- Trinity Blood -1章
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[#da=1#]は独り座ったまま考えていた。
普段モルモットとして新薬等の開発に身体を提供している。
勿論毒を体内に入れる事もある。
研究に協力する形で報酬を得ているが、先日研究の主任であるアーチハイド伯爵と久し振りに顔を合わせた。
「死に急ぐ事は無い。嫌なら辞めた方が良い」と言われた。
しかし自動回復能力があるその特性を活かしてこの身体を提供している。
報酬を得る事で生活ができる。
勿論教皇庁国務聖省特務分室に勤めているので、報酬はあるが。
新薬の開発で助かる命が一つでも増えるなら別にこの身などどうでも良かった。
難病に苦しむ者も居る世界だ。
一度は果てたその命。
何故まだ生きているのかは不明だが、人を救う事に使えるならば。
世界が流れていくのをぼんやりと眺めつつ、[#da=1#]は朝からずっとここに座っている。
流れる時間や人を見て、自分もこの人達と同じ様に時間が流れているのだと再確認する。
この噴水傍のベンチで座ってぼんやりと過ごすのが好きなのだが、今この街は普段より少し賑やかだ。
人の体温を苦手としながらも、人を観察する事は嫌いじゃないのでここにいる。
研究のモルモットになっているか、病室で点滴を打たれているか。
自由時間は教授の部屋で新聞を読むか、バスルームにいるか…ここに居るか。
街で人の声を聴きながら持参した古新聞を読んでいる[#da=1#]にとって時間の潰し方は最高の自由時間の一つ。
だけどそれ以外は病院での治療や検査等で強制的に時間を束縛されるから、こののんびりした時間も彼にとっては無駄ではないのだ。
日照りが強くなり出した頃。
小さな機械音が耳に届いた。
指で軽くカフスを弾くと、聞き慣れた声が流れてくる。
『[#da=1#]君かね?そろそろ時間だよ。戻って来なさい』
辺りは普段より人でごった返している昼食時。カフェで昼食を摂っている女性達をあちこちで見かける。
『一度こちらに寄ってくれ給えよ?』
そういえばお腹が減る時分だと思いながら立ち上がる。
「…すぐに戻ります」
『待っているよ』
教授の声は心地がいい。
言葉を聞いてから[#da=1#]は周囲に気を使いながら歩き出した。
周囲は楽しそうな声や笑顔が流れ、今宵執り行われる各国の会議に合わせて予告状を送り付けて来たテロリストの危険性をさほど気にしていない様子だった。
公式に発表はしていないが、異端審問局と派遣執行官が警戒に乗り出している。
ちらちらと異端審問局の赤と、派遣執行官の黒が見え隠れしている。
人は我が身に起こらなければ何に於いても無関心なのだと教授が言っていたのを思い出す。
「…?」
人に当たらない様に気を付けて人通りの少ない道を歩いていたが、向こうで音がした。
確かに人が倒れる音がした。
立ち止まる足。
左右を見ると、どうやらあの角の細道からの様だった。
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