- Trinity Blood -1章
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音のする方に向かった。
「ざまぁみろってんだ」
「さっさと金出しゃいいのに」
「全くだね」
下品に笑いながら、狭い路地から本通りに3人の男が出て来た。
「…んだこら?シケてるぜ。煙草位の金で何を渋ってやがったんだ?」
「おいおい。こんなんじゃ女も買えねえぞ?」
「この間別れたんだったな?残念、暫く『オアズケ』だな!」
「うるせえ!お前だって暫くねえんだろうがよ!」
ふざけて肩をたたき合う男達が[#da=1#]の横をすれ違っていく。
もう一つ曲がった角の先で呻く声に引き寄せられる様に入り込むと、彼等にやられたのだろう3人と同世代位の一人の青年が倒れていた。
慌てて駆け寄り、自らの手を翳す。
[#da=1#]の手がぼんやりと光る。
手をかざしながら、状態を素早く確認する。
命に別状はない様だ。
額から血を流し、上腕に靴で踏まれたらしい痛々しい跡が残っている。
呼吸の感じから、きっと肋骨も何らかの外傷がある筈だ。
折れていないと良いが…
塞がっていく傷口を見つつ、他に外傷がないかを確認する。
後ろで小さくなっていく声を聴きながら。
彼らは後回しだと、救助を優先していると「待てええ!」と大きな声が通り抜けた。
飛び上がりそうな声の方へと振り返ると、目の前には赤い影があった。
同時に風が通り抜ける。どうやら自分とは反対の通路から駆け付けた様子だった。
自分の瞳のせいだけではない
「異端審問局…――?」
一瞬大きなただの赤い幕が張ったのかと見紛う程の巨漢――泣く子も黙ると言われる異端審問局の、しかも局長がこんな街の小路にいるなんて、[#da=1#]には意外という言葉以外無い。
「汝ら――!!
こんな小路で寄って集って子供相手に暴力を振るうなんて何と言う恥知らず!!謝罪をせいっ!!」
風が唸るほどの声で3人はすっかり竦み上がっている。
「ひぃ…っ」
3人はこの日の当たらない小路で、目に見えて血の気が抜ける様な顔でひきつっている。
ところで倒れているのは3人とは同世代の男性だが…子供というのは自分の事だろうか。
まあいい。
今は回復させることに集中せねば。
「汝らを暴行恐喝及び窃盗未遂で逮捕する!!今取り上げた物を渡せ!」
一言ひとことに、3人はびくりと肩を震わせる。
まるで声という圧力に押さえつけられている様な感じだった。
見ていて少し気の毒にさえ思ったが。
「わ…わかっ…分かりました!!」
言うが先か、彼等は財布を投げて逃げ出す。
が、今や遅し。
その3人を表通りにいた部下らしき人達が取り押さえているらしい声が聞こえる。
3人は口々に謝罪や助けの声を上げている。
「怪我は無いか少年…いや、汝は…派遣執行官か?」
よく確認もせず飛び出してきたようだった。
暗がりの出来事だ。
影が動いている様にしか見えなかったのだろうと、思い至る。
視界に赤が広がる。
傍にかがみこんだのだ。
目線が近くなる。
身体がピクリと跳ね上がり、僅かに仰け反った。
「教理聖省異端審問官、ブラザー・ペテロだ」
「教皇庁国務聖省特務分室派遣執行官、[#da=1#]・[#da=2#]神父…」
ブラザー・ペテロである事は、2mを超す巨漢という外見と纏った衣服で分かる。
真っすぐに切り揃えられた髪が、曲がった事が嫌いだという現れの様な気がする。
そんな事を考えながら、[#da=1#]は浅く頷いて見せた。
かざしていたその手を、気付かれない様にそっと下げる。
肋骨を完全に治してやる事が、多分できなかっただろうなと思いながら。
このまま安静にされていれば、数日で回復するだろう事は確信できていたが。
「彼はどうだ?」
ぐっと近付けてくる顔に再び身体が仰け反った。
「…問題ありません」
冷静に対応しなければと、身体がこわばる。
慎重に立ち上がった。
逃げなければ。
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