてみようと思い立ち、[#da=1#]は数ヶ月掛けて可能な限り新聞を集めてみた。
何時間かかっても何日かかっても何ヶ月かかっても、何年掛かってもいい。全てを読みたい。
「街が生きていた証…」
音一つしない室内で静かに古新聞の上に手を乗せた。
一番近い地域に位置した新聞社の新聞を手に取ると、決心したように自分の手元に寄せる。
白く、清潔感はあるが何事にも無関心になりがちな部屋に渇き切った新聞の音が室内に響き渡った。
当時の政治記事、働き手を求める募集記事や広告が紙の中で踊っている。
いつも読む通りひとつひとつ丁寧に読んでいく。寒さの為かは定かではないが僅かに震える手で新聞を支えていた。
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