- Trinity Blood -1章
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
・
時間の差し迫った回収である。
『火の猛獣』と名のついた大砲を回収、または破壊しなければいけない。
暴発されたらいくらレオンでも危険だ。
万が一爆発が止められなかった場合に備えて[#da=1#]が同行する事になった。
聖都の運命を任された2人の任務は重要となる。
爆発物の取り扱いに長けたレオンでも『大厄災』以前の遺失技術となるとハードルも上がる。
アベルは中枢で『火の猛獣』のコード解除に勤しんでいる事だろう。
連絡は未だ来ない。
連絡を待ちながら、周囲を慎重に確認しながらいつでも持ち運べる様にボルトを外していく。
移動は、どうやら可能なようだが。
あとはアベル次第、という所だろうか。
あちらの状況はどうなっているのだろうか。
一方で扉の前に立つ幼い顔立ちの神父を心配していた。
[#da=1#]はあまり自分から何かを発信するタイプではない。
無茶をし過ぎていないか、心配になる事がある。
「まだかよ…’クルースニク’――」
随分時間が経過している様な気がしている。
あまり、時間は経過していないのだが。
この『火の猛獣』を発掘した調査団を問い詰めた限り、爆発物などを仕掛けた様子はなかった。
ならば、解除が終われば移動は可能だろう。
しかし吐かせた者の台詞などどれほど信じられるものか。
レオンの作業に邪魔が入らない様に扉の境目で立ちはだかる[#da=1#]の背中は、小さくとも頼りがいのある背中だ。
傷を負う事に抵抗のない様子だったが、しかし痛みを感じないという事ではない。
苦しむ姿を見た事は何度かあった。
傷口がぼんやりと蛍光色に光っているのは、見た事がある。
察するにあれは…――
「[#da=1#]…」
思わず声を掛けた。
[#da=1#]の前髪が少し揺れる。
前髪で器用に隠れたその瞳が、こちらを見ている様な。
喉元迄出掛かっている言葉。
派遣執行官は、死とは隣り合わせである。
彼はよく心得ている筈だ。
しかし、接している回数が増える程に理解できる。
きっと彼は首を横に振る。
分かっている事ではある。
だからこそレオンは何度もその言葉を飲み込んでいた。
言葉を待つその瞳が、レオンを覗き込んでいる。
[#da=1#]の瞳は光の加減か、以前より赫が増している気がする。
その赫が何を意味するのか、その秘密を知る者がどれほどいるのだろうか。
「俺の傍を離れるなよ…いいか?」
それを聞いた[#da=1#]は短く「はい」と返事をした。
レオンの瞳が、何かを問い掛けている様だったが。
聞く事が出来ないまま。
[#da=1#]は扉の外へと向き直った。
・
20211011
大幅な加筆修正を行いました。