- Trinity Blood -1章
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戻らない記憶は「意味がないもの」と位置付け、[#da=1#]は唯一記憶が戻った彼の元へ急いでいた。
彼への執着が、消えたはずの一部の記憶を引きずり出したのだろう。
受付のベルを鳴らすとフロントマンが出て来る。
「さっき入って行った客の部屋はどこだ?」
幼いその顔立ちの少年は掠れたその声で問い掛ける。
「申し訳ございません、ホテルの信用に関わりますので…」
容姿を見て「子供か」という声を漏らしつつ、フロントマンは一応丁寧に対応する。
聴こえてるぞ、と内心舌打ち、
しかし今はそれどころではない。
「さっきの長髪の男性と小間使いみたいな男、書類をさっき落として行ったみたいだから、届けてチップを貰いたいんだ」
ちょっと欲の強そうな表情でちらりと書類を見せる。
フロントマンは「少し待つ様に」と告げて奥に入った。
待っている時間が[#da=1#]には長くて。
秒針が進む程に苛立ちを隠せない様子で小さな声で「早く」と呟きながら、彼のその細部までを思い出している。
身震いがしている様な。
僅かに足が震えている。
浅くなる呼吸。
息を深く吸って落ち着かせながら。
フロントマンが戻るのを待つ。
彼への復讐を誓ってから、この時をどれだけ待ち望んでいたか。
復讐心が突き動かされ鮮明に、情景が浮かんでいる。
まるでそこまでの記憶しかない様な。
自分が誰なのか、先程迄の自分は一切覚えが無いのに。
まるでこの記憶の箱だけが別の鍵だったかの様な。
家族の、友人の、街の人達の。
尊い生命が奪われたあの日が鮮明に浮かぶ。
フロントマンが奥に引っ込んでからあまり時間が経たないというのに、[#da=1#]はこの時間がやけに長く感じられた。
フロントを飛び越えて、あの扉を開けてフロントマンを引きずり出してやりたい。
このままチップを貰う事に興味が失せてここを去ってくれる様に願いながら、フロントマンが奥で様子を窺っているのでは、とさえ思う。
手に力が籠る。
その時。
「君」
男の声が頭上で響いた。
「『ルームサービス』かい、僕?」
厭らしい笑みを[#da=1#]に向けている。
無視をしようと思ったが、男は呼吸を荒くさせ、瞳は[#da=1#]をまるで舐める様に下から上へ流れている。
「あとで、私の部屋にも…」と、伸びてきた男の手は、幼い少年へ届く寸前に。
「そいつは俺のツレだぞこの変態野郎」
浅黒の肌の男性が、男の手首を掴む。
太く低い声が真後ろで聞こえる。
「へ、ん?!」
パクパクと魚の様に口を開閉する男を余所に、レオンは[#da=1#]の髪に手を滑らせながらニヤリと笑う。
「こいつはお前のモノ位じゃ満足しねぇぞ?なんたってこの俺が仕込んだんだからな」
柔らかな耳を後ろから軽く撫でてやると、[#da=1#]の肩が跳ね上がる。
声を上げそうになったが、その口は何とか塞ぐ事が出来た。
耳に掛かったその指を慌てて払い退けようとしたが、大漢の手はその細い手首を掴んで止める。
強引に引き寄せられる。
「んぅ…っ」
掴まれた手首は痛い訳ではなかったが、突然引き寄せられた事に驚いて声が漏れた。
上擦った悲鳴を上げた[#da=1#]のその反応を羨ましそうに、ごくりと喉を鳴らす。
幼い少年を見る男に「お前もしつけてやろうか?俺は痛めつけるのが大好きなんだよ」と囁く様に言ってから、レオンは男の肩にそっと触れる。
大漢の、まるで獲物を狙う金色の瞳に、男はびくりと肩をあげる。
激しく首を左右に振るとまるで飛ぶ様に走り去った。
「…ばーか。お前なんて傍に置きたくねえよ」
[#da=1#]は心底嫌そうに呟くレオンを見上げていた。
それに気付いたレオンはこちらに笑顔を向ける。
「おぅ[#da=1#]、俺は信用していいぞ」
そう言ってフロントの備え付けのベルを荒々しく叩いた。
この子供の様な、笑顔。
不思議だ。
何度見ても思い出せないが。
何故かこの笑顔が…好きだった、様な。
がちゃり、と締め切られていた扉が開いた。
「お待たせ致しま…っ――
ははははぃっ?!何の御用事でしょうかあああ?!」
出て来たフロントマンの声は、急に悲鳴めいた声に変わる。
「相棒だ」と確かに彼はそう言った。
記憶のない自分に。
目配せ一つ。
次の瞬間レオンは受付の棚を踏み倒さんばかりの勢いでフロントマンに詰め寄っていく。
「俺のツレが落とし物を届けてやるって言ってるだろ?部屋番号言っとけや」
獲物を見付けたような、ぎらりと鋭く光る瞳でフロントマンを睨み付ける。
怯えるフロントマンは震えた声で「はい」と返事をすると、震える手でそっとチェックインリストを見せた。
……………‥‥‥‥・・・
[#da=1#]さんが男なら、レオンさんは犯罪だ…
男でなくても見た目が子供の[#da=1#]さんだったら犯罪に等しいか(汗
まぁいいか←オイ
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20210901
加筆修正を行いました。