- Trinity Blood -2章
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*
人が何故生きるのかだなんて、そんなの。
分からない。
国を挙げての争いが各国で繰り広げられており、意地でも生にはしがみついていたいところなのだろうが、同時にこの生活に耐えられないまま、自ら時を止めてしまう者も少なくないのが現状なのだ。
自分が生にしがみついているのは間違いなく、愛娘であるファナの為だ。
しかし、万が一娘という支えを失ったら――
俺も?
いや。
レオンは頭を左右に振った。
一方で、[#da=1#]は下を向いていて。
きっと今、質問の答えについて考えを巡らせているのだろう。
果たして彼は何と答えるのだろうか。
気になって、目を逸らせない。
時折覗くその瞳も、前髪で器用に隠されてしまっていて。
もし俺なら。
じゃあこいつなら?
興味がある。
何と答えるのか。
早く、答えてくれ。
ありきたりな一般論でも別に、構わない。
[#da=1#]の答えは、一体どういうものなのだろうか。
世間的な一般論は、答えが出尽くしている。
「死ぬ為では、ないでしょうか」
一般論でも出すものだろうと思っていた。
大体皆「生きていて良かったと実感する為」とか「君に出会う為」とか「幸福を感じる為」とか「新しい命に繋ぐ為」と、プラスに繋げようとするのに。
幼い子を持つ親の身で、我が子がこの答えを出したら如何に自分でも顔色を変えるだろうと息を呑んだ。
近い程早く流れる四角に枠切られた景色をちらりと見遣る。
でも、死ぬ為なら、何故生まれる必要があるのか。
そもそもそんな事を言う様な思考だったのか。
幼い子供の口からそんな台詞が出るなんて。
聞いた訳でもないのに「主観ですが」と続ける。
赫の瞳はこちらを見て。
「お前さんの意見で構わねぇよ?」
まあ世間的な一般論が聞きたかった訳ではない。
流れる景色は遅かれ早かれ過ぎて行く事には変わりがない。
命もそれと同じ。
いつか途切れるにせよ、それは一つ一つ大切な時間である事は誰もが理解し得るものである。
時は螺旋。
いつ道を踏み外すとしても、人も生物も何もかも。時を生きる事にはかわりが無いのだ。
けれど先ほどの答えは内心ひやりとした。
――死ぬ為、か。
しかし逆に、[#da=1#]の持つ意見は誰しもが一度は脳裏を過る様な事なのではないだろうか。
「意味が無いから生きてはいけない、理由があるから死ななければいけないなんて…」
言葉が途切れる。
すっかり下を向いてしまった少年は、言葉を紡げなくなったのか。
あるいは何か言葉を選んでいるのだろうか。
レオンは[#da=1#]の思考に強く興味を持った。
’教授’から「彼はお茶会仲間だ」と聞いた様な気がしたが、もしかして子供相手に普段からこういう話をしているのではないだろうか。
そうなるとまあ、この思考は分からなくも無い――
いや、子供相手に何の話を展開してるんだろうか。
内心ため息をつきながらも、レオンは何か難しい事を考えているらしい少年の次の言葉を待った。
少しの間、[#da=1#]は何か言葉を選んでいる様だった。
口元が何度か動いていたが言葉は出ない。
しかし、再度口を開いた少年の瞳は確かにこちらを見た。
「『死にたくない』という本能は誰も同じなのに、人間は何かから逃げる為に簡単に死を選びますよね」
納得がいく様な、次の言葉が気になる様な。ともかく言葉を返す事無くレオンは[#da=1#]が言葉を紡ぐのを聞いていた。
「当然周囲に闘う様に言われますが、現実は辛いもの」
レオンに声を掛けられて以来読まなかった古新聞を思い出した様に手元で畳みながら続ける。
「相手に言葉を求めるのは簡単ですが、励ましの言葉は攻撃の言葉と取る人もいます。傷付くのを恐れるのが人間。当然心は行き場を失くします」
言葉が失くなった。
既に過去となった出来事が鮮明に思い出される。
妻に刃を向けられ追い詰められた自分が、次の瞬間には冷静に自分が生きる事を選択した。
最愛の娘を護れるのはこの世でただ一人である事は間違いない。
レオンが命を紡がなければ、娘の命は保障されない。
自分に向けられた銃口は、確かに「死ね」という言霊を纏っていた。
しかしそれは、銃口を向けられた瞬間に「生きる」事しか選択肢が無くなった事を意味していた。
妻、部下、聖職者を殺害した自分の罪には「死刑」であって当然だと思った。
ただ、その最期の時に娘の安全だけが保障されたらいいとその一心だけでその場を切り抜けた。
場を変えて、潜伏先で拘束される事になったがそんな事は、計算の内だった。
場所を変える事で愛娘の安全が保障される事が、第一だった。
娘を生かす為に、自分が死ぬなんて怖くなど、無い。
ただ、結局カテリーナによってその命を保障される事になった。
最愛の娘の命と共に。
「あくまで…個人的な見解ですが」
伏せられた瞳の奥で、一体何を思ったているのか。
お互いに違う人生を歩いてきた2人だが、しかし今、大漢と少年は同じ道を歩いている。
レオンは自分の手元に置かれた新聞をちらりと見て、それから列車の向こうで流れる景色へと目を移した。
人が死を振り返るのはこの近い景色の様にほんの一瞬なのか、あるいは遠い景色の様にもっと長いのか。
この生命は間違いなく、愛娘の為に。
四角く枠切られた世界へと、瞳を向けた。
。。。。
やたー
できたー
…
…
…
何て意味の解らない話…
恋愛要素どこ行ったよ…?!
・・
20220821
加筆修正を行いました
これは多分恋愛要素っていうより、レオンさんの家族愛についてを追求した作品に変わってしまっている作品ですね。