- Trinity Blood -1章
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「どうしたら一緒になれるの?」
彼女はそういって夜の闇に躯を傾けた。
「僕たちは結ばれてはいけないんだ」
闇は美しい銀髪を月に輝かせ、彼女の髪を撫でた。
「貴方と共に生きられるなら私はいいの」
彼女がそう言うから、夜の闇はひそかに涙を流すのだ。
「君にはヒトとして生きてほしい…」
どうして自分の命を素晴らしいと思えないのか?
「僕は君にヒトとして生きて欲しいのに…」
涙を流す彼の瞳は美しい赤。
闇を照らす月が、彼に優しく降り注いでいた。
「この町では例の噂で持ち切りだな」
おおよそ神父に見えない大柄で浅黒の肌の神父が、幼い神父と2人で小さなカフェにいた。
「大体よぉ…こぉんな誰でも出来そうな任務に俺が呼び出されるってどういう了見なんだよ…?」
ひたすら愚痴をこぼす神父の前に座る幼い神父は珍しく今日の日付が刷り込まれた新聞を読んでいた。
「面倒事はゴメンだが、こんな任務に俺を引っ張り出すなんて上もどうかしてるぜ」
「…すみません」
新聞をめくりながら、[#da=1#]はやや聞き取り辛い声でそう言った。
「──何が?」
愚痴も途中で切り、何か謝らせるような事でも言ったかとレオンは考えた。
「いえ…ただ──」
[#da=1#]は新聞からは目を離さずに何かを言いかける。
「ふざけるな!!」
「…なんだ?」
気が付けばそこには幾人かの人が親子と見られる2人を囲んでいた。
「まだあの吸血鬼と会ってるのか?!」
[#da=1#]は喧嘩を止めるか迷いながら立ち上がったレオンの右手側の服の裾を持った。
自分の取ろうとする行動が読めたのか否か、[#da=1#]の瞳がこちらを見ている事に気が付いた。
「あんな汚らわしい奴と会うなんていい加減に止めろと言ってるだろ!!」
激怒する父親と見られる男性は、どうやら今回の任務に関係のある標的と思しき人物の話をしているらしい。
「お願いお父さん!彼は優しい人なのよ!!」
懇願する彼女に父親は怒りを露にする。
「煩い!!俺は忌ま忌ましい吸血鬼に惚れるような娘に育てた覚えは無い!!一緒に暮らしたい?!ふざけるのもいい加減にしろ!!」
明らかに怒りを露にした父親に、溜息をついて歩き出したレオンの歩幅には足り
ない歩幅に少し急ぎ足で追い付きながら、[#da=1#]は後ろを振り返る。
「…」
父親に許しを請う娘の姿を見てすぐに、レオンの方に向き直った。
夜も戸張が下りた頃。
通い慣れたらしい影が月に照らされた夜道を走っていく。
それを見ていたのは闇に染まるほどの漆黒を着た2人の神父。
「さて…案内してもらお「ガルシア神父」
張っていた木の上から下りようとしたその時──
何人かの人達が先程この道を通った影を追って歩いて来た様だ。
「あいつら昼間の──って事は奴さんらも目的地は同じって事か」
「その様ですね」
彼等が通り過ぎて間もなく。
2人は下に降りる。
降り立った先は、先程影達が走っていった道だった。
「──厄介だな」
「そうですね…」
任務遂行にあたり、一般市民を巻き込む事は避けたい。レオンにとっては、その気になれば簡単に遂行できそうな任務だ。
しかしその場合、[#da=1#]と別行動になる。
彼は作戦に忠実なので、案を出したら確実に作戦を実行してくれるはずだ。
だが[#da=1#]を独りにしたくなくて、この作戦は言わずに彼を連れて来た。
「なぁ[#da=1#]よぉ…──」
「?」
「──いや…何でもねぇ」
任務に支障がでかねない事態になる事を避け、安全策で行う事にした。
「行くか…──」
人々が消えて行った暗闇の先をレオンが先導して歩き出す。
木々が月明かりを遮り、道は至る所で見え隠れしている。
静かな闇の中には2人の歩く音と、風で鳴る草木に鳥の声。
遠くで鳴く狼の声が不気味さを引き立てる。
少し行った所で人の声が聞こえてきた
「──やめて…やめてぇっ」
昼に聞いた女性と同じ声。
しかしそれはただの悲鳴ではない。一定の距離を保ちながら彼らを追っていた2人は、叫び声と共に草群に飛び込み気配を殺す。
同時に聞こえたのは幾つかの破裂音だった。
『!』
暗闇の先に見えたのは
まさしく悪魔を退治せんと集った、ヒトの眼をしていない人達であった
・