- Trinity Blood -1章
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
・
気が遠くなる様な毎日だった。
毎日が実験や検査、そして訓練の日々で、辛い時もあったが何とか乗り切る事が出来た。
身体の事は依然不明だが、他人にも使用出来る事も分かった。
こういう体質や能力が身に付いた事は残念ながら未だに解明できていない。
思案の日は尽きなかった。
最初の頃、辿り着くまで少し不安だったこの扉。
すっかり迷わずに辿り着けるようになって。
この扉の奥に居る男性は、初めて会ったその日から、検査や訓練以外の日は時間を見付けては会いに来てくれた。
いわば一番寄り添ってくれた人物の一人であると言える。
一呼吸置いて扉をノックする。
「入りたまえ」
「…失礼します」
鮮やかな青が印象的な尼僧の少女が、教授の部屋に入って来た。
「お呼びですか、ワーズワース神父?」
「ああ、待っていたよ。座り給え」
尼僧の少女をソファーに座らせ、自らもソファーに向かう。
「さて…」
呼ばれた理由は、分かっている。
先日出した希望についてだろう。
教皇庁国務聖省特務分室への所属が決まった。
突然備わったこの力が今後重要になると、説明を受けた。
彼と、兄と対峙できるチャンスが巡ってくるかも知れない。
青が鮮やかなこの尼僧は、躊躇い無くこの話を受けた。
が、条件を一つだけ出したのだ。
「単刀直入で申し訳ないが、君が神父としての称号を欲しがっている理由を聞かせてくれたまえ」
予想通りの質問だった。
尼僧の衣服に身を包んだその少女は頷いてから話を始める。
「私の…[#da=1#]と言う名前は、ご存じの通り兄の名です」
そう。
初めこそ[#da=1#]・[#da=2#]と名乗ったが、調べればすぐに分かる事。
この尼僧の本当の名は[#da=3#]・[#da=2#]。
尼僧の少女は兄の名を名乗る事で、その心の内に潜む憎しみを忘れない様に。
そしてこの名で生きる事でどこかでその名を聞き、自ら姿を現すのではないかという期待を込めてこの名を使いたいと訴えた日を思い出す。
自らを餌にするという、その覚悟が強く注がれた名である事を理解し、スフォルツァ枢機卿はそのまま[#da=1#]・[#da=2#]と名乗る事を赦していた。
神父として、男性として生活を送る事できっと、その名は餌として十分な力を発揮するのではと考えていたのだ。
「さて…あとは私の仕事になる訳だが」
パイプを片手に「どうしたものか」と思案するワーズワース神父に、尼僧の少女は視線を落とした。
「猊下は…あまりよく思っていらっしゃらないのでしょうか?」
「いや、そうじゃないよ。彼女…カテリーナ様はね、君が傷付くのを見たくないんだ」
女性として、シスターとして、そういう事ではない。
一人の人間として。
優秀な人材を失いたくないのだ。
彼女の持つその能力は必ず今後の戦力になる。
「私が人間である事に変わりがないのなら、この寿命尽きる迄神父として逝きたい…」
前髪で器用に隠れたその瞳が合う。
出会った時の瞳が、美しいブラウンだった彼女が、最近少し色が変わった様な印象を受けた。
実験を繰り返す内に、何か身体的変化でも起こったのかと考えを巡らせる。
教授は優しくほほ笑む。
「君のそういう思考は、私はとても好きだよ」
かくて。
[#da=1#]・[#da=2#]は尼僧を脱いだ。
黒の僧衣にその身を包み、神父として生きる事を赦された。
・
当時の自分がどういう心境で作ったのか…
うむむ…いや、
多分作りたい一心だっただけだと思うけど。
2005年から書き始めた時には、16年経って書き直そうって思う方がどうかしている気はする。
まあ。
そこが管理人なのかもしれません…
ちょっとは読みやすくなっている事を祈りつつ…!!!
20210823
加筆修正しました。