- Trinity Blood -1章
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手に持って帰って来た真新しい袋が2つ。
彼はベッドへと足を進める。
およそ神父に見えない大柄で浅黒の男が辿り着いたベッドにどかりと座る。
ベッドの足元へ置いてため息を一つ付いた。
そろそろ標的が動く頃合いではないかと想定して
隣のベッドで眠る幼い顔立ちの神父は、まるで仔猫の様に広いベッドで小さく丸まっていた。
大きなベッドが余計に大きく感じる。
丸まって眠っているからだろうか。
小さなこの少年が、いや。
10歳ほどの少年だからといって軽視は出来ない。
ミラノ公カテリーナスフォルツァ枢機卿の直属の部下であり、教皇庁国務聖省特務分室の同僚である。
小さな手。
幼い身体。
不健康なその肌。
小さく丸くなって、まるで猫の様に。
届きそうで届かないこの距離。
努めて触れない様にしていた。
こいつが性を偽っている事位、分かっている。
匂いが違う。
初対面で感じたその直感は正しかった。
鼻が利くだけに、そういった事柄は偽られても見破れる。
ただ、意味があって性を偽っている以上。
それを俺が尊重できるかどうかという所だ。
任務に支障が無い限りは、尊重するべき項目だ。
それにしても。
子供の時に自分はどうだっただろうか。
こいつの様な子供だっただろうか。
偽らないといけない世界線に、俺は居たか?
もっと活発で誰よりも喧嘩が強い男の子だっただろうとふと思い出す。
こんなにしっかりした子供じゃなかったと、そう思う。
ため息をついて、再び天井を見上げた。
よく近所のいじめっ子とケンカをしては、誰にも負けない自分を誇ってた頃を思い出す。
「なんて言ったか…あのガキ」
同じくガキだった自分を棚に上げ、独りで笑う。
「お――…ああ、うるさかったか?」
確かに笑ったが、眠る仔猫には気を使った筈だったが。
丸まって寝ていた仔猫が赫い瞳が眠たそうに目を開けたので、気付かぬ内に声が大きくなったかと笑った。
「いえ…」
[#da=1#]が気にしているこの血の様な瞳は、レオンにとっては気にする程のものではなく、寧ろ美しいとさえ思っていた。
「おい、[#da=1#]」
身体を再び丸めようとした矢先、レオンは彼を呼び止める。
彼がこちらを見た…、気がした。
[#da=1#]特有の反応の仕方が分かってきている。
レオンはそれを肯定と受け取って話を進める。
「付き合うか?」
言われてそれが何の事だか分かった彼は、身体を起こした。
そう、現在任務中である。
「今日は――来る気がする」
レオンの勘は信用出来る。
金色の瞳が月の光を受けて美しい。
獲物を狙う鋭い瞳だという事が理解出来た。
魅入ってしまう。
軽く頭を振って、思考を止める。
「…準備します」
ベッドを抜け出した[#da=1#]の小さな身体は、同年代の子供――いや、恐らくは一般の人間とは少し、違う。
普通の子供が持たないモノを持っている。
黒の僧衣を身に纏えば、一見したら神父に見えるがやはり彼は幼い。
優しい月の光に照らされていた僧衣を持って、その身に纏おうと持ち上げる。
「[#da=1#]」
僧衣を掛けているイスへ向かっていた足を止め、レオンの方に向く。
「今日はそっちじゃ作戦に支障が出る――」
おもむろに立ち上がって足元に置いていた荷物を一つ渡してきた。
「大体サイズ合うと思うからコレ着ろ」
袋の中身は、とても軽い感じがした。
取り出すと、一着のスーツが顔を出す。
流石に意図が分からなかった様で顔を上げる。
レオンの方へ顔を向けると、彼の瞳はこっちを向いていて。
「お前さん、酒は飲まないだろ?今日は俺のボディーガードな」
気付いていない様だが、この少年の様な笑顔を他の同僚の神父達に向けられる事が無い。
何故かは分からない。
しかしよく観察している限り、一度も見た事が無い。
あの笑顔が可愛いと思ってるのは、内緒なんだが。
可愛いなんて、恐らくそんな事、言われたくないだろうし。
「ま、俺は酒に呑まれる方じゃねえが…いざとなったらマジで頼むぞ」
レオンは足元に置いていたもう一つの袋を持ってベッドまで戻る。
そのまま上着を脱ぎ、袋を開けると中身を引っ張り出して洗面所へ向かった。
「すぐ出るぞ」
「…はい」
言い残してから扉の向こうに消えたレオンに、[#da=1#]は返事をした。
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