- Trinity Blood -1章
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出掛けた先で入ったバーで。
大柄で浅黒の漢はカウンターへと腰を下ろす。
差し出された灰皿の傍に、煙草の箱を置いて。
箱から一本取り出していると、「隣良いかしら?」と女が耳元で囁いた。
煙草の匂い。
香水の匂い。
鼻の良いレオンには、あまり歓迎する様な香りではない。
女は傍の椅子に座り足を組む。
まだ返事はしていない。
「…へえ」
レオンは笑った。
「お名前は?」
赤い口紅が印象的な女はにこりと笑う。
その瞳には、何か意味ありげな光が覗いていた。
「好きに呼んでくれ、お前だけの名前で」
「あらやだ。本気で惚れちゃうわよ?」
ふふ、と口元に笑みを浮かべてから。
バーテンダーに片手を挙げて、注文の品を催促する。
「甘いのでね」
「はい。そちらの紳士は?」
バーテンダーがレオンの方を向くと「ロックで」と言って、直ぐに女の方へ向き直った。
「見る程に好みだぜ、」
「あら、嬉しいわ」
女はレオンのその手にそっと手を乗せる。
そして。
その奥に小柄な青年が経っている事に気が付いた。
「あら、子供?」
呼応する様に女の方を向くと、女がにこりと微笑む。
軽く会釈をしたものの、小柄な少年はすぐに瞳を逸らす。
「何かお飲みになりますか」と、バーテンダーが呼び掛ける。
しかし、答えたのはその少年ではなかった。
少年はちらりとバーテンダーへその瞳を向けただけ。
「こいつは飲まないぜ。俺のボディーガードだ」
一言も答えない無作法なガキだと心の奥で一瞥をくれながらも、バーテンダーは「そうですか」と答えた。
「あら、こんな小さいのにボディーガード?」
それは女性だけが気付いていた訳では無い。
ボディーガードにしては、幼く頼りない様な印象でしかないだろう。
興味を持ったのか、レオンの背中から覗き込む様に。
女性が[#da=1#]に向かって笑いかける。
少年は女性に再び会釈をする。
しかし。
死角になっているが、レオンのスーツの端を指先で掴んだ様だった。
レオンは気付いていないふりをして、バーテンダーが出したグラスを受け取る。
横目で見やると、少年はトレスとの行動が多かった為か、無駄な行動があまり無い。
アベルとの行動が多かったらどうなっていたか想像もしたくない。
女性は少年に興味を持った様で「純粋なのね、可愛い」と笑っている。
「ボク、おなまえは?」
甘い口調で問い掛ける。
しかし、やはり答えたのは少年ではない。
「よせよ。口が聞けねぇんだ」
「あらそうなの、ごめんなさいね?」
目配せ一つ。
バーテンダーが出したカクテルを受け取ると、レオンの方へと向いた。
「ねえ、どこからいらしたの?」
「ああ、ちょっと野暮用で近くにな」
女は男の指先にその指先を乗せて。
男はグラスの淵を指先で撫でながら。
二人は身体を寄せ合いながら、語らい合っている。
少年はその間、静かに。
時折左右をゆっくり見渡しながらまるで置き物の様にじっと傍で立っていた。
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