- Trinity Blood -1章
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容赦なく降り懸かる雨を望みつつ。
自分を庇った手の温もりや、人の体温が消えて行くのを感じながら…死んだはずの自分。躰は自分の体温さえ否定する。
「…っ」
水分を含んだ服が躰に張り付いて、髪や躰、服を伝って流れて行く。
躰が重く、そして雨は冷たい。
それでも黒の僧衣に身を包んだ神父は、安堵感に包まれてそのまま目を閉じた。
何かが開く音と、栓が閉められた音、そして同時に響いた声。
誰かが叫んでいる。
鮮明な記憶もあったものだと思っていたが。
突然止まる安堵の雨。
重々しい瞼を開ける。
その瞳が、何が起こったのかを確認する。
銀髪の神父が何かを言っている。
かなり慌てている様子で、躰に体温が触れる。
「…は 離せ…っ!!」
躰に感じる体温に酷く拒否を示し、声を荒げる。落ち着かせようと声を掛けるが、その声が耳に届いていない様だ。
「 !! …っ! [#da=1#]さん!!」
赫い瞳は銀髪の青年から逃れ、右手のリングから0.1ミリの細さを保った絲を繰り出した。
「発射」
冷酷な言葉が低く耳に響いた。
同時に腕が血を噴いて落ち、次にこちらを向いた幼い神父の溝落ちに拳をくらわせる。
「トレス君!いけない!」
「どけ、アベル・ナイトロード神父」
容赦の無い冷たい視線の先で僅かな呻き声を上げて崩れ落ちた[#da=1#]に、体温の無い冷たいその硝子の様な瞳を向けた。
長身の神父の腕の中で小柄な青年を見上げた次の瞬きを最後に、[#da=1#]は僅かに残っていた意識を手放した。
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目が覚めたら景色が変わっていた。
自室の浴室にいたはずだが、どうやらここは浴室ではない。
傍で立っていた青年に聞くと、眠っていたのはどうやら2日。
恐る恐る動かした右手は見事に治っている。
左手で、右手が触れる。
あの時吹っ飛んだはずの右手は見事に治っていた。
「問う、卿は機械ではない。何故右手が元に戻った?」
その瞳は前髪で器用に隠されていたが、トレスから向けられた質問から確かに目を逸らした。
そういう能力を持っているのは事実だが、自分でも分からない。
未だに判明していないこの能力をどう説明したら良いのか。
「…勝手に回復機能が働くみたいで」
相変わらず表情を変えないままの神父は、紅い瞳がとても印象的だ。
「任務に於いても、この能力は役に立つ」
「役に立つ?卿の発言意図が不明瞭だ。明確に回答を」
「私の能力は自己回復――
任務に於いて自分が負傷してもそれが任務遂行に役に立つなら、犠牲は厭いません」
「それは禁止事項だ。規則違反事項項目に登録されている」
何でこんな躰になったかは分からない。
自らの意思で人の傷を治す事は出来るが、自分の躰の傷は自らの意思は関係なく勝手に治る。
小さい機械音が聞こえた。
「否定。自らを囮にするのは規則違反だ」
冷たい瞳がそう言い放つ。
「自らを囮にするのは…作戦で優位に好転する事もあります」
「…了解した」
了解…?
トレスへとその瞳を向けると彼もまたこちらを見ていた。
表情を変えないまま彼を見下ろす耳には、小さな機械音と共に放たれた言葉ではあったが、はっきりとその声が聞き取れた。
今の肯定の意味が理解できずにいた小さな神父を、顔立ちの整った小柄な神父は改めて口を開いた。
「卿の言葉を参考に、俺の規則違反事項からもそれを削除する」
呟くようにトレスが冷たくその言葉を口にした途端。
小さな機械音が聞こえた。
「規則違反事項項目から1項目削除」
2人が聖務をする様になって3年。
事件が起こる――
++++
ドゥオさんと戦った時の裏側を作りたくて書いた作品です。
[#da=1#]さんのプロフィール制作しなきゃ。。。
加筆修正しました
20210822