- Trinity Blood -2章
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*2万打感謝いたします☆
病院からの外出が許された[#da=1#]は、ロッカーへ片付けてあった私服を着てすぐに街へ繰り出した。
手には鞄。
中には3部程の古新聞。
いつも行く噴水のある広場。
沢山の声が飛び交い、水が踊り、草木が奏で、鳥が唄い、活気づいた大好きな街。
僅かにふらつく身体を押すように出掛けたからか、[#da=1#]の身体は少し倦怠感があった。
それでもこの青空の下、[#da=1#]はどうしても行きたかった。
静かな病室で思い出したのは今、目指している噴水のある広場。
あまりない自由時間を楽しむ為の、お気に入りの一つの場所だった。
アベルやワーズワースが持って来てくれた古新聞を読み耽るのが楽しいのだ。
古新聞を読むという時間がいかに充実したものだったか自分で改めて理解しながら、最近モルモットとして忙しく過ごしていた為か、読めていなかった苛々から開放されていく気分に浸っていた。
自己回復能力という特殊な、しかし能力を宿した経緯は分からない。
新薬効果や人体実験などの、研究材料として自分の身体を提供する事と引き換えに報酬を貰い過ごしている。
副作用や体調の回復を早める為の点滴を打ち続けベッドで過ごす日々が続く事も多い。
ひと月の半分以上を病院で過ごしている事も少なくない。
道を歩きながら人に当たらないように細心の注意を払いながらも、[#da=1#]は足を進めた。
噴水が目に入ると、ふと立ち止まる。
噴水の傍のベンチには普段あまり人が座ってはいない。
傍へ寄ると見覚えのある赤が目に留まった。
見た事がある訳だ。
教理聖省異端審問局局長のブラザー・ペテロ。
性格を表す様に揃えて切られた髪に、一部の隙も無い制服の着こなしよう。
立ち上がると2mを超える巨漢である。
覆い被さる様な、いや立ちはだかる様な赤い壁。
「派遣執行官」
立ち上がるその赤い壁に、[#da=1#]は以前の出来事を思い出す。
鮮明に。
負傷した青年へ回復作業を行っている時に現れたブラザー・ペテロを。
左右の手首を拘束され、恐怖を覚えたあの瞬間を。
突然現れたワーズワースがその場を助けてくれた事も。
ブラザー・ペテロは立ち上がった身体を再びベンチに落ち着かせてから、一呼吸置いてすぐに「座れ、派遣執行官」と声を掛けてきた。
「…では」
言われてベンチへ腰を下ろす。
逆らわない方が良いだろう。
目的だった新聞を読む自由時間は、彼と遭遇した事で奪われてしまった様だと理解する。
目的を果たされず荷物の中で過ごす事になった古新聞に気持ちが向きつつ。
隣の巨漢には警戒を解けずにいた。
「年は幾つだ、」と話掛けてきた。
何故、と問いかける事はなかったが。
「随分若い。汝はあの様な処で何故聖務を果たしているのだ」
顔を向けられると、身体が自然と仰け反ってしまう。
身体が本能的に距離を取ろうとしている。
「神父アンデレは何故異端審問局に?」
「む…」
突然に流れる沈黙。
そう。
周知の事実だがブラザー・アンデレは異端審問局では最年少。
教皇庁国務聖省特務分室の最年少は、シスター・カーヤであるが。
質問に質問を返されたからという訳ではない様だ。
違う――
ブラザー・ペテロは一つため息を付いた。
こんな話をしたかった訳ではない。
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