- Trinity Blood -1章
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土の湿った香り。
心地が良いとは言い難い。
居心地が悪い。
先行していたトレスを探して、ここまで来た。
合流地点に行くのに少し手間取ったのは自分だった。
しかし、約束の時間迄には間に合えた。
何故かトレスは居なかった。
彼が約束の時間に間に合わない筈はない。
周辺の足跡を辿り、ここまで辿り着いたのはいいが。
通信は途絶えたまま。
左右を見渡して。
「おいそこの!」
後方から男が声を掛ける。
[#da=1#]は隠れるでもなく男の方を向いた。
「さっきの男と同じ服…お前も神父か」
同じ、と言う事はやはりここに来ているのか。
しかし彼が寄り道などするものだろうか。
疑問は尽きないが「ええ…まあ」と気のない返事をする。
「あの男なら奥でおねんねしてるぜ?」
にわかには信じがたい。
いや、もし状況の好転を狙っているのであれば捕虜と言われても納得だが。
男の後ろから、気合の入った男達が集まってきた。
どうやら思っている以上に人数が居る様だ。
数時間前に通過した、人の居なかったあの廃村から移住する形で隠れ住んでいるのだろうか。
小さな村だった様に思ったが。
「抵抗するなよガキ」
ナイトロード神父とも合流しないといけないのに…――
「大厄災」前の遺失技術の発見に伴う現地調査だという報告を受け、周辺の捜査に出掛けていた。
規模が大きいと想定された為、それぞれ3方向からの調査を行い、中心地と思われるこの裏山で合流する予定だった。
日程的にトレスと先に合流する筈だったが、襲撃を受けて僅か時間を要した。
2人との合流が最優先事項である。
もしかして、焦っている?
…いや、焦っているのだろう。
銃口を向けてこちらに近寄ってくる。
1人ではない。
4人いる。
何故。
人数がそんなに居ては、合流に時間が掛かる。
「その男はどこに?」
別段拳銃に怯える様子もなく[#da=1#]は問い掛ける。
今ここで、トレスの無事を確認する迄は。
その命を落とす訳にはいかない。
勿論、そう簡単にこの命の灯が尽きる事は無いのだが。
「抵抗も出来ねえよ、全部取り上げたからな」
取り上げた?
思わぬトラブルに巻き込まれたのは自分だけではない様だ。
自分の進む道を遮る者が居るなら。
葬る他無い…
「取り上げた拳銃は、どこだ」
銃を片手に寄ってきた4人の男が引き金を引こうとした瞬間。
左手首にある腕輪の、小さな十字架が鳴る。
周囲の風が啼いたと思った途端。
[#da=1#]の周囲が一瞬煌めき、音楽を奏でるかの様に指が軽やかに動く。
「 」
「 」
「 」
「 」
0.1㎜を保った絲が[#da=1#]の左腕についた腕輪から繰り出されたのだ。
声は風となって消える。
人として役割を終えた肉片がバラリと音を立てて下へ落ちる。
蜘蛛の絲の様な光が周囲に舞い、赤は、[#da=1#]の黒に飛沫する。
十字架が、腕輪に当たって高い音を立てた。
「──…エィメン」
しかし彼らの終焉など気に留めた様子もなく。
そんな事よりも。
トレスの無事を確認したい。
彼が無事でない訳が、無い…筈だが。
言葉が切れ、同時に拳銃が音を立てて落ちる。
「ひ── 」
最初に声を掛けてきた男は、すっかり戦意を喪失した様子だった。
「取り上げた拳銃は?」
怯える男に[#da=1#]は表情を変える事なく聞いた。
前髪で器用に隠れたその瞳が、男をしっかりと捉えていた。
「あ…あっちの、倉庫ですっ」
「…ありがとうございます」
丁寧に頭を下げ、[#da=1#]は薄く闇がかった廊下に向かって足を進めた。
「──…い、ま…のは?」
男は息を呑んで小柄な神父が倉庫に入るのを見送った。
間もなくしてトレスの象徴である武器ジェリコM13“ディエス・イレ”を二挺抱えて倉庫から出て行く幼い顔立ちの神父が、男には恐ろしく映った。
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暫く行ったところで、トレスは足を止めた。
「[#da=1#]・[#da=2#]神父の所有する無線信号機の発信電波を受信」
「…イクス神父?」
手に持ったトレスの愛銃は[#da=1#]では重く、運ぶのに手間取っていた様子が伺えた。
「肯定。損害評価報告を、[#da=2#]神父」
[#da=1#]に負傷箇所は全く無い。
彼独りで幾人と戦ったかは計算出来ないが、一切の傷は認められない。それはいつもの事だと記憶していた。
トレスは周囲を確認し、拳銃を受け取る。
「──問題ありません」
「了解した。作戦を再開する。アベル・ナイトロード神父コード’クルースニク’と合流する」
2つ前のエリアで入手した45口径のリボルバー式の銃はこの段階で不要となる。
しかし、小柄な少年にこれを渡すという選択肢は無かった。
銃火器などは任務遂行には負担になるし妨げになる。
’教授’の提案で、幼い顔立ちの神父は左手首に装飾が施された装具が与えられた。
[#da=1#]の武器は細く、美しい絲。
「この任務には3人が揃う事が必要不可欠だ。同時に行う作業を必要とする」
短髪の小柄な青年は周囲を確認して先行する。
「俺から離れない事を推奨する」
「了解しました」
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20210920
大幅な加筆修正を行いました。