- Trinity Blood -1章
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長髪の男が消えた足元には、黒インクを落とした様な染みが僅かに残った。
2人の動向に目が離せない中。
レオンは耳についたカフスをはじいた。
「おい、今奴さんの取引相手が動いたぞ」
『取引相手、って…え、今どこなんです?』
説明などしている場合ではない。
こちらは今、息をもつかせぬ状態である。
レオンは短く「いいから」と呟いた。
「近くに姿を見せるかも知れねえから、ガイン・ハウバーの周辺に注意しろ」
『…分かりました』
説明不足は申し訳ないと思うが、目が、片時も離せない。
交わした言葉は一瞬だったが、レオンは外で待機していたアベルに長髪の男を任せて、目の前にいる相棒の無事を、がらにもなく神に祈る。
「取引で信頼を勝ち取れば格上げだと思っていたのに…まさか亡霊に邪魔をされるなんて…」
奥底から湧き上がる様な憤怒の声。
しかし、少年はその声に臆する事は無かった。
少年は鼻で笑って、青年へ冷たく言い放つ。
「お前がその亡霊を作り出したんじゃないか」
青年が、少年の胸にナイフを押し入れる。
血飛沫が飛ぶ。
「やめろっ!!」
レオンの声が一室に響いた。
「過去の俺がヘマをしたのなら、俺がきちんと…尻拭いをしないとな?」
下唇を噛んで。
少年は喉奥で呻く。
突き立ったナイフへ手を伸ばす事は無かった。
いや、出来なかった。
左の腕輪から引き抜いた絲を、右手で握っていたからだ。
「んう…っ」
どちらかの手で胸を抑える事も、無かった。
熱い物が、身体の内側からこみあげて来る。
絲へ込めた力が抜けていく。
少年の血で赤く染まっていく。
青年の手元が。
衣服が。
顔にも、赤が飛び散っていく。
「[#da=1#]…っ!!」
レオンが叫んだと同時に、神父はビクリと身体を震わせる。
動けない。
何か、遮断されている様な。
近付いてはいけないと、本能がそう言っている様な。
「わざわざ亡霊として蘇ったのに残念だったなぁ、[#da=3#]!!」
心臓を深く。
「…な、っ?」
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