- Trinity Blood -1章
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窓から見える外の景色は太陽がすっかり隠れてあまりにも暗く。
意外と冷静に目的の場所へ向かっている。
記憶の中には…これ以上もこれ以下も記憶が戻らない。
しかし今の[#da=1#]にはこれで十分だった。
簡単にここまで来れたという事は、相手は相当自身があるのか。
取引先の事を考え敢えて何もしていないのか。
目的の人物は黒い車から降りてきたあの小間使いの様な男。
気になるのは後部座席から降りたあの長髪の男。
フロントマンが震える手で見せた部屋番号はこの先だった。
浅黒の肌の男性があれだけ怖がられていた理由は分からないが、とても助かった。
フロントから離れてここまで歩いているが。
恐らく本人は気付いていない。
記憶を失くしたこの幼い顔立ちの神父がフロントから移動し始めた時からずっと僧衣の端を握ったままであるという事。
初めて[#da=1#]と会った時に、トレスの僧衣の端を少し持って移動していたのはまだ記憶に新しい。
指摘すると離れてしまうかも知れないと、レオンは何故かそう思ってしまった。
不安からくるものなのか、癖になっているのか。
そこまでを垣間見る事は出来なかったが。
今まさに、この瞬間[#da=1#]と向かっている先は恐らく目的地ではないと思っている。
生物学者ガイン・ハウバーの件については、もうアベルに頼るしかない。
アベル本人に[#da=1#]と合流した事は言っていなかった気はしているが、そんな事は事後報告で十分だろう。
今はこちらを優先したい。
勿論寄り道をしている場合ではない事は分かっている。
記憶を失くした筈の[#da=1#]を突き動かしている事が何かを、知りたいと思ってしまったのだ。
思いを巡らせながら廊下を連れ立って歩いていると、とうとう目的の部屋番号が掲げられた扉の前に辿り着いた。
前髪で器用に隠れた瞳がちらりとこちらを向く。
「…ガルシア、神父」
立ち止まった先、この扉の向こうに。
[#da=1#]が目的とする人物がいるのだろう。
レオンは一呼吸置いてから。
「いいか、[#da=1#]?」
[#da=1#]が頷いたのと同時に、静寂の中でノックする。
『…誰だ?』
応答した声は若い男の様だった。
僧衣の端が少し引っ張られた様な感覚。
目的の相手はこの声の主だろう。
「夜のお相手に感度の良いヤツはいかがでしょうか」
レオンは声を殺す訳でもなく、堂々と扉の向こうに言った。
『…この部屋には必要ない』
扉は開かない。
応答している男は恐らく若く、まだ25,6歳といったところだろう。
「同室のヤツがいるからって気にすんな…よ!!」
最後の言葉と同時に、レオンは分厚く頑丈な隔たりを蹴破って中に入る。
それは通常の人間では出来る筈のない事だ。
ここでトレスと居たならば、まず間違いなく彼の愛銃で扉のシステムロックを蜂の巣にしていただろう。
中へ入ると、声の主は扉に当てられた様子で膝をついていた。
奥の、窓越しに立っている男性は長髪で煙草を片手に廊下から踏み込んできた大漢と、そして膝をついた青年を交互に見てため息をついている。
「これはこれは…。もう少し紳士に振る舞えないのですか?」
やれやれといいながら長髪の男は手に持っていた煙草を口元に咥えた。
「俺はそこに存在するだけで紳士なんだよ」
「なるほど…」
自信に満ちた彼の台詞に、長髪の男は低く笑い声をあげる。
[#da=1#]は長髪の男に注意を払いながら、目の前に映る青年を凝視していた。
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